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もし〇〇が仲間になったら(〇〇式異世界英才教育〜憎まれっ子よ、世に憚れ〜)  作者: 平泉彼方
第4章 悠々自適な9歳前半(〇〇式英才教育標準レベル実践編)
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193 青空保育の傍で

 読者の皆様どうもこんばんわ。


 それでは今週の不憫をどぞ!




 親父からライフラインに関して心配無用と返事が返ってきてから早3日。赤子のおしめを替えつつ私は内心頭を抱えていた。

 隣を見ると、魔王とミカエリスさんがせっせと手を動かしていた。手際がよく、慣れているのがわかる手つきだ。ギャン泣きしている赤子を上手くなだめつつ、あっという間にさらしを取り替える。

 目前に垂れる飴色のう〇こを無心で処理しつつ、私もまた手を動かした。これ終わったら離乳食と普通の食事作らねば。ほぼ1人で大量調理するのは慣れたけどきつい。魔術なかったら詰んでいただろう。

 疲れてため息を吐いて、さて次の赤子のおしめを替えるかと歩を進める。すると、小さな手が私の足を引っ張り、前から別の子供が突進してきた。

 慌てて受け止めると、いたずらっぽい表情でニヤリと笑った。



「ライの兄ちゃん、あそぼ! ぼうけんしゃごっこがいい!!」

「ひま〜、ひま〜!!」



 返事をしようと口を開くと、ドンガラガッシャーンとすさまじい音が聞こえた。

 嫌な予感がして、おしめ替えたばかりの赤子を見る。やはり驚いたのだろう。目を見開いて固まっている。そして私と目が合うと同時に、潤んだ目が歪んだ。



「ビェエエエン!!!」「ウエェエエエエエン!!!」



 そして始まる大合唱。

 赤子は泣くのが仕事だというが、さすがに疲れてくる。さっきおしめ替える前にやっと泣き止んだところだったのに。やっとベロベロバーで笑いまくった後疲れて泣き止んでくれたのに。

 尚、咄嗟に結界張っていた魔王とミカエリスさんは寝た子を起こさずに済んでいた。呆れた目で私を見ているが、一体9歳児になにを期待しているのか。もうやだこの大人達。



「「あ、いーけないんだ、いけないんだ!!」」


「オラ、ヴァるぐ、ナイもン、グズン……ワァアアアアアン」



 お皿を大量に乗せたテーブルをヒックリ返した3歳児。普段手伝ってくれようとして失敗する子なのだが、案の定揶揄われた。

 そして始まる大合唱。ついでにお皿、割れても別に直せるからいいんだが、踏まないでくれると助かる。あ、別に集めなくていいんで、怪我するし。


 そうしてやっと処理が終わったところで、大量調理開始。日がほぼ真上に登り、もうすぐ昼の時間だと子供達の腹が知らせる。急がねば。



「ラィにぃちゃ、まだ?」「まんま、まだ?」



 あぁ、後もうちょっとなのでえっと……えっと、あ、あった、これでも齧ってて。他の子達には内緒な。その代わり食べ終わったらでいいから大人組呼んでくれ。

 キャッキャと嬉しそうにドライフルーツをほう張りつつ、トテトテ大人達の方へ向かっていった。転ばないかヒヤヒヤする。



 2〜3歳児は何故あんなに元気なのか。どこにあのパワーは有り余っているのか。

 元娼館にとらわれていた元奴隷のおねえさん達が、自分の子供を含め面倒を見てくれた1週間。だが、育児ノイローゼっぽい症状が見られたので、急遽代役することになった。

 彼女達も夜間は寝る間もなく赤子に起こされ昼間は年少組の相手をする生活に、大移動と相まってキャパオーバーしてしまったのだろう。大人にとって地味に大人数の子供相手はきついのである。

 彼女達は乳母として赤子をケアしてもらう必要もある。それだって時間が不規則なので、少しでも休んでいてもらいたいのだ。


 もう少し男手があればよかったのだが、こればかりは仕方が無い。

 あの街にいた健全な大人はほぼ女性ばかりで、奴隷や娼婦目当てに鼻の下伸ばしていた男はほぼ全員処分されていた。逃げ出した奴は追わなかったらしいが、欲をかいた奴は自業自得だろう。

 ま、仮に残っていたとしても多分追放しただろう……主に魔王が。

 尚、元奴隷・教会地下の男達には体力を要する病人や高齢者の介護やってもらっている。ごく少数しかいなかったが、こればかりは私が関わるのは難しいので助かった。

 腰をやってしまった一部には後で、湿布をやろう。



「やっと昼寝タイムか。」



 昼ごはんが終わり、少しリラックスできる時間が来た。人間の一番眠くなる2時3時くらいだろう。時計が無いので正確な時間は不明だが。

 お茶を飲みつつ、今日の修行をこなした。



「踏み込みが甘い。」



 魔王による剣術修行は主にスピードを重視しており、どれだけ短時間で効率よく殺れるかが勝負となっている。そのため、踏み込むタイミング・勢い・場所の精度が重要である。

 他にもまぁいろいろあるのだが、ここは人目が多すぎるので修行も少し手加減して行っている。特に魔王にとっては秘中にしたい術式を公表するわけにはいかない。


 だから、現在は暗器改め剣の修行をしている。武器を変えれば暗器修行に変わるので実質同じであるが。



「……わざわざすまない、だが俺も参加していいのか?」



 そして兄貴がなぜか参加することになった。アンネ義姉の押しに負けたというか、上目遣いに負けたというか。



「ついて来られるならいいんじゃない?」



 みたところ、私と比べて筋肉とか関節の可動域とか他諸々足りていない。そら今まで人外マ境にいた訳でもアンダーグラウンドでカツアゲしていた訳でも、まして、グレー準冒険者組織に所属していた訳でも無いし。鍛え方が足りないのも仕方が無いことだろう。

 それに、幽霊とアンネ義姉によれば孤児になる前は寝たきりだったそうだし。



「確かに今のままでは無理そうだが、俺だっていつかは!」



 そう言いつつ、私のように木刀を構えようとする兄貴。一応様にはなっているか。孤児院に入ってから冒険者目指して鍛えていたのでベースはできているか。

 よく見れば腕がプルプルしている。そしてあっという間に崩れ。



「兄貴はまず筋肉つけないとだな。」



 子供の頃肉つけすぎると身長伸びなくなるという話は、一部実話ではない。錘になるような筋肉をつけるのが悪いだけで、実践向けのしなやか筋肉はある程度あったほうがいい。



「明日からとりあえず腹筋背筋50回から始めれば?」



 できれば100回と言いたいところだが、まず無理だろうから段階を踏んでやっていけばいい。スモールステップという手法で、新しい行動を拒む脳を騙して新しいことを身につける方法だ。

 兄貴はムスッとしたが、やはり性格イケメンらしく素直にわかったとつぶやいた。ここで年下の弟の癖に、などとへそを曲げないところがイケメンすぎる。



 尚、この時私は気づいていなかったのだが、兄貴と師匠魔王の間でこんな会話があったらしい。



「本来なら見てやる義理は無いが、仕方なく儂は面倒を見てやるんだからちゃんと励めよ。」


「ありがとう。」


「ああ感謝しておけ、本来ならライの弱点になり得るお前なんざさっさと処分したかったのに、あいつが止めたんだから。」


「?! …………そうか。」


「さっさと強くなって、弟子の足を引っ張らない存在なれ。いいな?」






 口ではああ言いつつ、ラインハルト関係で将来殺されないか心配しているツンデレ魔王。本人に言ったら暴れます。

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