47 ライくん、村を建てる。(その4)
読者の皆様投稿遅くなって申し訳ないです。ブックマークありがとうございます!
さて今話では最初シリアス入ります。それでは今週の不憫をどうぞ!
私が自我を目覚めさせたのは、遥か昔のこと。
愛らしい女の子がお母さんに駄々をこねて私を買っていったの。そして私のことを『■■■』と呼んで毎日ご本を読んだり髪をとかしたりしてくれたの。
ある日は一緒にお使いに行って、ある日はお花見やハイキングにも行ったわ。
とっても楽しかった…ええ、捨てられるその日まで。
ある日、私を連れて私がかつていた場所へ女の子と一緒に行ったの。そこはたくさんのお人形が相変わらず並んでいて、まだ買われて意思を持つ前の子たちがたくさんいたわ。
私よりも綺麗な服を着ていて愛されていないこたち…買われた当初は綺麗だった私の服は、既にボロボロだし髪も艶がだんだん失われていた。
けれど女の子に愛されていて、そのことが誇らしかったの。嬉しかったの。
なのに…
「ママ〜、あのお人形さんほしい!」
「そうね…もうそろそろボロボロになってきているし思い切って買い直しちゃいましょうか。」
「うん!そうする!!」
私は捨てられてしまった。
業火に燃やされながら、私は一筋の涙を流して灰と化した。
けれど、次の瞬間驚いたことに新しい体になって女の子の腕の中にいたの…いつもみたいに布団の中で抱っこされて。戻ってこられた。
そのことに歓喜して、それからもずっと彼女のそばにいた。
それからさらに何年も経ち、その間に何度も私は燃やされそして何度も復活した。燃やされるたびに私は絶望し、復活するたびに少女へと執着した。
だから、復活しなかった刻呪いとなったのは仕方なかったのかもしれない。
少女がやがて成長して大人の女性になると、私と一緒に眠らなくなった。部屋の中も私以外のお人形はいつの間にかなくなっており、私も部屋の隅のダンボールの中に入れられいた。
埃まみれになり、変色した布をまとっている私…それでも彼女の人形という立場が嬉しかった。時折思い出してくれるだけでも私は…
だから、もう人形はいらないとゴミ箱に捨てられて二度と戻ってこられないと分かって私は…私は……
気づいたら、成長した少女に一緒に燃やされていたはずの黒電話で電話をかけていた。
「もしもし、私メリーよ。」
少女はすぐに電話を切った。
それから何日間かかけて、私は彼女のそばになんとしてでも戻ろうと電話をかけて彼女の居場所を探った。電話はなぜか彼女の姿と家を思い浮かべればどこにいようと彼女へと繋がった。
そうしてある日、ついに彼女の部屋へ戻ってこられた。
やっとよやっと…彼女をベッドで待つ。かつて私が求められた刻にいつも私を置いていた場所へ鎮座して、黒電話は隠して身動きせず、待っていた。
そうして彼女が帰宅して私を目にした瞬間、叫んで私をベッドの上から投げ捨てた…私は悲しくなって彼女に話しかけた。多分初めて。
「ね、え…せ、か…くかえ、…ってき、たのに…ひど、い」
つっかえつっかえでもなんとか抗議したが、彼女から帰ってきたのは明確な拒絶だった。
だから、呪ってあげたの。
不幸に、無様に、私を捨てたのと同じようにあなたも捨てられますようにって、ね。
その日から、私は私と同様人形を捨てる人たちのことを呪い出した。そして、他の人形の亡霊たちとも合流して恐怖を振りまいていった。
だけど、やり過ぎてしまった…
「悪いとは思うけどさ、もう君はこの世界にはいられないよ…容量が増えちゃったからね。」
説明の意味はわからなかったけれど、とりあえず私はここにいてはいけいないということだけはわかった。世界が私を今度は捨てるのねって。
まあ、捨てられるようなことをたくさんした覚えがある以上仕方がないことなのかもしれない。
だけど、そこで終わらなかった。
「君には君にぴったりの場所へ押し、ゲフン、行ってもらうよ。なんとなく傷ついた君にはぴったりだろうし、何より…」
“その方が面白そう。”
黒い世界管理者を名乗る物体に他の怪異共々飛ばされた先は異世界だった。地球ではない、遠くに離れた惑星。おそらく次元も違うのではないかと思われる。
引き寄せられるように全員が行き着いた場所が、幼い少年の目の前。面白いとは、おそらくこの少年のことを指しているのだろうかとすぐにわかった。
少年は色々とおかしかった。
腕っ節も頭もある程度あって、社会で裕福に暮らせるだけの生まれついた血統まで持つ。それなのにこんな山奥で私以上にタチの悪い悪霊と凶々しい気配を放つよく分からない謎生物に囲まれていた。
曰く、モフモフと毛がたくさん生えていて手触りの柔らかい生物が好みらしいが、なかなかな出会いがないとか。嘆いていた。
我々が来た当初もなぜこう、悪霊とか怪談シリーズは来るのにモフモフはないんだモフモフはと愚痴をこぼしていた。その割に面倒は良かったが。
念願のモフモフが登場した日には、すごい表情になっていた…悪い意味で。だけどそれだけモフモフが好きなのだろうと私もわかった。
館では好きにさせてもらっているし、モフモフが好きだといえ契約して彼から家族認定された存在に対しては粗末に扱うことはなかった。雑な言動があったとしても、じゃれ合うような感じであって本気で嫌ってはいない…青いツナギの漢を除けば。
だから、しばらく仕事で家を空けて帰ってきたらモフモフをたくさん召し抱えたと言った日も特に不安にはならなかった。また捨てられてスクラップにされることはないとわかっていたから。
実際、私たちがあの悪夢のスープで食中毒を起こして倒れている姿を見て慌てて看病してくれていた。幸い私はさっさと復活できたけど、ぬらり爺さんとか口裂けおばさんは歳が歳だけに寝込んでいる。
そう、なので私は仕事を頼まれた際見た彼の表情が少し気がかりになってしまった…事情を知っていそうなやつを脅すくらいには。
〈で、さっさと教えなさいよ道化師〉
〈なんでアンタに教えないといけなのさ!〉
やーだもんと宙を浮きがら、いつもの日課なのかあっちこっちいたずらを仕掛けるポルターガイスト。タチが悪いことに最近道化師系の技である分身の術を習得しているのでリアルタイムでいたずらを仕掛けつつ逃げるタイミングを計っているのは知っている。
その特質を利用して現在新たに加わった半獣族や遠く離れた契約霊の様子を逐一報告していることは知っている…あの悪霊に。
〈答えなかったらわかっているでしょ?〉
たかがポルターガイスト現象と道化が統合された姿のおまえに私みたいな霊の形代が叶わないはずがない。だって私は殻を持っているけど彼はなにもないから。
そう。哀れにもなにも、ね。
〈ねえ、私あなたのことを今からでもスプラップにできるわけだけど、どうする?〉
我が家の霊や怪にも序列というのが存在する。
それは、力の強さとかではなくここの持つ記憶の保有数だったり保存性だったり…まあいろいろあるのよ。その中でも私はトップカーストというわけではない。だけど、それなりの地位がある。
〈だったらボクは逃げるだけさ!な〜んて…だから冗談だって、そんなマジにならないでよ。〉
…少なくとも目の前のこいつには負けてないと、思う。
〈そう、それは安心したわ。ならさっさと教えなさい。〉
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玄関辺りが騒がしくなった音が聞こえた。どうやらディエゴさんがついたらしい。
こっちの作業は後10分焼くだけになっていたのでちょうど出来立てを食べさせることができる。よかった。
久々作ってみたガトーショコラを皿へと盛りつけながらオーブンで焼いているクックベリーパイの香りを楽しむ。英国式のティータイムを想像しつつ、今朝焼いたばかりのクランベリーのスコーンとキッシュを皿へと盛りつけて積んだ。
よく蒸らした紅茶はすでに芳しい香りを漂わせ、フルーツとクリームの盛り合わせはその色彩で目を楽しませる。
なお、待てのできないお子ちゃまな親父と魔王にはスティッキーバンを一斤分口へ放り込んでおいたのでしばらく平気だ、と思いたい…後でマシュマロ浮かせたココアを追加しておくか。
カチャリと扉が開いた。次の瞬間ハッと息を飲む音がした、なぜか2人分。
見ると、族長とその背後から黒っぽい毛玉が隠れきれていない様子が視界に入った。毛玉は気づかれたことに気づいていないらしく、ひょこひょこと誘うように動いている。
嗚呼触って思う存分モフモフしたいが、今は我慢。
さてと。
「よく来たね、ディエゴさん。」
ついでに黒い毛玉。
シリアス先生は、ログアウトしました。
ついでにメリーちゃんは○ーゼンメイデンのシン○に口調とか似てます。ただし、装いやヒ○菊で言動がたまに水銀○ですけど。いくつか似たような能力持っている道化師さんと(基本一方通行な)喧嘩をしているのをよく見かけるとか。




