180話 イビルノイズ。
180話 イビルノイズ。
「自分しか戦力がいないときと、自分以外にも戦力がある時で、区別なく、まったく同じ行動をとる人間などいないと思いますが?」
「ま、それはそうなんだけどねぇ」
と、そう言ってから、セミディアベルは、
「んー……よし、じゃあ、プランBは、アレにしよう」
そう言って、アイテムボックスから、二つの指輪を取り出すと、
一つをゼンドートにわたして、
「はい、どの指でもいいからはめて。ただ左手の薬指は、感情的にやめてほしいかなぁ。君とそういう関係になる気はないからねぇ」
「……ひさしぶりに意見があいましたね。嬉しいですよ」
ダルそうに皮肉を口にしてから、ゼンドートは、
テキトーに選んだ右手の人差し指に、
セミディアベルからもらった指輪を装着する。
「これは、いったい?」
「原初核融合リング」
そう言いながら、セミディアベルも、右手の人差し指に指輪を装着すると、
その手で、ゼンドートの胸に手をあてて、
「イビルノイズ・アマルガメーション」
詠唱の直後、
セミディアベルの全てが、
ゼンドートの中へと溶けていく。
と、同時に、
ゼンドートの全ても、
「う、うぉおあああっ!」
セミディアベルの中へと溶けていった。
溶け合って、混ざり合って、
歪みながら、たゆたいながら、
暴走する『たった一つ』に昇華されていく。
「……ふぅううう」
不完全で不自由な一つになったゼンドートとセミディアベル。
その意識の主人格にあるのはゼンドート。
「……これは……合体か。……また、奇妙なことを……本当に、あなたは、何でもアリだな」
と、独り言をつぶやいてから、
自分の中にいるセミディアベルに、
「……ん? でも、この出力だと……センエースより弱くないですか? センエースの存在値が125京ほどなのに対し……今の僕の存在値は……90京ぐらいしかない。『さっきセンエースに一撃で吹き飛ばされた17番』の出力すら下回っているじゃないですか」
「問題ないよ。こういうことができるからね」
セミディアベル公爵が、ゼンドートの中でパチンと小気味よく指を鳴らす。
乾いた音が虚空に響いた瞬間、場の空気が一変した。
冷たい重圧が広がり、周囲を押し潰すかのような圧迫感が襲いかかる。
次の瞬間、ゼンドートの全身に黒炎が走り、皮膚の下を這う血管が真紅に発光した。
赤黒い稲妻が幾重にも絡みつき、世界そのものを侵蝕するように空間をひび割れさせる。
背後の景色すら揺らぎ、現実が削ぎ落とされていくかのようだった。
――サイコジョーカー、起動。




