110話 嫌い。
110話 嫌い。
『……引き際をシッカリ見極めないといけない。……30分を過ぎたあたりから、逃げる準備をした方が確実ですね』
『おっしゃる通りだ、トバヒ太くん』
『ちなみに、アバターラさん……あなたは、魔王を使っていない時間は、どこに隠れているんですか?』
『誰にもバレない秘密の場所がある。そこに逃げ込めば、絶対に捕まることはない。だから、最悪、魔王召喚のタイムリミットを迎えても問題はない』
『私も、そこで、かくまってもらえますか?』
『もちろんだとも、ブラザー』
『ありがとうございます』
そうして二人は、都市内部で暴れ始める。
最初のターゲットはラストローズ辺境伯。
トバヒトがラストローズを狙った理由は、
『この都市で最も強いから』とか、
『外周全域を任されている防衛の要だから』とか、
色々あるものの、
――最大の理由は、『嫌い』だから。
超越的な才能があって、それなのに驕らず、努力を積み続けて、
若くして、辺境伯という超高位の貴族になった超々々々麒麟児。
――そんなやつ、殺したいほど嫌いに決まっている。
いつか殺したいと思っていた。
できれば、この手で八つ裂きにしたい……と夢見ていた。
今、その夢が叶う……そう思うだけで、
トバヒトの胸は大いに高鳴った。
★
結果を言うと、トバヒトは死んだ。
正確に言うと、植物人間になっただけで、命は落としていない……が、社会的には完全に死んだ。
『魔王使いのアバターラの手先』という汚名を背負ってしまった以上、もう、この都市で生きることは出来ない。
発見され次第処分されることが決定している植物人間。
……それがトバヒトの末路。
★
ラストローズを襲ったトバヒトだったが、
そんな彼の前に、『待っていました』とばかりに、
――『猿の17番』が立ちふさがった。
すべてはアバターラの計画通り。
そこから先はご想像の通り。
『トバヒト子爵?! な、なぜ、私を狙う!』
『ラストローズ辺境伯、下がってください! ボクが盾になります!』
『邪魔だ! 猿の17番! どけぇええ!! お前はあとで殺す! まずは、ラストローズからだぁああ!!』
『やらせないぞ! ラストローズ辺境伯は、この都市の希望だ! ボクが絶対に守る!』
『キモいこと言ってないで、どけぇええ! ああ、なんで、お前ごときを殺せない! 今の私は、魔王の力が使えるのに!』
この時のトバヒトは間違いなく魔王の力を有している。
だから、本来であれば、存在値9の『17番』など秒殺できるはず。
しかし、トバヒトがいくら頑張っても、17番を殺せなかった。




