27話 だいたいのことは、飾りです。
27話 だいたいのことは、飾りです。
「もういいや。そういう訓練だと思おう。『足手まとい』という『負荷』がある方が、経験値は増える。俺は詳しいんだ」
そう言って、99番と一緒にダンジョンの奥深くへと進んでいくセン。
その途中で、
「……ん」
地面にジオメトリが描かれた。
一度淡く光り輝くと、そのジオメトリから、
「ギギィ」
モンスターが出現した。
中級モンスターのガーゴイル。
岩のような体表が、金属音を立てて軋む。
巨大な鉤爪が、刃のように鈍く光った。
存在値は50前後。
その強さは、『優れた血筋と力を振りかざして好き放題している一般貴族』とほぼ同等。
存在値9のセンにとって、本来、絶対に勝てない相手。
魔王を召喚すれば瞬殺……だが、センは、魔王を召喚する気もない様子。
となれば、もはや、普通に考えると、殺されるしかない状況……だが……
センは、バキバキっと、両拳の関節を鳴らしてから、
「すぅ」
軽く深呼吸をして、
「……閃拳」
グンと力強く踏み込んで、
「ゲギャアア!」
ガーゴイルの胸部を一撃で粉砕してみせた。
それを見て、99番が……
「あのモンスターの強さは……私と、そこまで差がない……それを一撃……」
「いや、ガーゴイルと比べれば、お前の方がだいぶ強ぇよ。あのガーゴイルは存在値51で、お前は存在値72だからな。存在値が『二桁』の時の『20差』はだいぶデカいぜ。『上級貴族』と『街のチンピラ』ぐらいの差があるわけだからな」
「……あなたの存在値は10以下のはず……なのに、どうして……? ……ぁ、あなたが言ったように、存在値に20も差があれば、もはや手も足もでない差。あなたとガーゴイルは、その倍以上の差があるのに……」
「覚悟を決めた俺の前では、存在値の数値なんて飾りです。エロい人にはそれが分からんのです」
「……」
『何を言っているのかまったくわからない』という顔をしている99番に、
センは、続けて、
「……『自分より100倍以上強い奴に勝てなきゃ世界が終わる』って地獄が、『本当の絶望』だ。それ以外の厄介事なんざ、全部、昼下がりのコーヒーブレイクに過ぎない。黙ってついてこいよ、99番。お前にも、絶望の殺し方を教えてやる」
「……な、なるほど……」
そこで、99番は、わずかに頬を赤らめて、
「間違いなく、あなたは、アバターラの『本体』だ。これまでの非礼を切に詫びさせてもらう」
彼女の謝罪を気にも留めていない様子のセン。
彼女の感情なんか本当にどうでも良さそうに、
――『今、自分が獲得した経験値』だけに全神経を注ぐ。




