87話 日の当たる場所。
87話 日の当たる場所。
「正直、現状、こっちに選択肢はないから、答えは決まってるんだけど……一つだけ質問していい? 否定とか条件付けとかじゃなく、シンプルな疑問なんだけど……あんた、『魔王を召喚できるやばい人間』を信用できるの? ボクだったら、ボクみたいな危険分子の塊を見つけた場合、怖すぎるから、全力で殺そうとするけどな」
ボクが彼女の立場だったら、ボクみたいなやつを利用しようとは考えない。
『平民に上がれない』とはいえ、『上級奴隷なら待遇もそれなりにいいだろう』から、変な無茶をして、人生の全てが台無しになる危険な賭けはしたくない。
「普通のことをしていたら、普通に奴隷で終わるだけだ。抜け出そうと思えば……普通じゃないことをしなければいけない」
「そんなに奴隷がイヤっすか? いや、もちろん、イヤな立場ですけど……魔王を召喚できるようなヤバいやつと共犯者になるのもいとわないぐらいイヤっすか?」
「私は、日の当たる場所で生きたい。暗闇をねぐらにするのは、もうウンザリだ」
「そう……ですか」
7番の言葉に、演技性は一切感じなかった。
本気で『暗闇はもうたくさんだ』と思ってるんだろう。
……ボクのこれまでの人生は、陰鬱ではあったけど、
日ぐらいは当たっていたと思う。
だから、これまで、一度も『日の当たる場所で生きたい』と願ったことがない。
もっているものを欲しいとは思わないのが人間。
だから、ボクは、彼女の気持がさっぱり分からない。
けれど、別に分かる必要もないのだろうと思う。
相手が何を望んでいるかなんて……『最低限の把握』さえできていれば、それでいいんじゃないかと思う。
彼女は冷静で合理的な闇人形だけれど、
その奥に、ちゃんと『強い望み』みたいなものを持ってる、
普通の弱い人間だった。
だったら協力し合えるはずだ……なんてことを、思ったり、思わなかったりした。
……そこで、ボクは、一旦、彼女から目をそらして、
「……はぁ……もっと、慎重に探索すべきだったなぁ。いや、でも、ボクがマヌケだったおかげで、有能な仲間を獲得できたとも考えられるかな……」
「私は、この都市で指折りの忍びだから、慎重に行動していたとしても、いつかは、バレていたと思うが」
「……そんな指折りの忍びが味方になってくれるっていうんだから……ありがたい話なのかもね」
そこで、ボクは手を差し出す。
7番は、それにこたえてくれて、握手が成立。
「今後も、あんたの監視は、私が行うことになる。ラストローズ辺境伯には、常に『問題なし』と報告させてもらうから」
「ありがたいっす。今後とも、よろしくです」




