75話 最初のタイムリープ。
75話 最初のタイムリープ。
筋断面積はわずか数パーセントの拡大にもかかわらず、
収縮力は数倍に跳ね上がり、
神経支配率の向上によって余すことなく筋力が引き出される。
――ダンジョン最終フロアで、座禅を組んで、気血の全てを静かに鎮めていくセン。
センは、肉体の回復に集中したまま、
自分の『中』にいる17番に、
「時間を無駄にしたくない。17番、お前が経験した『ここからの未来』を、極めて端的に教えてくれ。できるだけ整理して、なるべく俺の今後に役立つように要点をまとめながら」
(……『質の高い不可能』を注文するのはやめてくれ。ボクの国語のテストは、いつだって、60点を軽やかに切っていたんだ。読書感想文でも花丸を貰ったことは一度もない。みんながまとめサイトを使って不正しまくっている中、ボクは、ファーブル昆虫記をちゃんと読んで、ちゃんと書いた……にも関わらずだ)
「お前が無能なのは、もう溺れるほどに理解している。……いいから教えろ。ここから先、何がどうなって、31日に、ゼンドートと殺しあうことになる?」
(……)
そこで、17番は思い出す。
この先、運命の日までの間に何があったか。
★
『最初』の……タイムリープを一度もしていない時の『21日』の夕方。
17番は、ようやく、『魔王討伐隊の訓練』に『半分以上』はついていけるようになった。
カルシーン伯爵から、
『君の成長速度はなかなかだ。その調子で頑張れば、十分以上に、戦力として期待できるようになるだろう』
と、ほめられて、有頂天になったりした。
以降は、訓練に出るだけで『5000ユウガ』をもらえるようになって、そのことも普通に嬉しかった。
巻藁訓練で、『皮がめくれて血が出ても、それでも拳をふるいつづける』……という、頑張りを見せたりもした。
第一アルファで生きていた時と違い、肉体が結構簡単に再生するから、繰り返すうちに、ちょっとずつ『痛みを受け止める』というのにも、躊躇がなくなってきた。
マジで、ちょっとだけ『正拳突き』の『コツ』を掴んで、『ミケ(元20番)』にも褒められて、普通に喜んだりもした。
ちなみに、ミケの存在値は、その時点で、さらに爆上がりして、55に上がっていた。
17番は『強くなりすぎだろ! ふざけんな』とキレたり、
『もしかしたら、ミケは、このまま、魔王より強くなったりしてね』などと笑ってみたり…
当時は、ただただ、未来に希望を持っていた。
『魔王を使って成り上がるんだ!』……と、そんな風に、『なろう主人公』を満喫していた。




