45 ライくん、村を建てる。(その2)
読者のみなさまどうもこんばんは。申し訳有りませんが、行間は後日直します。
さて、それでは今週の不憫をどぞ!
村を作るにあたって、家の配置や広さなどの希望を大まかに聞いて回った。ついでに家の素材などについても聞く。
すごく恐縮されてなかなか進まなかったので、結局ディエゴさんが私の代わりに聞いて回ることになった…解せぬ。それほどビビらせた覚えはないが、どうやら怖がっている模様。
仕方なく、その間に村予定地を簡単に整地することにした。
まず行うのは村の規模と畑の規模を考えることだ。
100人程度だが、家族は43組。20人程度の独身に後は家族。プライバシーも大事。さらに家族が増えることを考えた上で、土砂崩れや洪水が起こらないかなど、色々考える。その上で良い立地を選ばねば。
同時に畑はどこへどう広げるか考える。
水源の位置の確認。水はけや日当たり。土壌の状態。森を削りすぎていない家などのバランス。畑の番をする人たちの家と近いかどうか。将来拡大する予定ができたときに可能か。地盤はどうかなど…まあ他にもあるが、挙げたらきりがなくなる。
そうして予定地を魔術式で一気に均している。すると、いつの間にか空気が静まり返っていることに気づいた。慌てて背後へ向いて集団の様子を見る。
目に入ってきたのは唖然とした表情で固まって私の方をガン見している半獣族…こころなしか耳がペタンと萎れており尻尾がくるりと内に巻かれていた。視線を向けるとハッと私に気付く。その瞬間ブワッと毛が逆立った。
正直嫌な予感しかしないのだが、念のため尋ねる。
「…どうした?」
沈黙。
そしてそのうちの1人に視線を向けると、ドラゴンを前にしたハムスターみたいにプルプル震えながら涙目になっていた。毛も逆立ってブワッてさっき以上に盛り上がっている。
…完全に怯えられてしまったようだ、どうしよう。
ディエゴさんへ咄嗟に目を向けたが、当の本人もまた目を見開いたままオサレな顔で固まっていた。復活する様子もないので仕方ないからそっとしておく…後で鍛え直し確定。
ギルが復活したら魔王のブートキャンプに強制参加させるか。それだけでも十分鍛えられるだろうが、同時に毒耐性つけさせよう。そのためにも日に一品親父の創作劇物料理を追加だ。毎日コツコツ食べておけば私のように耐性はもちろん、体力と生命力が強化されるだろう。
骨は拾ってやろう、頑張れディエゴさん。
さて、現実逃避から理不尽で残酷な現実へと戻るか…嗚呼、滅茶苦茶怯えられておる。これは話しかけても無意味だな。そんなに震えられたら話もできない。
仕方がない…すごく不本意だが、親父の庭師へフォローを頼むとするか。もう一度言うが、滅茶苦茶嫌だが。
「あの…アンドレイさん、ちょっと「あァン?仕事中に話しかけてくんじゃねぇ!手がぶれたらどうしてくれんだ!!!」…すいません。」
庭師の亡霊、アンドレイさん…普段は穏やかで勝手に畑の野菜などを使用するため取っても怒らない。しかも、無茶なお願いとかしても怒らずちゃんと話を聞いて調整してくれる。
しかし、作業中に話しかけるのはだめらしい。
職人として作業に集中できないというのが一番許せないらしく、特に手を動かしている最中話しかけると切れる。それはもう、盛大に。
…前には確か、親父が怒られていた。うっかり話しかけて剪定していた枝を切った結果、ブチ切れて3時間ぶっ通しで正座させて説教されたのだった。主人であるはずの親父が、だ。
そういえば魔王も怒られていた。確か森での訓練中に危ないからそこどけと声をかけたことが原因だったな。剪定ばさみを片手に暗雲背負う修羅と化した庭師に森中追っかけられて涙目になっていた。
あの刻のアンドレイさん、完全ホラーだった…魔王が泣いたのも頷ける。
それにだ。丁度私が日本出身の都市伝説・怪談組と契約した頃なので、テケテケ爺や口裂け女の怪談話をしたばかりだった。魔王はホラーとことんダメだから思い出してしまったのだろう。
そういえばあの怪談話をした日も怖くないといいながビビっていたな…夜中トイレ行けず朝一番で布団とシーツ持って洗濯機周辺でゴソゴソしていた。朝から侵入してきたコソ泥かと、慌てて飛び起き親父と見に行った。
魔王はくるりとこちらを向き、今までで一番怖い表情をした。直後、記憶を抹消してやると妙にギラギラしながら追ってきた。青○や阿○鬼並には十分ホラーでした。
なので、本人だって似たようなものだと思うのは間違っていないとはず。それなのになぜ恐れるのか理解に苦しんだのは覚えている。
余談だが、魔王へ考えていたことが事故で声に出ていた結果鍛錬という名のしごきを受けることになった。怪談などより余計な一言のほうがよっぽど怖いと思う。口は災いの元とはよく言ったものだ。
翌日の筋肉痛と親父のゲテモノポーションはとても苦かった。
閑話休題。
アンドレイさんに関してはもうあきらめるしかないか。しかたがない。だが、それならどうやって意思の疎通を取ればいいか。相変わらずプルプル震える半獣族を見渡す。さっきより悪化したような気がした。
…もういじけていいだろうか。
Koooonn
聞き覚えのある鳴き声に顔を上げる。すると、そこには私に癒しが来ていた。そっと涙を拭いてから…
「ゴン〜、いじめられた!!」うわぁぁぁあン
泣きながらダイブしてからの、もふもふもふもふもふもふ……ああふかふかで癒される白金色の艶やかな毛が気持ち良い最高な抱き心地だこのまま囲まれて全部忘れて言いたい(※脳内錯乱中)
すっきりしたのでゴンザレスの毛の中から頭だけ出す。
そこには、地面に埋まった半獣族の群れがあった…いや、よくよく見ると土下座した上で土へ頭がのめり込んでしまったように見える。
もういやだおうちかえりたい…
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やっと復活したディエゴさんから皆さんの希望を聞き出し、なんとか家を基礎から工事して半日。相変わらず怯えられております本当にありがとうございました。
…もふもふに埋もれる夢の日は、まだまだ遠いらしい。
それにしてもやっぱり魔術式は完全チートだ。特に地球で生活していた記憶がちゃんと存在するので、建築業者の技術とか苦労とか知っていつわけであり…すごく複雑な気分になった。
いや、確かに使えるものは何でも使うべきである。それにいちいち罪悪感を持つのも時間の無駄というのも頭では理解している。
ただですね、耐震技術に苦戦していた元日本人としてはこう、一瞬で全部耐震技術を兼ね備えた基礎工事が終わってしまうのを見るとこれで本当にいいのかとか思ってしまうわけです。こんなんで本当に地震とか耐えられるのかとか、今までの努力とか苦労とかってどうなのとか。
ついでに機材とかも完全無料…元手が一切かかっておりません。だって使うのは地中に含まれる金属なので。魔金属との合金なので、下手な鋼鉄使うよりもよっぽど強力な柱となる。
「さて、あとは自分で立てるか私が勝手に立てていいか…どうする?」
ディエゴさんへ尋ねる。だが、返事が返ってこない。
嫌な予感がしたのでそちらへ向くと、再びオサレに固まっていた。その背後に群れている半獣族の連中はどこかげっそりしていた。遠い目をしている奴も中にはいた。
水の入った花瓶を再び作成。今日のデザインはスワ○フスキーのクリスタル。それを持って音を立てずにディエゴさんのそばへ行った。
そして、パシャりと。
「!?…わ、私は何を?」
「……正気に戻ったか?戻ったな、よし。」
要件を手短に伝えた後、ゴンへダイブ再び。癒しのもふもふタイム。
「グスン、みんながひどい…」
よしよしと言わんばかりにゴンは私の頭をポンポンと鼻で撫でた。その間に私はひたすら全身でもふもふした。そうだ、今度最高の櫛を作ろう。それでゴンやバイコーンを梳いて毛並みをもっと綺麗にしてやるか。
素材はまだ魔植物素材が残っていたはずだから、それを使うか…
現実へと帰還し、再び要望を聞いた。
どうやら家も建てて欲しいとのことなので、一応希望に沿った形と色で外枠だけ作ってみた。家の解体工事とかに立ち会った経験がこんなところで活きるとは、人生とはわからないものだ。
それにしても場所とか土地の広さとか、それほど揉めた様子もなく決まってよかった…もっと喧嘩とかそういう展開を想定していたが、どうもすでに順位ができているのでそれに従っていたらしい。
そうして出来上がったのは、木製の暖かな印象のある村であった…屋根は多雪地帯なのでやや鋭角、滑りを良くするため素材もかわらっぽいものを選んだ。色は皆の希望で緑色。
窓は最初どうしようか悩んだが、強化ガラスを用いることにした。これには大いに喜ばれた。またその透明感に感激された。
あとはドアに紋章を入れて欲しいとの要望があったので早速聞いては紋章を大きく入れていった。共通の紋章一つと個人の紋章を一つ。
その頃にはもう、諦めたような表情で私へ要望を言ってきていた。
黙々と作業をしていたらあっという間に終わった。ディエゴさんにこそっと紋章は何を示すものでどうして必要か尋ねたところ、紋章は縄張りを示しているということがわかった。どうやら命と番の次に大事なものらしい。
ちなみにディエゴさんは族長なので、皆と共通の紋章一つとなっている。族長という束ねる地位の者は、代々引き継がれてきた紋章を継承するらしい。その際、体に直接刺青を入れるんだとか。
なお、自分の紋章は年齢が7歳以上の獣化ができた者の身体へ自然に浮かび上がってくるらしい。原因は不明だが、おそらくは何かしらの魔術・魔力関連の話なのだろう。
内装は各家に任せ、私はさっさと自宅へ帰ることにした。
なお、驚いてブワッてなった毛も触り心地良さそうとかライくん思ってます。思っているだけです…嘘、本当は触りたくて隠しているけ手のワキワキ必死に抑えていたりします。




