19話 悪意と若さ。
19話 悪意と若さ。
「……ぐっ……っ」
奥歯をかみしめる事しか出来ないラストローズを尻目に、
ゼンドートは、
(流石、セミディアベル公爵……底意地の悪さにかけては右に出る者がいない)
セミディアベルの狡猾さに呆れながらも、
ラストローズに視線を向けて、
(セミディアベル公爵に目をつけられて、可哀そうに。公爵とはもっと、うまく付き合わないといけない。……ラストローズよ……端的に言って、君は、『社会』が理解できていないんだ。ようするにガキなんだよ。君は、まだ、辺境伯の地位につける器じゃない。パメラノコット公爵が、君を出世させたのは、間違いなく間違いだった)
と、心の中で、
ラストローズがセミディアベルにイジメられているのを楽しんでいる。
もちろん、当人に楽しんでいるつもりは一切ない。
ゼンドート的には、『正しい指摘』をしているだけ。
決して、イジメられているラストローズを見て愉悦を感じていたりはしない。
断じて否。
ラストローズが『うぎぎ』となっている様を見て、脳内が快楽物質で一杯になっているけれど、でも、違う。
決して、人の不幸は蜜の味……のような、そんな正義に反する趣味嗜好は持ち合わせていない。
そう、断じて否なのだ。
(ふふふ……くくく……)
ラストローズがイジメられている様を見て、心底幸せな気持ちになっている……ように、傍目には見えるが、それも、きっと勘違いなのだ。
きっと、そう。
ゼンドートが腹の底で笑っていると、
セミディアベルが、ラストローズに、
「ラストローズくん、君はもういいよ。別の支部の視察にでも行ってきなさい。これは命令ね」
「……ぇ……いや、しかし」
「君は一々、反抗をしないと気がすまないのかな? もしかして、君の配下もそうなのだろうか? 君が何か指示を出すたびに、顔を真っ赤にして『は?』『ぁあ?』とキレ散らかすのかい? 大変だねぇ。貴族の爵位関係というのは、そんなに蔑ろにしていいものでもないと思うのだけれどねぇ」
「……し、失礼しました。ご命令通り、他の支部の視察にいってまいります」
そう言ってから、ラストローズは、言いたいことを山ほど飲み込んでいるような顔で、この場をあとにした。
★
ドアの向こうの『ラストローズの足音』が完全に消えたところで、
セミディアベルは、ゼンドートに、
「さて、オモチャ遊びも堪能したことだし、そろそろ、本題といこう」
(この人にとっては、『15歳で辺境伯になったラストローズほどの天才』ですら、ただのオモチャか……恐ろしいねぇ)




