第十二話 勇者の自意識は絶対過剰!?6
勇者、拳闘士、僧侶の三人を装飾品で着飾った自意識過剰な三馬鹿と心の中で呼び、唯一勇者パーティらしい魔法使いが不憫だと思えて仕方なかった俺。
最期の必殺技、とでも言わんばかりの極太光線を三馬鹿は放ち、俺は【三圏黒炎犬】搭載のスキル魔炎滅炎を放った。
極太光線と魔炎滅炎の黒い三つの火球は比べるのもおこがましい程威力が違い、魔炎滅炎は三馬鹿を飲み込もうとした。
しかし、勇者は部屋の端で障壁を展開していた魔法使いを自分の手元に転移(?)させ魔法使いを盾にした。魔法使いは魔法障壁を全力で展開するも、魔炎滅炎の火球は起動を逸らされるだけの結果となり、一瞬の煙幕が出来た隙に三馬鹿は脱出。
結局【三圏黒炎犬(ケルベロス)】と扉の前で倒れている魔法使いだけが残った。
【三圏黒炎犬(ケルベロス)】の機体の中で三馬鹿が≪テレポート≫で脱出して行ったのを確認した俺は、この後どうするべきかを考えていた。
勇者パーティが入って来たであろう大きな扉の前で魔法使いは倒れている。魔法使いはうつぶせに倒れており、その表情や意識が有るのか無いのかさえ分からない。
ここで考える選択肢は、
一、魔法使いの紅い華を咲かせる
二、魔法使いをほっとく。俺はそのまま帰る
三、魔法使いを捕獲する
四、魔法使いを仰向けにする
………。
まぁ、一は論外。
二は保留かな。少なくとも三馬鹿が助けに来ることは無いだろうなぁ。イケメンにあるまじきキメェ顔してたし。
三も保留。確か≪絶対過剰切札≫の中に〈隷属〉させる効果のある切札があった様な、無かった様な……現状保留がいいだろう。
四が最も常識的だ。
よし、俺の脳内議会は満場一致で四を選んだ。
【三圏黒炎犬(ケルベロス)】に乗ったまま近づく。
魔法使いの姿をズームで拡大してみると微かにだが息があった。どうやら死んではいない様だ。
試しに【三圏黒炎犬(ケルベロス)】の前脚にある爪(素材は超未来金属)の先の先のほうで魔法使いが着ている外套の上からちょんちょんと突っついてみる。
反応は……無い様だ。
次に右前脚の二本の爪で魔法使いの右手側から体を少し持ち上げてから左前脚も二本の爪で同じ様にする。【三圏黒炎犬(ケルベロス)】は三つ頭がついているのと大きさ以外は普通の犬と比べて魔改造といえる程の外見的特長は無いので普通に爪も五本あるため、残りの三本は機体の重さを支える為に使っていない。ちなみにこの爪、ある程度は伸縮自在だ。
そして発動する!
秘技――――お好み焼き返しVer人間!
ちなみに秘技お好み焼き返し!は文字通りお好み焼きを一瞬のうちに返す技で、お好み焼きが何時返されたか分からない事から秘技として語り継がれている技の事である!
なんでこんな技が身についたかというと、先輩や後輩と文化祭の打ち上げにお好み焼き屋へ行ったんだが、何故か俺にばかり作る仕事が回ってきて何時の間にかお好み焼き返し流初代継承者になっていた。
……結局全然食べれなかったのに割り勘だったんだよなぁ。
秘技お好み焼き返しVer人間!は魔法使いに衝撃を与えることなくふんわりと返したあああぁぁ!
お好み焼き返し流初代継承者の技は衰えていないいいいいいぃぃ!
ピンポンパンポーン(ちょっと落ち着こうか)
ふぅ、少しテンションが可笑しくなっていた様だ。あれだな。異世界に来てから初めて人に聞かれるかもしれなかったのが「血飛沫ヒャッハー」だったのと同じノリだった。
反省はしている、後悔はしていない(キリッ)
……一人で言ってもツッコミがない分無駄に寂しくなるだけだった。
魔法使いの顔は目深どころか口の辺りまでフードで覆われてしまっているのでやはり見えない。
だが、ひっくり返してもなんら反応が無いのでどうやら気絶の線で間違いないな。
気絶しているなら【三圏黒炎犬(ケルベロス)】から降りても大丈夫だろう。
脱出用ハッチを開けうなじの少し下の辺りから脱出する。【三圏黒炎犬(ケルベロス)】は俺が床に降り立ったのと同時に切札状態になった。
魔法使いの身長は俺より少し低い程度か。胸が微かに上下しながら息をしている。顔は先程述べたとおりフードで隠されて見えない。というか、素肌を晒している部分が一切と言って良い程無い。僅かに見えるのは顎の下あたりだけ。手すら厚い手袋で覆われて見る事が出来なかった。
装飾品など着飾る為の物はあの三馬鹿と比べても一切無い。本当に同じパーティメンバーだったのか?
腰の下に右手を添えて足の下に左手を添える。そのまま一気に持ち上げる。所謂お姫様抱っこという抱え方だ。元の世界で暮らしていた頃の俺には重く感じたのだろうが、今の俺は魔力で身体強化をしているので問題は無い。
感触は着ている服の下から伝わってくる柔らかい感触が何とも言い難い。
ん?柔らかい感触?
ふと魔法使いの顔を見ると抱えあげた拍子にかフードが落ちていた。
金髪。尖った耳。美しい美貌。
その顔に似つかわしくない両目の下、鼻の辺りに真一文字の傷。
ファンタジーな世界ではおなじみの存在。
「エルフ……か」
脳内で煩悩退散の声を張り上げながら【転移装置(テレポートシステム)】を使って居住区へと俺は戻った。
突然のエルフ少女の拾得に俺はまだ気づいていなかった。
エルフの少女の鎖骨の辺りに醜悪なデザインの刺青がある事に……
野兎A「ひゅーひゅーお持ち帰りだぁ!エルフ少女をお持ち帰りだぁ!。゜+.(・∀・)゜+.゜」
報「そんな言い方じゃ誤解を招くだろ!」
野兎A「あっ、そうそう。『紅竜1』さん、感想ありがとうございました!本当は魔法使いを色々理由をつけてKILLっちゃう予定でしたが初感想を頂いた事もあり、急遽!予定を変更して!美少女エルフをお届けします!
(*゜∀゜)=3!!」
報「いったいどういう理由で殺すシナリオになるんだよ…(マジでそうならなくてよかったわぁ)」
野兎A「えっ?三馬鹿達に気絶した振りして特攻で襲い掛かる様に命令されていたとか?o<´・ω・`>o」
報「エグいよ!エグ過ぎるよ!」
野兎A「そうかなぁ?(´Д`υ)」
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