96話 ある意味で最も禍々しいダンジョン魔王。
96話 ある意味で最も禍々しいダンジョン魔王。
小柄な女の子型魔王。
裸足の足に銀の指輪。
針のような留め具が肌を貫いているのが見えた。
普通に痛そうで萎える。
そういうの見るの、普通にダルい。
……衣擦れの音と共に、空気がざわつく。
何もしていないのに、頭がじんじんと痛い。
7番が、魔王に対する『深い恐怖心』から、一歩、後退りしたのを背中に感じる。
女の子魔王は喋っている――でも口は動いていない。
耳の奥に直接、古びた呪詛のような音が流れ込んでくる。
『私のダンジョンを荒らす者よ……覚悟はいいな』
……こんな怨霊タイプの子とは、通じ合える気がしなかった。
それが、逆に、この状況における『救い』でもある感じ。
あの幼女魔王に、完全な『愛らしい幼女擬態』をされていたら、精神的しんどさが止まらなかっただろうから。
『死ね』
と、脳内で声が響く。
同時に、幼女が両手を上げて魔法を使った。
『禍々しい波動をまとった呪いの龍』が複数体、ギニギニ、わらわらと、メデューサの髪みたいにうねる。
世界の色を奇妙に歪めつつ、こちらへと、飛んできた。
キシャという咆哮とともに襲いかかってくるそれは、見るだけで脳が軋む。
ほとんど反射の速度で、ボクの盾になるように、ゼラビロスが召喚される。
その瞬間、空気が一変。
黒いツノを掲げた漆黒の魔王の登場に、安心感が止まらない。
ゼラビロスの全身から、漆のような黒いオーラが溢れ、空間のノイズを塗りかえていく。
筋肉の稼働音すら聞こえそうな細マッチョの体躯。
見えない速度で両手を奔走させて、襲い掛かってくる呪いの龍を牽制。
メデューサのような龍たちは、即座に『ヤバさ』を感じ取って動きを止めて、ゼラビロスとにらみ合う。
続いて、パリピーニャが降臨。
銀髪がゆらめき、褐色の肌が鈍く光を弾く。
地を蹴る音が艶やかに響き、空気の圧が一変。
肩越しに流れるロングヘアが舞い、あらゆる視線を捉えて離さない。
その圧に押されて、呪いの龍たちは、ズズズっと引いていく。
ゼラビロスとパリピーニャ……『地に足の着いた強さを誇る二人の魔王』を見て、
――『女の子型のダンジョン魔王』は、
『……し、信じられない……貴様、魔王を使役できるのか……』
テンプレを、ボクの脳内に直接流し込みつつ、その細い指をゆるりと振った。
その瞬間、天井に、無数のジオメトリが出現して爆ぜる。
判断が迅速。
魔法の速攻。
――黒紫の雷撃が雨のように降り注いだ。
「のわぁあ!」
「……っ!」




