表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もし〇〇が仲間になったら(〇〇式異世界英才教育〜憎まれっ子よ、世に憚れ〜)  作者: 平泉彼方
第1章 7歳までの軌跡(〇〇式英才教育基礎編)
38/208

36 いざ、出撃(その3)

 読者の皆様どもこんばんは。


 さてそれでは今週の不憫をどぞ!





 唖然騒然呆然とした裏賭博場の会場。一瞬だけ刻が止まったみたに全員オサレな顔で固まっていた。彼らの視線の先は共通…私に今もスリスリしているバイコーン。皆に普通の馬だと勘違いされて多分今まで使役されてきたのだろう。


 ただ、思うのだがなぜ今まで気づかなかったのだろうかと。角が縦2本に漆黒の馬なら誰だってバイコーンだって気づくと思うのだが…観客、死刑囚及びスタッフの浮かべる驚いた表情に驚愕する私は間違っていない。間違っていないったらない。


 そして次の瞬間、会場内複数箇所で同時に爆発が起きた。いきなり動きを止めたよはだろう。悲劇的状況は既にこの間にも複数起こっていた。その実例を以下一つ紹介する。


①拷問官が自分の持つ荊鞭に巻きつかれて横転

②奴隷へ蹴っていた貴族風の男は転がってきた男に躓いて銅像を蹴り倒し下敷きに

③眠剤入りの酒を給仕に飲ませようとした男は葉巻の火と零した酒で頭髪が焼け野原無毛地帯へ(付近のワニプールに飛び込んで生存)

④ガララワニという魔物を縛り付ける魔術師へ度数の強い酒とタバコの火が突如掛かり逃げる間も無く爆発→気絶

⑤主人を失ったガララワニが暴走、会場阿鼻驚嘆


 ピタゴラスイッチみたいに一連の出来事が起こり、あまりの地獄絵図に思わず乾いた笑いが溢れた。頰の筋肉が引きつるのを感じつつ、何も見なかったことにしようと深く決める。


 毒殺されかけていた男と私を案内するべく待機していた給仕の手をつかんでとりあえず安全地帯に逃げ込むことにした。とりあえず一歩前へ…進もうとしたところで目線が高くなっていた。ついでに縄でまとめた2人は土気色になっていた。



ブルゥァアヒヒィーンン(どけやァゴルラァァ)



 世紀末覇者を連想させるドスの効いた渋い啼き声(?)で荒々しく周囲を踏み潰しながら進むバイコーン。周囲はその王者たる威風堂々な雰囲気へ完全に呑まれ、道を開けた。だが元から収容人数を容易に超えたこの空間でしかもパニックが起きた直後の状態。道を開けようとしたところで馬が通れるほど。


 一頭だけ堂々劇画風な馬は、その黒く輝く力強い蹄で道を開けない者達を踏み潰しながら進んだ。下敷きになり、怯えた表情で見上げる人々。


 とりあえず空いた手でポーションを背後に撒きながら進んだ。いや、恩を売るつもりでやっているのではなくてだな、飼い主としてペットの起こした始末はつけねばと思ってやっているだけだ…ステータス見たらいつのまにか飼い主になっていて驚いた。


 ただ、問題としてはますます不安定な体勢になることか。右手でポーション、左手で大人2人。そして揺れる背面。振り落とされないのがむしろ不思議だ…


 よくよく見ると背面に術式が発動していることがわかった。抜かりネェっすよアニキィとドスの効いた雰囲気がしたので納得。主人と主人の認めた相手は振り落とされない仕様になっている原因はこれかと若干現実逃避しながらじっとしがみつきかけたが堂々としておく。



[ささ、兄貴はそこでどんと構えちょっとください。儂等は兄貴の足でも鉄砲玉でもなんでもやりやす]…そんな雰囲気がしたのはきっと私の空耳ではないのだろう。第一印象上品で耽美で優雅な馬だと思ったのに色々ぶち壊しであった…なんか異世界ってこんなんばっか。


 ああやっぱり私の癒しはゴンだけだ…心配だからってルドルフ君たちご一行の護衛になんてしなきゃよかった、グスン。


 それにしても堂々としているも、やっぱり鞍がないと怖い…体格的にもまだまだ子供なので、振り落とされないまでも不安定なのだ。だが、ここでぎゅっと掴みたくなるのは気合いと意地でもって我慢した。


 せっかくの綺麗な毛並みだ。それを握りしめるなんて無粋な真似はケモナーなら許されまい。少なくとも私は許さん。



 そうして安全地帯まで行ったのだが、またここで想定外なことが起こる。というか、これまた典型的だな…呆れた様子で見る。


 明らかなピザ体型に普段歩かないことを示す細い足、そして醜く吹き出物だらけなむくんだ顔。原型がわからんこりゃひどい。大方夜食とつまみと酒、それから運動不足に…あげたらきりがないな。


 そんなのがなんかわからんが避難所?休憩室?にここの給仕と思しき死んだ目をした女性を部屋へ連れ込もうとしていた。だが、こちらが入ってきたのを見た瞬間女性を放り投げて目線をこっちみむける…つか、下卑た濁った目でこっち見んな。しっしっ


 だが見た目通り空気が読めかったようで、よりにもよって話しかけてきやがった…



「ヒェヒェヒェ、その馬私に献上しろえ。ついでにお前、妾にしてやるえ。」



 そして指をさした先は…左右を見ると、違うらしい。背後を見るとそこには壁。幽霊1匹もいない。微生物は流石にその対象にするやついないだろう…見えないだろうし。むしろそういう概念が既にあったら私は間違いなく驚く。


 なら、誰をさしている?



「お前だ、お前だえ、女。」



 そして不清潔で脂ギッシュな指でこちらをまっすぐさした。



「え、私のことをこいつは指差しているのか?」


「そうだえ、さっさとするえ」



 …なるほど、なるほど……確かに私はガタイが良い方でもなければ骨ばってもいない(※まだ7歳です)。成長に支障をきたさないてどの筋肉に毎日異世界原産(現地)の新鮮な無農薬有機栽培の野菜と果物に捌いたばかりの肉…まあいい、とにかく毎日食生活と適度?な運動でこう行ってはなんだが綺麗な体型をしている。


 その上で顔も貴族らしく整っており親父に教わったマナーや宮廷作法と何故か日本原産の妖怪に仕込まれた和の演武の賜物か…とにかく優雅で貴族に好まれる仕草を知らず知らずにやっているらしい。万に一つもないだろうが、人さらいには注意しろと親父に言われた。


 今でこそ髪と目の色彩を誤魔化しているが、バレたら一体どうななるか…


 それは置いておくとして、だ。



「私は男なんだが…」



 やれやれ…これだからキチガ「男でもいいえ、愛妾にしてやるえ」…どうやらただピヨピヨしているだけでは飽き足らず、変態であったらしい。しかも子供を狙うとか…最悪だ。


 綺麗目なおば、げふん、お姉様系だったらまだ許せたが、男でしかもキモデブハゲはダメだ。しかも脂ギッシュで目が濁っており口臭が激しくしかも変態ショタペド…一体何重苦なんだ。



「…とりあえず還れ。」



 主に土に。


 嫌がらせで付近の空き部屋へ風の魔術式で時限式小型カメムシ爆弾+と一緒に詰めてやった。ちなみに+の意味は親父の手が加わっているということ=なんらかの状態異常付き。なにするんだえ?!というきしょい声が聞こえた気がしたが、無視してとりあえずドアを閉め鍵掛けた上で、結界を三重にしてから逃げた。



 この数秒後、典型的糞貴族Dは部屋の中であまりの臭さに走馬灯を見て人生を反省することになる。そして彼はその後領内で子供のために学校を建てたり公共の充実化をはかったりと頑張った。その功績が認められていっぱしの使える貴族として王都に召喚されるが、その道中激務の末の過労で眠るように死す。享年69歳。


 なお、30代の頃に出会ったあの衝撃が忘れられない。あの少年には感謝はしないがいつまでも覚えておくと生前語ったという。



 さて、汚物を捨てるも消毒するもせずとりあえずポイ捨てしてきたが先に進まねば。多分こっちであっているはず。



「そういえばどこに向かっているのですか?」



 給仕の男に聞かれる。多分ディエゴと同じ半獣…証拠に気持ちが荒ぶったのか、バイコーン出現で尻尾が出ていた。素晴らしい種族だと実感した、実に楽しみである。



「…ああ、裏賭博場の持っている保管庫。多分このおっさんの盗まれた保証書はそこだろうから。」


「え、儂なにも喋ってないんじゃが…」



 戸惑った声で聞いてくるおっさんF



「おっさんここ連れてきたっぽい人が薄気味悪く笑ってたからさ、ちょっと聞いてみたんだよ。」



 しかもそいつ、あの子のこともなんか知っている風だったから。だからまあこのおっさんも助けるわけだが。



「で、おっさんにはちょっと聞きたいことがあるんだ。対価はおっさんの盗まれた保証書。どうかな?」



 悪い話ではないでしょ?


 そう問いかけるとおっさんは若干強張った表情をした。無理もないか。騙されたばっかだろうから。


 聞いた話だと部下が勝手に持ち出したらしい。印鑑とかも勝手に使われて借金の保証人へ勝手にされていた。そして保証書を取り返してサインが偽物だってことを示そうとした際うっかり取られてしまったと。このままだと借金で家族に苦労をかけると判断してこの闘技場で一当てしにきたらしい。


 まあこれ以上相手のことを知っているアピールは却って警戒させるだろうから…



「おっさん悪くないんでしょ?私はおっさんの多分出身国にいる知り合いを助けないといけない。おっさんはおっさん自身とおっさんんの家族を助けたい。両方解消できる方法なんだけど。」


「…わかった。儂はオーガスト商会、ビル・バラート・オーガスト。一応これでもオーガスト商会の会長をしておる。商人らしく契約は守らせてもらう。聞きたいことを保証書が来たらいくらでも答えてやる。じゃからこの通り、取り返してくれ。」


「了解だ。」



 こうして本来の金の巻き上げ方は失敗したので合法的(?)に堂々と金庫を破ることにしたのだった。






 …金庫が開かない、地味にイラっとした。だから従魔ならぬ従馬になったバイコーンに命じてみた。



「開かぬなら、蹴ってしまえよ、この金庫。」


ブルァオルァゴルァフィヒィィィィィイイイン!!!



 最早馬の啼き声ではなくなっている気がしてならない。そんな世紀末な叫びと共に蹴られる後ろ足。きっとあれで攻撃されたら頭蓋骨陥没程度でも済まないんだろうなと少し遠い目になった…まあいいや、モフモフだし。


 そうして彼の攻撃の前には、いくら純度の高い合金といえ耐久できなかったらしい。



ドゴーン…ズズン

パコン



 そして陥没して歪んだ巨大金庫の隙間を無理やりこじ開け、開けることに成功。



「…ずいぶん乱暴な方法じゃな、というか、地味に韻踏んでおったせいで笑ってしまったわい。」


「まあいいじゃん。さてと…」



 ではでは、火事場泥棒始めましょうかね。



 バイコーン出現するところまでは想定していたのですがバイコーンの名前を今悩んでいます…マフィア系にするかヤ系にするかどうしよう、本当に。ちなみにバイコーンさんの中の人(CV)は多分若本●夫さんで決定。若本さんヴォイス渋くて格好いいですよね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ