22 鉄拳制裁(次いでに納涼)
読者の皆様、投稿が遅れて申し訳ないです。行調整は後日行います。
さて、お待たせ致しました。今週の不憫第一弾です、それでは本編をどぞ!
その日、非合法ギルドの1つが完膚無きまでに潰された。
表向きは田舎町にあるしがないチンピラギルド、だが裏では割かし有名なギルド。それがそのギルドを知っている連中の評価だった。
出された依頼はどれ程非情で非常であったとしても、大金さえ積まれれば手段を選ばず達成する。今回だって貴族や教会よりせしめた支援物資と軍事費を元手に“拠点”を支部という形で開拓していた。全ては出された依頼をある種忠実に達成する為。良い意味でも悪い意味でも実績と実力のあるギルドであった。
ただ、今回は相手が悪かったとしか言い様が無い。
方や歴戦錬磨のギルドといえ一般人へ毛が生えた程度の連中が大多数群を成している所。それも所詮は今まで明らかな弱者、或いは強者であってもどんぐりな相手のみをターゲットにして来た。そのツケなのか、近頃では実力の伸びが良く無い。なのに己の力が最強なのではと天狗になっていた。
方や倫理観以外は地球の日本原産の魂を引き継ぎ、兄弟盃を交わした魑魅魍魎()が幼少より普段から試練を与えた存在。加えて僅か7歳にして更に有名な裏ギルドに加盟した人物。実力・経歴・経験・肉体素要・戦闘勘…まあ挙げたらキリが無いが、全てに於いて格が違う。最早、勝る所は生きた年数しかないと言えるだろう。
数の暴力とは言うものの、やはりその軍勢を雑魚と蹴散らす事が容易い相手にとっては他愛無いもの。特に、碌な鍛錬をして来なかった腕っ節だけしか誇るものを持たない烏合の衆。幾ら群れた所で一騎当千ならぬ当京する様な者が相手となれば、所詮は藻屑となる運命しか無いのだった。
しかし彼らも報われない。所詮アウトローは救いの無い最期なのだろうが、あんまりな気がしなくも無い……彼らの身が現在進行形で破滅へと突き進んでいる理由が何とも微妙だった。そう、見ようによってはただのアクシデントとも言える微妙過ぎる理由。それは…
“睡眠時間が削られた事への八つ当たり”
当人達が聞いたら怒り通り越して泣きに入るだろう…何て理不尽な、と。
だが、間接的な原因を作った事は紛れも無い事実だった。
宿屋の老人1人から全てを奪い尽くしてボロ雑巾にしてから生き地獄を味合わせて殺す。真っ当な神経していたら余程の事情でも無い限りはまず受諾しない依頼を請け負った事。そして、その為の過程で宿屋に『呪詛』を使った事が運の尽きだったのかも知れない。いつもの拷問からの獄中での孤独死という方法を使っていれば…或いは『呪い』等と不確実で曖昧なものを胡散臭い者達から勧められるがままに使用する判断を下していなければ。とはいえ、所詮は結果論である。
さて、連中の不幸中の幸い(?)は、そんな事をうじうじ考えている猶予も休息も与えられていない事なのかもしれない。
様子を見る限り、泣き嘆いている暇なんてない状態であった…彼らが現在対峙しているのは魔物や魔人なんかより恐ろしく、ゴーストより得体の知れないナニカ。
ゆっくりと、しかし確実に追い着いて来る人形に取り憑いた魑魅。覚束ない足取りでユラリユラリと歩みを進める様子。可愛らしいピンク色な兎の縫いぐるみのそんな姿は本来なら微笑ましく、人形劇だ魔術だと子供の喜ぶ演目だろう。しかし薄暗く物静かな洋館ではその虚ろな硝子玉の目或いは浮かび上がる丸いシルエットが、逆に見る者の恐怖心を掻き立てるのだった。
それに、幾ら可愛い縫いぐるみでも血の滴る短剣を片手に薄ぼんやり光りながら床ギリギリを浮かんで移動していたら誰であっても怖いだろう。特に、武器と思しきライトスタンド(槍?)や燭台(鈍器?刺股?)が回転しながら周囲に浮遊している様子を目にしたならば。胆力に定評の有る人物であったとしても、全力で逃げ出すすと思われる。
そして『呪われた館』に相応しく、シックな色彩ながらも豪華絢爛であったギルドの拠点は今や廃墟の様にボロボロになっていた。
ラップ音が鳴り、地震でもないのに大きく揺れている為か落下して来るシャンデリアや倒壊した本棚。所々飾られた絵画も飾り皿も原型を留めておらず、中位貴族の年収約2年分を使用して整えた館は最早見る影も無かった。
だが、まだそうして荒らされている時の方が連中にとってはマシに感じた事だろう……何せ、音が鳴りを潜める度聞こえるのだ。恐らくは呪われた“何者か”の声が。
(…ザザッ……)
〈オトウサン…オカアサン……キャハハハハハハ…〉
〈アソボウヨ…アソンデクレルヨネ?〉
ふと、声が近い気がして振り返る……余りの恐怖に忠告通り含んでいた塩水を吹いた直後、置かれた状況に気付くももう遅い。
〈みぃーつけた。〉
また1人、かくれんぼ脱落者が出た。
兎の周囲に浮かぶ無数の光。それらが唖然と立ち尽くす蒼白の男を取り囲む。成す術無く、男は光に連れられて、ドア無き部屋へご案内。残ったのは彼の倒れ臥した抜け殻だけ。
こうして悲鳴を上げる事無く泡を吹いて股間を濡らした失神中の薄汚い雑魚から霊だけ抜き取られた。勿論肉体と繋いだまま。それが契約者の出した条件だったから…納得出来ない事を当たり散らすかの様にゲシゲシと人形が横たわる身体を蹴った。
”ま、何かしら情報は掠めて報酬を上乗せしてもらうとするか……ククク”
ニタリと一瞬兎が嗤った気がした。
何とか辛うじて逃げ隠れ、様子をうかがっている連中。目前にはひれ伏した仲間だった者の姿。その傍らには新しい獲物を探す虚ろな人形。周囲は何かを探す食器と燭台。かつて快適で寛げる場所だった拠点。それが今では陰鬱な牢獄……飛び回る光の粒に照らされた薄暗い闇が、今はただひたすら不気味で恐ろしい怪物の様に、その目には写っていた。
最早、冷静では居られず内心恐慌状態だった。その形相から、心の悲鳴が聞こえそうだ。
コッチキタ…コロサレル
クルナ、コナイデ
シニタクナイ、トニカクニゲロ
恐怖と苦痛を更に与える為だけに見逃された事を知らない哀れなるエモノ達…彼らの逝く末も所詮は同様。ただ、彼らの不幸は恐らくだがこの場に及んで未だに逃げられると思える程の胆力を持っていた事なのだろう。
何せ、希望なんてないのだから…
〈次はお・ま・え〉
目を輝かせて見える筈の無い死角へ虚ろな目を向ける兎の人形……今度こそはっきりその口元が一瞬弧を描いてブレた様が見えた。
ズリッ、ズリッ…引き摺った様な音を立てて逃がさんとばかりに壁側へ到頭追い詰められる……唖然と自分達の命運が尽きた事を目の当たりにするしかない。
次の瞬間、野太い悲鳴が薄暗い廊下へ鳴り響いた。
ああアアアアァァァァァアアアアアアアアアァアアアアアアアアアアアアアアァァァアァああァァ亜アアアアァァァァァああああああああああ………
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「じゃあお疲れ〜今度レインボーパフェ10個用意しておくね。」
悪霊である2人はかくれんぼ終了と同時にニコニコホクホクで帰っていった。何となく来る前後で色つやと言うか、顔色とか良くなった気がする…死んでいるのに。悪霊なのに。しかも地色が蒼白いのに。
それにしても報酬パフェとは意外というか何というか…幽霊は果たしどこで消化吸収しているのだろうか。謎と疑問に感じる事柄に溢れた、今日この頃です。
さて、お仕置きと言う名のストレス発散は終了。次いでに拷…尋問をして、元凶を特定出来た。
「…貴族ならぬ糞族と教会の癒着、ね。」
睡眠時間の分は仕返ししたが、だからと言って完全に気が済んだとは言い難い。同時に恐らく1番の被害者であるウォルターさんだって許せんだろう。
何より老人苛めは良く無いと思う。
「さて、一応こうして証拠書類と証言は取っておいたが果たしてどれだけ有効か……」
死屍累々となった悪党共の山の上で一人ごちる。
証拠書類は戦利品として相手から献上された亜空間バッグの中に全部入っている。全て本物かどうかもチェック済み。しかも書類の血印の血から魔素の属性と割合を鑑識みたいに解析して相手を特定出来る。言い逃れは出来まい。
だがやはり柔な連中だった…これが小者とか小悪党って奴か。
流石にやり過ぎも可哀想だと口酒女のアドバイスでちゃんと手加減()はした。恐怖による洗…記憶と意識の誤差がほんの少しばかり生じているかも知れないが、きっと気のせいだ。多分、メイビー。
手心加える代わりと言ってはなんだが、戦利品として貴金属や魔法金属で出来た魔導具を追加で頂く事にした。その辺に転がっているヤツから今私の椅子と化しているヤツまで、全員天辺から爪先の装備品はまるっと剥ぎ取られた状態である。
ただ、やっぱり所詮は木っ端連中。魔道具自体の出来がはっきり言って悪い。仕様がない、インゴットにしてから足のつかない場所で売りさばくか…魔王も流石にいらないって言うだろうし。
「……戻るか。」
質もデザインも微妙な亜空間バッグへ戦利品を仕舞った。そして崩れ掛けの廃墟から撤退する…背後で劈く様な悲鳴と共に崩れる音が聞こえたが、きっと気のせいだ。せいぜい、八つ当たり最中少しだけ主柱へ罅が入る様な衝撃派を放った記憶が有ったり無かったりする程度だ。故に、崩壊しても私は悪く無い。きっと多分。
去り際念のため監視を置くのと痕跡を居たか居なかったか微妙な線で消しておく。完全に消さない事がここでのポイント。奇麗過ぎる証拠隠滅は見た人物が玄人だった場合特に警戒させてしまう。これ凄く大事、テストに出ます。魔王作魔王実施、監督魔王の。
いや…勿論嘘だけど。
投稿遅れた件ですが、作成した内容を読み返した所不満が有ったのでかき直しをしていました。後、ここの所暑かったので少しひやっとする内容になっていたら…いいなと、思います。
熱中症、皆様も気をつけましょう……油断すると酷い目に遭います(経験談)
次回の投稿は日曜日に行います。それでは次回もよろしく御願い致します。




