86話 平民にすらなれない、貴族級の力を持った奴隷。
86話 平民にすらなれない、貴族級の力を持った奴隷。
耳が痛いことばかり言うモンジンを黙らせたいけど、
それも出来ないのが現状。
モンジンは幽霊だから、ボクに対して何もできないけど、
ボクも、モンジンに対して何もできない。
ストレスのたまる関係だ。
……はやく、この関係性を解消したい。
「猿の17番。私は、あんたに賭ける」
「賭けるって……つまり、どういうこと?」
「あんたの『忍び』になる。あんたが『魔王を召喚できる』という事実を、誰にも悟らせないよう支える。代わりに──」
7番は、わずかに前かがみになりながら、目を細めて言った。
その目は冗談を通さない目だった。
ボクがふざけて返す余地なんて、1ミリも残してないやつ。
「正当な報酬がほしい」
「たとえば?」
「たとえば、あんたが……この都市で『大公』になったとする。あくまでも仮定の話だが」
「ボクがこの都市における『実質的な一番上の立場』になったとして……あなたはボクに何を望むの?」
「……私を、まっとうな貴族にしてほしい」
「ああ……あんた、平民になれないタイプの奴隷か……」
そういう人種がいることは、ボクも知ってる。
『あまりに有能であるがゆえに、昇格のチャンスを潰されて使い潰される』っていう、めちゃくちゃ可哀そうなポジションの人たち。
便利すぎるから、自由を与えられない。
社会で一番損するのは、いつだって、まじめな優等生。
この前会った『針土竜の3番』も、たぶんそう。
見るからに『できるオーラ』がバチバチ出てたし、下からもゴリゴリに慕われてた。
だからこそ──貴族どころか、平民にすらなれない。
『マジで優秀すぎるのに生まれが奴隷』って立場は、
なんだかんだと理由つけられて、
『自由のない立場』に閉じ込められる。
それがこの巨大都市ユウガの暗黙の了解。
昇格には、結局、上のハンコが必要。
上がダメって言えば、何をどうしようとダメなんだ。
ちなみに、ボクみたいな『質の低い奴隷』の場合、
逆にそこまで執着されないんで、
条件さえ揃えば、あっさり平民になれる。
バカは苦労することもあるけど、『バカだからこその特権』もある。
「このままだと、わたしはずっと奴隷のままだ。だから、あんたに賭ける。わたしのすべてを好きに利用していい。だから、あんたの力を利用させてほしい」
利用させてほしい……か。
そう素直に言われると、断りづらいものがあるよね。
……まあ、弱みを握られている現状で、断る選択肢とかないんだけどね。




