第九話 勇者の自意識は絶対過剰!?3
俺は『白黒失楽園』の最も奥にある部屋、設定事実上のボスの部屋に転移装置を使って来ていた。ちなみに転移装置は≪絶対過剰切札≫の三十四番である。
正式名称は【転移装置(テレポートシステム)】だった。効果は札に魔力を通すと今まで行った事のある場所ならどこにでも、どんな量でも、どんな重さでも、どんな大人数でも直に移動出来るという優れもの。例を挙げるとすると、例えば俺がこのを【転移装置(テレポートシステム)】持つ大国の王だとしよう。そしてとある秘境にとても価値のある資源があってそれが欲しい。軍事制圧を選んだとする。ただし秘境にある分大軍では制圧し難い。そこで俺だけがこの秘境に一度だけ赴いてすぐに帰る。するとあら不思議。大軍が一瞬で秘境に集結するじゃありませんか。
つまり、大軍をこの【転移装置(テレポートシステム)】で移動させればどんな精鋭揃いの軍でもたちまち混乱して制圧するというえげつないものである。地上でも海上でも空中でも水中でも可能。例外はあるようだが、まぁ、こんなのは序の口だ。
今回は俺の勇者や冒険者相手の戦闘経験を積む為に本来戦わなければいけない中ボスやら雑魚モンスターは一切、迷宮に出さないで真の裏ボスである俺が出陣する訳だ。ふっふっふっ、俺の経験値となって滅びるんだな、勇者よ。くっくっくっ。あ~、まだモンスターの作り方を知らないというのも一つの理由ではある。
それはさておいてだ。此処で俺が人間体形で戦ってしまうと一つ問題の浮上する。これから人里に出たくても出れないという可能性だ。勿論、たかが魔王を倒せない勇者程度に神からチートを奪い取tt……貰い受けた俺が負ける訳が無いが、慢心はいつでも出来るとよく死んだ祖父は言っていた。それに今回はこれからの生活が迷宮で引きこもり続けるか否かがかかっているのだ。仮面を着けて登場したりするのも若干憧れるが、それだと俺自身の体型は分かってしまうし仮面を割られる可能性もある。そして、なによりそういうのを誤魔化せそうな≪絶対過剰切札≫の札があったので使ってみたいというのも手助けした。
まぁ、いい。せいぜい悪役っぽく勇者共を敗北へと誘ってやろうではないか。
……中二病とか言った奴は氏ね。問答無用で氏ね。
俺は≪絶対過剰切札≫の十二番――【三圏黒炎犬(ケルベロス)】を起動させた。
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漂っているのは真っ黒い空間の中。
温かくも寒くもぬるくも無い。
光も闇も無い。
ただただ無だけを感じさせる。
そして急に訪れる引っ張られるような感覚。
俺は引っ張られる感覚に身を任せる。
――Welcome to the Monsters system――
――Starting format program――
――10%――
――25%――
――50%――
――75%――
――90%――
――complete!――
……ヴヴゥンン
「SFかよっ!!!」
「■■■■!!!」
覚醒した時、思わず俺は叫び声を上げた。なぜなら思いっきり某国民的で人型機械を操縦するアレ(……まぁ、ぶっちゃけると人型機械に乗って戦うアニメやら漫画やらならば何でもいいのだが)の搭乗席に座っていたからだ。そして俺が思わず叫んだのと同調して、俺が搭乗した【三圏黒炎犬(ケルベロス)】までが咆哮した。
ケルベロス。ギリシア神話に登場し、「底無し穴の霊」の名を持つ冥界の番犬で三つの頭を持つ犬か、時には五十の首と青銅の声を持つ怪物として知られている。死者の魂が冥界にやって来る場合にはそのまま冥界ヘと誘うのだが、冥界から逃げ出そうとする亡者は捕らえて貪り食うといわれている。また、ルネッサンス時代のプラトン主義の哲学者達は三つ首をそれぞれ「保存」「再生」「霊化」の三位一体を表す物と解釈したそうだ。そしてダンテ著の『神曲』「地獄篇」では地獄の第三圏:貪食者の地獄にて大食の罪を犯した者を引き裂き、泥濘にのたうち回させる怪物として描かれている。
そして≪絶対過剰切札≫の一部にはこのようなラスボス的な怪物の絵が描かれたカードが幾つかあり、俺は使い魔の様な存在だと思って、此処で呼び出しておいて俺は他の部屋で待機し【三圏黒炎犬(ケルベロス)】に戦わせようかと策略していたのだがどうやら違ったらしく、術者本人を搭載して戦う切札だったようだ。その証拠に目の前にはレバーの様なもの等が幾つも並んでいる。
そして俺の座席の目の前にあるSFチックなでかいホロウインドウっぽい物には先程見た勇者一行が耳を抑えている映像が浮かび上がっていた。というか、来るのが早すぎだろ。いつの間にこんなに時間が経っていたんだ?
勇者一行の表情は驚きに染まっていた。理由はおそらくまだ起動していない所に漬け込んで攻撃していたのにいきなり【三圏黒炎犬(ケルベロス)】が起動したからだろうか。
ともあれ勇者共にやられる前に起動したのだから良しとしよう。
そして、操作はPNPで『モンモン狩り捲りハンター』をプレイする時くらいに簡単だった。
操作が簡単な理由は良くわかならいが。
いや、簡単すぎたのだった。
本当に、冗談にならない位に……
野兎A「どうも、どうも。今回彼は戦闘中だから僕だけでやるね(・ω・)」
野兎A「そろそろ物語的には第一章が終了的な感じなんだヽ(・∀・)ノ」
野兎A「第二章では他の迷宮を建築し始めるよ(`・ω・´)」
野兎A「それでは |彡。゜+.*:.サッ」




