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もし〇〇が仲間になったら(〇〇式異世界英才教育〜憎まれっ子よ、世に憚れ〜)  作者: 平泉彼方
第4章 悠々自適な9歳前半(〇〇式英才教育標準レベル実践編)
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200 歴史的大事件の前夜

 読者の皆様大変お待たせしました。

 後半がドシリアスです、それでは今週の不憫をどぞ!



「おいおい、そんな急がなくたっていいだろう!!」

「そうよ、もっといてくれたっていいのよ?」



 早速新たな街の住民と化した多くの人々の引き止める声。嬉しさ半分名残惜しさ半分で苦笑しつつ、ありがとうとこぼした。


 だが、決めた日は今日だったので、ちゃんと帰るつもりだ。

 そう、新たな街へ連絡員(幽霊)を配置して、いよいよ帰ることになったのである。


 居心地の良い街なので、大変名残惜しいが仕方がない。何より人外マ境の砦とその麓の村抱えている以上、私(食料供給源)が長期出張するのはリスクが大きすぎる。


 そうだ、もうあれから数週間どころか数ヶ月経過している。

 いくら料理を幾つか保管庫に入れてきたとしても、もう尽きているはず。


 まてよ……そうなると、一体誰が今は調理担当しているのだろうか。


 留守番組の中でマシな衛生観念持っているやつを頑張って思い出そうとしても、私には無理である。だって本当にいないから。

 本当、恐ろしいことに私へ食事類は依存しており、まさかの清潔に料理できるやつは0。


 そうなってくると食中毒事件起こしていないか、生肉食っていないか、(食べ物なくて文字通りその辺の)道草食っていないか。道草がアンドレイの手がけた薬草とかで、キレたアンドレイが暴れまわっていないか。トラウマ量産していないか……ああもうだめだ、全部起こっている気しかしない。

 などとまぁ本当色々と心配が絶えないわけで、帰らないわけにいかなくなったのである。



「世話になったな、坊主」

「あんな環境から助けてくれて、ありがとうな」



 珍しく本気で惜しまれつつ、別れを告げた。

 今回は恨まれたり疎まれることもなく、こうして感謝されたのでいい仕事をしたと個人的には感じる。何か壊すより創造する方が、達成感があっていいものだ。

 また、それだけでなく、兄貴の事とステータスに関しては収穫が大きかった。



「そうだ、一旦裏ギルド寄らないと」



 ジャミール爺さんへの報酬と、それ以外諸々。

 やることが本当、多い。


 自作した酔い止めを一気飲みして、魔王の『ジェット術式』へと乗り込む。今回はまだギリギリ一般人枠の兄貴と義姉が乗っているので魔王の暴走は心配ないと思いたいが、念を入れた(兄貴たちにも飲むか尋ねたが、苦笑しながら断られた)

 あのスパルタ魔王ならば、契約書へ名前を書いたのだからと無茶言いかねないからである(なのにそんな油断して、大丈夫だろうか兄貴と義姉は)



「おぉ、最高の飛行日和でないか!! これは飛ばして行くぞ!!」



 ……早くもフラグ回収。本当にありがとうございました。

 私と親父が止める間も無く起動させた外道魔王。ニュービー2人は突然のことにきょとんとしていたが、止まるはずもなく……



「わはははっはははっははははははははははははっははははは!!!!!!」


「「「ちょ、ま、ぎぃやあああああああああぁあああああぁああああああ……」」」




 しばし、鬼畜魔王の爆笑と新人2名の悲鳴をBGMに、乱気流な空の旅を耐え忍ぶこととなった(2時間くらいで裏ギルド上空、結界感知外箇所へ到着した)






「2人とも大丈夫……ではないか、ほい。これ飲んでおけよ」


「………………」

「…………(白目)」



 着地して2時間。未だ乗り物酔いの覚めない2人は立つこともままならず、苦しそうに地面へ座りこんでいた。

 具体的描写は省くが、酔い止め飲まなかった2人は見事三半規管シャッフルされた。地面についた頃には顔色が土気色になっており、目が回っていた。今は胃の内容物をあらかた吐き終えて、逆さにして降っても多分何も出てこない程憔悴していた。



「魔王自重……は無理かな」

「まあ無理だろうな」



 親父と達観したように頷きあう。遠くのお空から「覚えていろ」というデスボイスが聞こえたきがするが、きっと気のせいだろう。結界内だと感知される魔王は現在、上空へ待機しているので聞こえいようがないのだから。


 そして数ヶ月ぶりに顔を出した裏ギルドは、なぜか普段と雰囲気が変わっていた。

 泣いているエリスさんとそれを慰める(変態がなりを潜めた)トパーズさん。メイクを忘れて冒険者らしい格好で剣を研ぎ続けるギルマスと、実用性の高いローブと仮面から魔眼のみを晒したレミィリアさん。更にマッスル同好会の連中がちゃんと暗殺者している、だ、と……

 そして、いつも騒いでは己が醜態を晒していた連中も、今はお通夜みたいにどんよりしていた。


 いったいこれは…………!! まさか。

 パッと見回すが、目当ての人がいない。



「ライ、戻ったか……無事で安心したよ」



 私に気がついたギルマスが一瞬安堵した表情をするも、元の人間らしさを削ぎ落としたような無機質な表情へと戻り、剣を研ぎだした。



「……ジャミール爺さんは?」


「生死不明、今部下に探させているがな……生きていても地獄かもしれない」



 あの爺さんが……あの爆薬を芸術的に使って次々爆発で相手を容赦なく木っ端微塵に殺していくあの爺さんが? あんな人の身のまま『ヒトの思考力』だけを捨てられた連中に負けた……いや、そんなことあるのか?

 想像が全くつかず、ギルマスを睨みつける。



「あの爺さんが……なぜ?」



 憎々しげな表情のギルマスはいったん研ぐ手を止め俯いたまま息を深く吸った、まるで怒鳴る直前の様に。すると、誰かが背後から止めた。



「簡単だよ、彼の息子を人質に取られてあっさり捕まったんだ……ライ君、心当たりないかい?」


「!!」



 冷静な声でそう答えるトパーズさんの眼には、確かな怒りが浮かび上がっていた。力なく泣き続けるエリスさんの腰を抱き寄せ、頭を撫でながら今も陰に潜む部下と思しき男たちへ顎で指示を出しながら、私の眼を見る。

 だから私も睨むように見返し、口を開いた。



「そうか……じゃあ助けない「悪いがお前は留守番だよ、ライ」」



 その言葉へきょとんと顔を上げると、表情を再び消したギルマスが頭を振った。



「あの爆発依頼に関して罪悪感を抱くなとは言わないが、お前はまだ若い。だから大人である俺らがちゃんと責任負う。いや、むしろ負わせろ……けじめをつけさせてくれ!」


「そうよ、ライ君今回だって生き急ぎ過ぎよ。ジャミール爺さんも心配していた。もう少し何故安全な行動を取れないの?」



 背後から突如、暖かい体に抱きつかれた。

 咄嗟に攻撃反射を抑えて見上げると、涙目のままのエリスさんがいた。私の顔を眼にした瞬間、声をあげて泣き出した。

 しきりに「子供で居られるうちは子供でいて欲しいの、もう、一度踏み込んだら私みたいに戻れないのよ? お願い、お願い……」などと、嘆願するように、あるいは、まるで自分へ言い聞かせるように何度も言い続けた。

 だけど、私は彼女へ明確な答えを返さない。返せない。返してしまえば、不誠実になってしまう。だから、返せなかった。

 しゃくりあげる彼女を静かに気絶させ、トパーズさんへと渡した。



「!! エリスに何を!!」



 冷静さを失ったトパーズさんの攻撃を避けつつ移動し、マッチョ同好会の暗殺術(汗飛ばし)へ(殺さない程度の)お返しまでして、そして、ふざけたことを抜かしたギルマスの背後を取ってやった。

 一瞬で静まり返るギルド内。



「わかったかな? わかったよね? 私は強い。君たちよりずっと強いし頑丈だ。そういう暮らしをしてきたので当然だろう。

 だからすまないが、私という『強者』の邪魔はしないでくれないだろうか?」



 息を飲んだギルマス。

 私がそう言い終わってようやく、己が研ぎ中だった得物が奪われたことに気がついた様だ。しかも、刃側(・・)を私が握りしめ、その柄をギルマスの首元へつけていることへはまだ気がついた様子がない。

 だから、強めに柄を当ててやる……そこで気がついたギルマス。

 刃と柄が逆だった場合を考えてなのか、あるいは刃を握りしめた私の指が無事なことへ驚いてなのか、ギルマスは顔を青ざめさせた。



「君たちは弱いのだから、君たちこそ安全圏にいてくれ。今回ジャミール爺さんに依頼した結果こうなったって考えると、ますますここにいてもらったほうが私も動きやすい。

 だから私こそ言おう、頼むから大人しくしておいてくれ」



 ジャミール爺さんへの報酬だけダンッとカウンターへ投げ置くと、私はギルドを後にした。


 そっか、やられたのかジャミール爺さん。

 飴ちゃんと爆発物くれる、気前よく優しい爺さん。


 本物の爺さんだと半ば思って接していたけれど、そうか、そうなのか…………このままじゃあ爺さんがいなくなってしまう。



「親父悪い、砦に帰ったら戦争の準備していい?」

「ああいいよ、親らしく応援するよ。だから安心してとりかかればいいさ」



 透明な表情で答える親父。



「ただ、俺も魔王も今回は留守にする。理由はわかるな?」



 その真剣すぎる表情へ口腔内が乾くのを感じた。

 粘性の高い唾を飲み込み、一息呼吸してから答えた。




「わかっているさ、今回は自力でやるから見ておいてくれよ」



 私の修行の成果、そして、『従魔術士』としての実力は十分。怒りや動機も十分。

 ジャミール爺さんの弱み漏洩の元凶たる自分が憎い。ジャミール爺さんの事情を私以前に知っていながら何一つ対策を講じなかったギルマスや裏ギルドの連中が憎い。


 だがそれ以上に、子供を人質に取り悪辣非道な実験を繰り返す聖光教会が、何よりも憎い!!

 人を元は救うためにできた宗教のくせに……なぜだろうな。いつもこうなる理由は一体なんでだろう。


 でももうそんなことはどうでもいい。

 決めた、決めてしまった。


 私は殺る、殺ってやる。


 待っていろ教会のクソども。全員まとめてぶっころがしてやるよ、一番君たちにとってダメージの大きい方法でもってな!






 それから数日後、グラジュール王国国内の教会一部で『聖人』と『聖女』が複数壊され、司教以上の地位にいた関係者が軒並み惨殺されたのが見つかった。果たして犯人は誰か(グリゴレオ歴30年、『とある亡霊の手記』より一部抜粋)


 登場人物紹介(ネタバレ防止版)は出来次第載せます、すいません。

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