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もし〇〇が仲間になったら(〇〇式異世界英才教育〜憎まれっ子よ、世に憚れ〜)  作者: 平泉彼方
第1章 7歳までの軌跡(〇〇式英才教育基礎編)
31/208

29 多勢に無勢

 読者の皆様投稿が遅くなり申し訳ないです。さて今回は少し長めです。


 それでは今週の不憫第二弾をどぞ!




 ゴンと共に街へ特攻してかれこれ数分後、領主の雇った思しき傭兵と領主の衛兵と命懸けの鬼ごっこしております。


 但し逃走役は私とゴン以外にもいる。


 一人は盗賊ギルド所属のセアス君。ここまでは多分驚かないだろう。なんせ、犯罪者だし実際不法侵入という犯罪を犯していたし。私もゴンも不法侵入だから一応罪人だ。衛兵に追われることはある意味至極当然なのだろう。


 だが、だからこそもう1人の逃走者が異様に思えるだろう。なんせ、一人必死の形相で涙目になりながら逃走しているのはこんな時でもお上品で雅な雰囲気を醸し出している貴族服の青年なのだから。


 もうなんと言うか絵図的にも酷い違和感しかない。


 さらに聞いて驚け。彼こそがこの地の次期領主やっているらしいルドルフ君。そんで、刃物片手に酷い形相で追ってきているのは彼の部下。


 意味がわからない?大丈夫、私もわからないから。


 走りながら再度背後を見る。


 背後に迫ってくるは、柄の悪い連中一割と護衛と思しき制服を着た軍団。但し両者とも目に正気が感じられない。恐らく誰かに操られているんだろう。あるいはなんかヤバ目の薬っぽいものをキメてしまったか。


 明らかにやばい人達ですどうもありがとうございました。


 キチガイっぽいしラリっているし、関わり合いになりたくな『かった』。もはや過去形ですよ、過去形。追って来ている以上関わっているってことだし。


 本当、なんでこんなことに……領主黒幕で終わりじゃ無いのか。テンプレ仕事しろ。




◆□◆◇◆□◆◇◆□◆◇◆□◆




 うむむ…腐っても流石は領主=貴族の街。門番が多い上、門も『これは門だ』と言える程立派。何と言っても周囲をぐるりと囲む塀がちゃんと塀であることに少しだけ感動を覚える。今は厄介なことではあるが、敵ながらあっぱれ(?)とでも言っておこうか。


 だが本当に、どうやってこれ抜けようか…身分不明な7歳児が素晴らしいモフモフと一緒に入れば当然不審がられる上、最悪絡まれる可能性だってある。


 なるべく騒ぎや起こしたくないんだけどな……騒ぎはすでに起きているっぽいし手薄になってっぽい場所からなんとか入れないだろうか。



 そんな風に悩んでいたら、任せておけという声が聞こえた気がした…で、次の瞬間ゴンがいきなり走り出した。こちらの混乱を無視してそのまま突き進む。このままでは門→衛兵と激突コース。


 当然内心穏やかではなく止めようと思ったのだが一歩遅かったっぽい。もう無理進路変更できないと悲しげな雰囲気が伝わってきた。それに門番の一人と既に目と目があったからどのみち逃げられん…別にランデブーするわけでも携帯獣な試合するわけでもないが。


 そんな相手さんだが、驚いて目と口全開にして固まってらっしゃる。心情的には理解できるがいいのかそれでとツッコミを入れたくなった。一応一番偉そうな人っぽいしさっさと指令出せよ、いやこっちは助かるが。というかお仲間さん退避させないと最悪ゴンに轢かれるぞ。



 だがゴンザレスは人身事故を起こすことなくあっさり門を飛び越えた(・・・・・)



 着地ついでにちゃっかり衛兵業務を行う寸前の意識高い系な衛兵を気絶→地面に埋めるゴン。前足2本を器用に使って一応殺さなかったところとか、技巧的であり芸術的だ。その後も軽やか且つ優雅に屋根へと飛び移り、そのまま逃走。誰も後を追ってこなかった。






(((………なんだったんだ、これは夢か何かか?)))




 白昼堂々ダイナミック侵入を果たした一人と一匹に、門の番をいつもの様よしなに行っていた衛兵達は唖然と立ち尽くした。2人程、地面に気絶の状態異常を起こしながら埋まっているが、そんなもの目に入らないほど絶賛混乱中だった。


 ふと、一人が口を開く。



「これってあれだ、白昼夢じゃね?」



 そう言うと、周囲もまた同意する。と言うか同意し出した…地面に埋まったままの不運な2人を無視して。一人また一人と、そうだこれは見間違えか単なる俺たちの妄想だと結論づける。無理矢理こじつけで以って自分をなんとか納得させた。


 目口を半開きにして呆然としていた上官もまた…



「そうだ…見なかったことにしましょう!!HAHAHA☆」



 そうして可哀想にも地面に埋められた不幸な被害者2人を除く人々はこのことを忘れることにした。不憫な2人の救出は行われたが、土に埋まってサボっていた(?)と言う名目でその月の給料を引かれることになった。不屈な2人は抗議するも、奮闘虚しく上官は妄想だと一笑し聞き入れてられることはかった。


 所詮は多勢に無勢。


 不平等で無慈悲な人間社会。そんな巨大な相手に対し幾ら2人が頑張ったところで敵うはずもなかった。とりあえず被害者2名にはご冥福を祈っておこう(※死んでいません)


 本当、御愁傷様。合掌(チーン)(※だから死んでいません)




 そんな世の不条理が(自分たちが原因の一部となって)行われているとはつゆ知らず、私はゴンとともに家屋の屋根上を駆け抜けて行った。


 進行先は煙のある方向。恐らくそこにいる。


 そう信じて突き進むこと5分程。諍いがあったと思しき現地に着いたはいいが、あまりにも予想外な光景に自身の目を疑うこととなった。



「……………」



 どこからどう見てもいいところの坊ちゃん(推定20歳以上)とその執事がリンチにあっていた。


 おっと、訂正。


 若い貴族風の男が涙目になりながらこれまた若い執事とともに逃げていたのだろうと思う。四方八方完全に逃げ道なく包囲され、今にも凹殴りにされる寸前だった。


 これってあれか?カツアゲとかではないよな…いやどう見ても違う、か。厄介ごとの方か、あははは(ゴブッ)


 囲んでいるのは正規の近衛兵と思しき貴族のエンブレムがついた鎧姿の近衛兵。金属製の槍や剣を主人と思しき人物へ向けている。青年と執事が今の所無傷なのはひとえに執事の貼った結界術式が今はまだ破られていないからだ。あの執事中々できる。親父(人外)師匠(人外)を除外するなら数人がかりであっても敗れはしないだろう。


 だが所詮多勢に無勢。時間の問題だ。術式の持続と魔力、あるいは集中力。そのどれかが切れたら一瞬で詰む。丸腰の青年2人に完全武装した集団の相手が務まるとは到底思えない。


 さてどうするか……とはいえもうほぼ決まっているが。


 先ほど面白いことに隠れているはずの私と貴族(と思われる)男の目があった。決して低くないレベルの隠蔽をしているはずなのに。リアル魔眼か、それとも魔導具か。


 …どうやら魔眼らしい。


 睨み返した時ちらりと術式が見えた。これ報告された魔王にゼッテー叱れられる。どうしよ…などと考えている猶予は与えられていないようだ。いよいよ結界が壊れる兆候が出た。



「仕方ない…」



 これは助けるのではなく、口止めだ。そうだ、あくまで口止め(・・・)。こんなところで死なれて霊になって親父と貴族同士のコネでも持てば、後で魔王に隠蔽見破られたことが報告されかねない。


 それを防ぐためだ、それだけ。



 決して生きることに諦めていない相手を義勇心で以って助けようなどとは考えていないったらない。



「面倒だけど囮よろしく、合図したらさっさと逃げるから。」



 ゴンは了承したと言う雰囲気をこちらへ伝えると同時に体を元のサイズにして暴れ出す。魔術式を器用に使って鬼火らしきものを発生させている。空気は生暖かいままなのにどうやって熱を抑えているのか興味があるが、また後日ご教授願うか。


 今はそれより目の前の2人だ。



 なんと、突然私が現れたことに驚いている…そうしてどうやら貴族君と目があったのは私の錯覚だったっぽい。それにこれは魔眼ではなくただのコンタクト代わりの術式だった。


 とんだ骨折れ損のくたびれ儲けである。


 まあいいや、そのぶん報酬分捕ろう。あいにくとただ働きはしない主義なんでね、諦めてくれ。容赦無く後で爪先から天辺までむしり取ってくれようぞ、ケケケ。



「えっと、この度は御愁傷様ですでいいのかこの場合?まあいいや。何があったか知らんがとりあえず助太刀いたす。」



 そう言ってから2人の首根っこを掴んでから思い切り口笛を吹いた。某ラーメンで有名なチャ○メラを。



ピュルル〜ピュル、ピュルルルピュ〜



 何故か響き渡った軽い口笛。空白が開く。


 あまりに有名すぎるフレーズだが恐らくこの世界の住民は知らんだろうが、無音以外の合図をなぜかこれにしてしまったため仕方がなかろう。あまりにシーンとした白けた空気になったので、今更ながら外したかと不安になった。


 だが、再び謎現象。


グギュルルルルルルルルル…


 どこからともなくお腹の鳴る音が響く。それも、音の発信源はどうやら兵士らしい。よくよく見るとどこか虚ろな目をしており、表情も頭が逝ってしまったかのような酷いものだ。なのに生理現象はちゃんと起こるらしい。今度は半開きの口からよだれが出ている。


 可笑しい、ラーメンの匂い、しないけどな…と言うか、自分でやっておきながら唐突にラーメンが食べたくなってきた。恐ろしいなチャル○ラ。帰ってからまた作るか。


 そんなことを考えながら固まった連中をガン無視してゴンの上へ飛び乗る。襟首掴まれた2人は縄くくりつけて引きずっている。そんな状態で屋根上まで飛んだもんだから執事君は気絶、貴族君はなんか黄色っぽい液体が垂れ流されているが武士の情けとして無視しておい…たこともなく、無慈悲に緩い隔離結界を張っておいた。


 これでゴンの毛並みも私も無事だ。貴族君は涙目からの号泣。とうとう泣き出しちゃったか。可哀想だし後で服恵んでやろう…センスないって某魔王に言わしめたやつだけど。



 そうして街中を追われること数分、なんとかスラムへ行き着いた。



「この度は危ないところを助かった。」



 自身に浄化の術式を使った直後、貴族の男は頭を下げてきた。執事は止めようとするも、最終的に少し渋々といった様子でこちらへ頭を下げた。恐らくは逃走時雑に扱ったことへ抗議したい模様。そんなことは知らんがな。命あっての物種って言葉はそういえばないのかこの世界。



「礼は後でいい、今はそれより状況教えてくれ。」



 巻き込まれたんだから当然だよな?


 恐る恐るといった様子で切り出す男…少ししどろもどろといった様子。まだ精神的に落ちつていないのだろう。執事が所々フォローを入れながら話が進んでいった。そうして貴族の男が話したことだが…予想外なことに、私も多少なりとも関わっていたことだった。


 なんと、こっちへ来る途中霊達に襲…仕返しさせた盗賊団がこの街を仕切っているはずのギルドと領主に士官している者が通じていたことが判明していたらしい。


 やっと証拠がつかめたのでいざ逮捕といったタイミングでウォルターの襲撃があり、更に現当主が焦ってとある魔導具に刻まれた魔術式を誤作動させてしまったとか。結果、現在衛兵が大変面白いことになっていると。


 現当主と内通者は魔導具の影響で一瞬にして灰になったらしい。だが、ギルドトップは生存しているらしい。逃走しているのを見たと男は証言している。



「…なんでこんなことになったんだろう」



 それはこっちが言いたい。


 なに?私のいく先々はトラブル塗れなんですか?あるいはトラブルに愛されているの?そんな愛いらない、真直ぐ返上します。


 メソメソしている貴族男性(年上)を前に、7歳児は目の前が真っ暗になりかけた。頭痛が痛い。気絶したい。白目むきそう。


 けど臨戦態勢取らざるを得まい…お客さんだ。



「2、3、5、くらいか?歓迎してやるよ。」



 スラムのボロい掘建て小屋の影から複数名。見た感じではなマフィアとかではなくただのゴロツキか。相手をするまでもない雑魚だな。


 故に、さっさと威圧して気絶させた。


 視界の隅っこで震えている貴族がいるが、知らん。執事は貴族の影に消えていることから今では珍しい影使いの一族か。主人の影に逃げるところから見ても、どうやら一癖も二癖もありそうな主従関係だ。だが腕は一般人よりは有ると見た。


 まあそんなことは今どうでもいい。それよりも…



「戯けが、」



 気絶した集団に紛れて意識のあるやつが居たのでとりあえずグリグリ背中を踏みつけてやった。グエッと音が聞こえるが、無視だ無視。逃げられでもしたら素敵な八つ当…げふん、質問ができないではないか。


 男を腹側から蹴り上げると同時に魔術式を組んでおいた縄を取り出す。自動で縄は男を拘束した。観念したらしい男は逆らうこともせず、あっさり色々ゲロった。不穏な気配を感じ取ったらしい。


 チッ、察しの良いやつはこれだから…



 簡潔に述べると、この国の別の貴族と犯罪ギルドに雇われていた盗賊ギルド所属の盗賊らしい。この街へは現在戦争中の別系統な裏ギルドとその関係者である子爵家の内部調査を依頼されていたとか。



「…と言うわけで、一応俺っちは敵の敵だから味方ってワケ。だから解放してくれちゃってもいいと思うの。悪いけどケッコー役立つよ俺?」



 柄の悪くチャラい兄ちゃんといった風貌…無駄にイケメンなのがなんとなくムカついたので隙があれば前歯一本折ってやろうかなと画策して居たりする。まあでも確かに有望そうだ。少なくとも殺気に耐えられるってことはある程度の修羅場は経験済み、下手すると殺人童貞も返上済みか。


 なら一応、今回は雇う形にす「あ、お前そういえば最近我が家の下男として入って居なかったか?」…訂正、既に色々やらかしてっぽいからどうしようか迷う。



「……背に腹はかえられん、道案内を頼む。だが…」



“少しでも不穏な行動したら斬る”



 パキポキと指の骨を鳴らすと(=子供)、ヒィと真っ青になりながらコクリコクリと何度も頷く盗賊(スカウト)(=大人)。多分外側から見れば酷い絵図だろう。


 裏切られないよう念のため契約書にサインと血胤押させた。終わった時点であんた鬼やと涙目で見られたが、気にしないことにした。


 とりあえず裏切るな、裏切るなよ〜…フリではなく裏切ったら死にたくなる様な辱めにあうからな〜


 ユラァとゆるく這い寄るようにそんなことを伝えると、土気色に顔色が変わった。とりあえず気付薬の代わりに乾燥させたマタタビを一個口に突っ込んだら涙目になって居た。ざまあ


 そして、いざ進もうとしたところで冒頭に戻る。現在街中を逃走中。正直トラブルに大変好かれているようで非常に不愉快である。


 何度もいうが、ドウシテコウナッタ。




 よくよく考えてみると今話では登場人物の殆どが不憫な気が…とりあえずサブタイ(裏)は『嗚呼不憫。』でしょうかねw


 それでは次回もよろしくお願いいたします!

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