203話 狂気を抜けないトゲにする仁義。
203話 狂気を抜けないトゲにする仁義。
「どうだ、センエース。僕のこの力。この最果て……ここまでくると、もしかしたら、僕の上限は、まだまだこんなものじゃないかもしれない」
「……こうなってくると、確かに、その可能性もあるな……最終的には、真理道徳神化17とかまで進化しちゃったりして、存在値が1000京ぐらいになったりしてな、ははっ」
どうにか口角を上がる。
『こんな時でも笑える自分でありたい』という願望を意固地にする。
だがこめかみの血管は、ひと打ちごとに内側から皮膚を叩いた。
――それでも、足は前を向いたまま。
拳は握れたまま。
言葉は、折れないための楔。
狂気を『抜けないトゲ』にする。
ゼンドートは、トドメの準備に入る。
両手をセンに向けてエネルギーをためていく。
「耐えられるものなら耐えてみるといい。その方が面白そうだ。おそらく、君が耐えた分だけ……僕は高く飛べる。君が耐えれば耐えるほど……僕は強くなり続け……最終的には君が予想した通り、真理道徳神化17や20や100になるかもしれない。それはそれで面白い未来だ。謹んで受け入れよう」
「……ぅ……ぐっ」
センはあとじさる。
流石に笑えなくなってきた。
「さあ、僕を強くするために、頑張って耐えてみてくれ」
指先が、わずかに閉じる。
世界の皮膜がもう一枚、音もなくめくれ――
「――異次元砲」
色のない光が、真っ直ぐ、音を置き去りにして奔る。
センは歯を食いしばり、詩を重ねた。
「……た、多重起動。オーダー――最後の砦――」
毘沙門天の剣翼が一枚、円環に反転。
神字が走り、短句の層が連鎖する。
空虚の面に対抗する面が立ち上がり、波長をずらし、角度を殺ぎ、残りを身で受け――
衝突。
圧が盾をねじり、中心の核を押し潰す。軋む。鳴る。割れる。
――簡潔に言えば、『間に合った』が『持たない』。
異音。
胸骨の内側、アマルガムコアの座に、細いヒビが走る。
紅と黒を束ねていた金色の『芯』が、ぐらりと傾いだ。
外殻の継ぎ目が持ち上がり、歯車の嚙みが一枚、空転する。
バキ、バキバキ――
エグゾギア【英雄】の関節リングが、順番に割れていった。
肩、肘、膝、そして背。
白炎と黒風を両立させていた推進孔が、
片方ずつ失火し、咳き込むように黒煙を吐く。
紅い骨格(修羅)と黒鉄の殻(魔王)を溶接していた金線が剥がれ、
合金はただの『割れ目』へ戻った。
「くそっ、持て、持てぇ……! やばいって……っ……えぐいってぇええ!!」




