15話 実はまったく嘘じゃない、センエースの素。
15話 実はまったく嘘じゃない、センエースの素。
「俺の下半身には、もっと地獄を見てもらう。全ての細胞をブチ殺し、そして質の高い細胞に生まれ変わらせる」
「……」
「ご理解いただけましたか? 俺はこういう人間です。決して別人が変装しているのではない。『猿の17番』とは、もともとこういう、狡猾で、野心深く、狂気的な根性の持ち主だったのです。――アホで怠惰で、『魔王特効のあるカマキリ』を召喚するしか能のないゴミというのは、あくまでも仮の姿。これが、俺の素なのです」
「……ほう、なるほど。だとしたら、見事な演技だったと言わざるをえない」
「お褒めにあずかり、恐悦至極にございます」
過剰な慇懃で頭を下げてから、
センはスっと顔を上げる。
その間も、ずっと、空気イスを保っている。
ここまでセンがゼンドートに言った言葉は、ほとんどが、ただの『その場しのぎの嘘』だが、センエースが『狂気的な努力の鬼』であることは紛れもない事実。
「まだ、なにか、聞きたいことがありますか、この上なく偉大なる次期統治者ゼンドート閣下様」
「……いや、もうない」
「それでは、失礼します。どうやら、もう午後の特訓はないようですので、自主練をさせていただきます」
そう言って、センは、貴賓室を後にした。
部屋に残されたゼンドートは、一度、天をあおぎ、
(嘘くさい話だったな。……しかし、だからこそ、本当かもしれないと思ってしまう。……仮に、今の17番の発言が嘘だとして……あそこまで奇妙な嘘をつく理由が、何か一つでもあるだろうか? …………まったく思いつかない)
ゼンドートは、かなり賢い方だが、
エスパーではないので、
他人の考えを完全に読むことは出来ない。
そして、賢いからこそ、バカの思考が分からない……ということが、往々にしてある。
センエースは、本来の『猿の17番』の演技をして、周囲の目を欺く……というのが、シンプルに面倒でイヤだった。
だから、素の自分をさらけ出して、『実は、今まで無能の演技をしていた』という嘘をついた。
賢い者なら、普通に『本来の猿の17番』の演技をするだろう。
その方が自然で、今回のように、変に怪しまれることはないだろうから。
けど、センは、ある意味で、すごくバカだから、
『無能の演技をしていた』ということにして『素の自分のすべてをさらけ出す』という誰がどう見ても最悪の悪手を打った。
これが、センエース!!
異質な性格をした、稀代の超狂人!!!




