33話 やめておけ、死人が出るぞ。
33話 やめておけ、死人が出るぞ。
《雅暦1001年7月12日 夕方》
「じゃあ、9番、買い物はまかせるよ。今朝、話した通り、ボクは執行部のところに申請書を出しに行ってくるから」
「あ、はーい」
残りの家事を9番に任せて、ボクは礼拝堂に向かった。
礼拝堂は、どのエリアも、基本的に、1階がお祈りする場所で、2階より上は『執行部の出張所』という形になっている。
★
礼拝堂に辿り着いて、入り口の横にある階段で2階に上がると、目の前に総合窓口がある。
今日は、すいていたので、10分も待たずに、申請書を出すことができた。
混んでいる時は、マジで、ごったがえしになっていて地獄。
最長5時間ほど待ったことがある。
5時間待ったのに『担当がいないから帰れ』と言われた……
死ねばいいのに、と思った。
今となればいい思い出……じゃないな。
普通に、今も、死ねばいいのにと思う。
「お前、バカか。お前みたいな雑魚がダンジョンに行っても死ぬだけだぞ」
受付の若い兄ちゃんが、ボクの提出書類を見て、眉間にしわを寄せた。
まあ……正常な反応だな。
ボクが受付をしていても、ボクみたいなゴミが『ダンジョンに行きたい』とか言いだしたら、鼻で笑って蹴り飛ばしてツバを吐くだろう。
「闘技場で一定以上の成績を収めた者は挑戦できるんですよね? ボク、一応、優勝経験もありますし……」
「見てたよ。この前の試合……9日ぐらいだったか? ラストローズ辺境伯が見に来ていた試合。……あの優勝は、実力じゃなく、完全に運だっただろうが。バカな30番が無意味にスキを晒して自滅しただけ」
「まあ、そうですけど……反論の余地もございませんけど」
「悪いことは言わないから、やめておけ。ダンジョンの危険度はハンパじゃないんだ。貴族連中ですら、徒党を組んで挑んで、いつもボロボロになって逃げかえってくる……そういう場所だ。改めて考えると、本当に危険な場所だよな。なんで一般開放してんだよ。地下迷宮研究会のメンバー以外は厳重に立ち入り禁止にすべきだろ。……上の連中って、マジで、何考えているかわかんねぇわ」
その後も、ダラダラと、『誰も聞いていない愚痴』を垂れ流す兄ちゃん。
あー、鬱陶しい。
ケツの穴から腕つっこんで、奥歯ガタガタいわせてやろうか。
「あの……そういうのいいんで、いいから、さっさとハンコを押してもらえますか?」
「人がせっかく、親切で止めてやってんのに……バカが。この前の大会で、せっかく運よく大金稼いだってのに、自分の力量を勘違いして、わざわざ、命を棄てにいくとは……」




