183話 激烈な弱体化。
183話 激烈な弱体化。
ゼンドートは奥歯を軋ませながら、しばし黙考した。
そして――ゆっくりと口角を吊り上げる。
「……信じがたいが……もし本当に、あれだけの『負荷』を背負っているのだとしたら……今の存在値130京を超えている私に……センエースが勝てる道理はゼロだ」
その宣告とともに、ゼンドートの顔には『勝利を確信した笑み』が浮かんでいた。
獣のような息遣いと共に、燃え盛る覇気が周囲の空気を焼き尽くす。
「終わりだ、センエース。……セミディアベル公爵を敵に回した己の愚かさを恨みながら死ね」
叫びと同時に地を蹴る。
轟音が天地を揺らし、火焔と衝撃波を巻き上げながら、ゼンドートの巨体が一直線に突進。
大地が割れ、周囲の大気が悲鳴を上げる。
まるで質量そのものが戦場に叩きつけられたかのような圧迫感。
対するセンエースは――一歩も退かない。
その立ち姿は、岩壁のように揺るぎない。
迫る巨影を、センはわずかな身の捌きで紙一重にかわす。
半身を切った瞬間には、すでに逆襲の動きに移っていた。
しなる足が稲妻のように閃き、豪快な回し蹴りがゼンドートの側頭部を捉える。
「ぐぉッ――!」
炸裂する轟音。
衝撃が頭蓋を貫き、脳髄を激しく揺さぶる。
一瞬、意識が闇に沈みかけ、視界が白く飛んだ。
ゼンドートは、ふらつく身体を必死に支え、
ぶるぶると頭を振って正気を取り戻す。
呼吸は荒く、膝がわずかに笑っていた。
「な、なぜ……」
信じられない。
理解が追いつかない。
センエースは間違いなく『サイコジョーカーの負荷』を背負っている。
つまりは激烈に弱体化しているはず。
なのに――なぜ、あの動きができる?
冷ややかな視線を浴びながら、センは泰然と告げた。
「確かに鬱陶しい『負荷』のせいで、ちょっとは弱くなっているが……俺は18兆年の中で、サイコジョーカーに耐える訓練も散々やったからな」
その声音は、天地の理を述べるかのように揺るぎない。
まるで当然のことを語るように、平然と続ける。
「アイテムで軽減しようかとも考えたんだが、それだと、うまいこと機能しなかった。きっちりと痛みを背負わないと強化効果は発揮しない。だから、俺は、普通に耐えるという訓練を散々やった」
『模試の対策で漢字ドリルをたくさんやった』というのと、ほぼ同じトーンの宣言。
「しかし、ゼンドートさんよぉ。おたくはなんで対価なしでサイコジョーカーの恩恵を受けられるんだ? キッチリと精神負荷を受けないと限り、サイコジョーカーによる『強化効果』は絶対に受けられないはずなんだが……」




