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もし〇〇が仲間になったら(〇〇式異世界英才教育〜憎まれっ子よ、世に憚れ〜)  作者: 平泉彼方
第4章 悠々自適な9歳前半(〇〇式英才教育標準レベル実践編)
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196 奇跡の光景

 読者の皆様どうもこんばんわ。ブックマークありがとうございます、今後も頑張ります!


 今回は少し短めです。それでは今週の不憫をどぞ!




 あれから更に一週間経過し、なんとか街予定地に着いた。道中また色々あって疲れたが、目標達成できたので良しとしておく。

 結論から言えば、ステータス隠蔽はあっさりできた。紫水晶から出る波長を覚えた瞬間に。ただし、予想外の方法で。


 魔術式ではなく【隠蔽】スキルが起動して。


 今回初めて知ったが【ステータス隠蔽】は【隠蔽】の下位スキルであり、【隠蔽】をある程度育てるとステータス隠蔽が行えるとのことであった。一方、魔術式によるステータス隠蔽ができなくなるそうだが。

 尚、【隠蔽Lv.800】であれば個体Lv.40のやつには見つからないそうだ。【隠蔽(特)】までスキルが育てばLv.100以上しか見られなくなり、【隠蔽(極)】になればLv.1000以上しか見られなくなるとのこと。

 使い続ければさっさと上がるとのことなので、今後積極的に使いたいと思った。

 兄貴も【双子共鳴】で隠蔽スキル自体は出ているそうなので、頑張ってみたいと話していた。




 さて、そろそろ現実に戻るか。

 蜂蜜色の街と、それを覆う緑の壁。プランターに植えていった花も無事成長して可愛らしい薄ピンク系の花を咲かせている。芝生も畑も青く、田舎街のとてもファンタジーでいい感じに長閑な風景である。

 さすが庭師アンドレイ。いい仕事をする。パーフェクトをあげたくなるくらい、イメージ通りの光景。


 ただし、そこに闊歩する巨大な野菜とかいなければ。


 唖然として見たのは、トマトやピーマンが橋の上でリア充している光景。ジャガイモとキャッサバが里芋巡って喧嘩しているのを目尻に長芋が里芋強奪する光景。あ、衛兵っぽい茄子が気絶させてどこかへ連れて行った。


 えっと……これ、何も見なかったことにして帰ってはだめだろうか。やっぱりだめですか。



「きっとすごい豊作だったんだなぁ」


「いや、それはちょっと無理があるだろう。」



 自分で言っててそう思った。けど、それ以外に説明できそうにない。

 街についたら、街の畑が豊作過ぎた。以上。

 言っている意味がわからないが、大丈夫、私もよく分かっていないから。一体何がどうしてこうなったのか。

 いくら異世界ファンタジーで謎生物が横行していたとしても、これはないだろう、これは。大体生ものだし傷ついたそばから腐ったりしないのだろうか。防腐剤なんてないだろうし。

 いやそういう問題ではないのはわかっているんだが……もうこれ収集つかないぞ。どうしよう。


 つい横を見る。

 元盗賊やっていた寒村の住民たちは、あんまりな光景にオサレな顔で固まっていた。かわいそうに。街ができたことだけでも驚いたろうに、謎生物(?)がいるのだから仕方がない。

 本当にここが故郷なのか、というか、そもそもこれは白昼夢か。頬をつねって痛みを覚えても現実離れした風景に現実逃避して隣人の頬を互いにつねる。そこでハッとして喧嘩勃発。

 あ、元奴隷のおねえさんが片方を手刀で撃沈して引き摺って行った。早速尻に敷かれたか。


 次に後ろを見る。

 あんまりな光景に兄貴含む孤児院出身者2人は唖然と前方を見ていた。一方、アンネ義姉は悟った顔を、もう一人の正気に戻っていない女の子は無邪気にやさいさんがたくさんと笑っていた。

 そのさらに後続の奴隷街教会地下出身者たちは、一部神へ祈り、神を罵り、一部は魔王やミカエリスさんの後ろへ子供達と共に怖がって隠れた。

 元娼婦のおねえさんたちは赤子を抱いている手を緩めてしまい、慌てて持ち直すも大合唱となってしまった。高齢者は驚きにあんぐり口を開いて入れ歯が飛び出していた。


 そして魔王と親父といえば、ずいぶん落ち着いた表情をしていた。



「あれは……ああ、なるほど。力がない割によく工夫しているな。」


「これだから凡人族も面白い。」



 種をああもたやすく進化させるとは。

 そう呟く魔王の視線を追ってみると、まともな村人第1号がいた。ちゃんと人の姿をしており、汗水垂らしながら麦畑の整備をきゅうりと一緒にしていた。

 きゅうりと一緒に……



「まともじゃかなったか。」



 思わず遠い目をしていた私を現実に戻したのは、親父。勢いよく肩を掴んで前を向かせ、そしてつぶやいた。



「ほら、リーダーのえっと……そうだった、エリックだった。」



 マイケルではなかったのか。いや、それはどうでもいいか(よくない)。でも確かによく見ると、あのヒゲはリーダーのエリックか。なるほど、なるほど。

 意味がわからない。


 アンドレイの仕業……はないだろうな。

 アンドレイは庭師だが、植物をあんな風にする様子を見かけたことはない。親父の昔話にもなかったし。それに多分だが、ああいうことは庭師のプライドにかけて行いわないと予想できる。

 ならば、まさかとは思うが原因はエリックか?


 そうだった。いい加減声をかけよう。



「おーい、戻ったぞ!!」



 大声でそう叫ぶと、ピタリと植物やエリックの動作が止まった。起動停止したみたいに。

 そして全員の顔(?)がこちらに向く。

 唖然としたエリックと、きゅうりの目鼻口の空洞。他野菜の空虚な目鼻口。あるはずのものがなく、まるで吸い込まれそうな、不自然に開いたままの洞穴。

 その光景にヒィと息を飲む声が聞こえ、私も一瞬悲鳴を上げかけた。控えめに言ってもホラー。というか、恐怖そのもの。



「あ、か、帰って来た!!!」



 次の瞬間エリックがこちらに突進してきた。顔をくしゃくしゃに歪ませ、涙と鼻水が垂れるのを無視して、走ってきた。そして、その背後を無言で追ってくる巨大野菜たち。



「あばば、あばばばばばば……」

「………………」

「?!うわぁああああああん」



 おっと、一瞬意識が飛んでいた。

 慌てず突っ込んでくるおっさんをさらりと避けて、魔王に突っ込ませた。だが一歩遅く、後続の野菜連合の突進は避けられなかった。

 キャベツの追突事故に巻き込まれ宙を舞う。ああ、空が綺麗だな。

 そして、後続のレタスに無事着地。以外と柔らかいし、これは新鮮でいいレタスだ、あはははは……



「#”%”!”!%#%%V#$”#!%#%!! ”$!”!#$!$!(‘%$#%&#”!!!」



 すごい声を上げながら魔王の衣服へ鼻水垂らしながら号泣するエリック。とりあえず、人恋しかったことだけは理解できた。理解できたんだが。

 集団野菜身事故を一先ずどうにかして欲しい今日この頃です。


 尚、ピーマンとトマトはエリックと野菜の突撃に参加せずずっと橋の上でイチャイチャしていました。

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