第五話 俺の精霊達は過剰な程可愛すぎる2
「憑依による完全成体・・・?」
しろの口から出てきた言葉に一応リアクションとして驚いてみたものの意味がさっぱり分からない。『憑依』と『成体』の意味くらいなら分かるが・・・。
(はい、主様の所有する古代遺物の一番から七番。≪傲慢≫≪嫉妬≫≪憤怒≫≪怠惰≫≪強欲≫≪暴食≫≪色欲≫の属性を統括する新たな精霊として体を構成し直すんです。その属性を統括する大精霊になると実体を持ち食事や睡眠が適度に必要となりますがその代わり魔力の内臓量も格段に上昇します。)
「そういえばまだ≪絶対過剰切札≫を起動していなかったか。」
別に、出すのをためらったとか引っ張ったとかそういうわけではない。魔力操作が十分に出来なければ霊樹はずっと増え続けるしなにより古代遺物が暴走するという可能性を考えたからだ。今は魔力操作も基本を習得できているので問題ないだろう。
「じゃあ、出してみるか。」
体内の魔力を感じとる。魔臓から魔力が足や腕、脳を循環しているのが把握できた。それらの一部分の手のひらに集約する。イメージは修学旅行のバスの中やホテルで遊んだトランプ。ハート十三枚、ダイヤ十三枚、スペード十三枚、クローバー十三枚。そしてジョーカー二枚。
≪絶対過剰切札≫。その意味は読んで字の如く、これら五十四枚に収められた全てが御伽話の英雄や主人公を軽く超えてしまうということ。五十四枚の中には迷宮そのものや漫画やアニメなどではお馴染みの超文明科学兵器、はてには伝説の聖剣や魔槍まで多岐に渡っていると神どもからは聞いた。トランプではない。全てが出来レースになるほどありえない力の数々。ハート、ダイヤ、スペード、クローバーの計五十二枚は廃棄し手札の全てを道化師で構成された最強のモノ。
手のひらに集めた魔力を紙のように薄く切り離していく。その数およそ五十四枚。その全てが淡い光を放ちながら座っている俺の周囲を衛星のように回っていた。
(わぁ・・・)
精霊たちは皆一様にほうけている様だった。可愛い。可愛すぎるよ、君達。
「≪絶対過剰切札≫」
俺が唱えると同時にカードは今までより一際強い光を放ち、気がつけばカードは俺の右の手に収まっていた。カードはブリッジサイズ(横幅が狭いもの)でカードの裏面は赤い下地に黒と白のラインのチェック柄。表面の絵札の場所は普通のトランプとは違いそれぞれの絵がカードに収められた能力や武器などの絵であった。どれも細かい部分までくっきりと描かれている。
一番は≪傲慢≫。玉座に座り背には紅いマントをつけて金銀宝石に装飾された王冠をかぶっているがその人物の顔には目や鼻、口が描かれていない。誰であっても成り立つ玉座に座っているということなのか。傀儡でありながらそれを知らず好き勝手に振舞う。そんな様な絵だった。
二番は≪嫉妬≫。体中に切り傷や刺し傷、火傷の跡など様々な傷跡を残しながら努力してもその人の手は前にある光の玉には届かず後ろに居たきらびやかな衣装を着た人や顔が整った者達はあっさりと取っていってしまう。光の玉を取っていく人たちは皆が一様に主人公と呼ばれる者なのだろう。才能と努力の差を彷彿させるような絵だった。
三番は≪憤怒≫。人の死体の山に登った人はその顔を己と他人の血で汚しながら天に向かって吼える。その咆哮は世界の理不尽に向かって嘆く人の悔しさなのか。体は全身鎧で覆われているため男なのか女なのかも分からず表情は影で隠れて見えない。
四番は≪怠惰≫。今度の絵には街が描かれていた。レンガ造りの家が立ち並んでいるが道を往来する者はなく、空はどんよりとした雲に覆われている。
五番は≪強欲≫。描かれているのは火を上げて燃え上がる街と血を流して地に転がる街の人々。そしてそこから去っていく何人かの盗賊たちの絵だ。盗賊たちの袋の中からは価値のありそうなあらゆる物や酒が詰め込まれていた。
六番は≪暴食≫。一人の飢えた小さい子供がカラスや鼠と共に肉の山の前で座り込み肉を生のまま食い漁っている。小さい子供が引き裂いているのは人肉だった。肋骨が見えて内臓がはみ出している。子供もカラスも鼠も、人肉の山を食っていた。
七番は≪色欲≫。歓楽街や遊郭。そこで客引きを行なう女や道を歩く柄の悪そうな男達が歓楽街の中心にある馬鹿でかい黄金の城の前に描かれていた。
「・・・あれ、八番と九番が?」
七番をめくった後。つまりは八番と九番が番号だけが書かれた状態で絵柄のあるはずの部分は黒色で塗りたくられていた。他にも同じようなカードがないか見てみるがどれも絵柄はあり重複もしていない。そのようなカードは八番と九番だけだった。
・・・考えても仕方がないと思い直しみどり達の前にカードを七枚並べて置く。
精霊たちは何かを話し合っていたが話し合いは終わったらしく、それぞれが並べたカードの上に乗った。
みどりは≪嫉妬≫。
あおは≪暴食≫。
くろは≪怠惰≫。
あかは≪憤怒≫。
きいろは≪色欲≫。
しろは≪強欲≫。
むらさきは≪傲慢≫。
全員が乗った瞬間太陽の光のような眩しさを持つ光が辺りを照らした。
野兎A「試験終わったぜヾ( ゜∀゜)ノ゛」
報「試験どうだったんだ」
野兎A「古典以外は大丈夫Σd(゜∀゜d)ォゥィェ!!!」
報「古典はどうした」
野兎A「古典以外は大丈夫Σd(゜∀゜d)ォゥィェ!!!」
報「・・・だめだったんだな」
野兎A「試験休みだぜ~るんo(≧▽≦)oるん♪」
報「人の話し聞けや」
野兎A「うるせえ~!必殺!三連打!ケケケッΨ(☆w☆)Ψ」
報「ちょ、ま」
。・゜・(Д`(⊂(゜Д゜ つ⌒
(o゜Д゜)=◯)`3゜)∵
∵;.(Д゜(○(へ´#)o
野兎A「I am winner!( ・∀・)アヒャ」
報「・・・そんな馬鹿な・・・ガクリ」




