10話 そして、無様に、世界を殺すんだよ。
10話 そして、無様に、世界を殺すんだよ。
「脆い拳だ……みっともねぇ」
そう吐き捨ててから、
センは、自分の最奥へと潜っていく。
精神が尖っていく。
ナイフで削りすぎた鉛筆みたいな、凶器的な先鋭。
折れた拳を握りしめるセンを見て、
ゼンドートは、
「まさか、その拳で殴るつもりか? やめろ、無意味に痛々しいだけだ。君は召喚士なのだから、召喚士として戦え。バカな君にも分かるよう、具体的に言おうか? 例のカマキリを召喚すればいいんだ。……誰も君に前衛としての役目など求めていない」
「誰が、いつ、どのように、どうして、何を、俺に求めるか……全部、どうでもいい。俺は俺のワガママだけを執行する。命の歪みは矯正した……次の拳は……もっと熱くたぎる。きっと、血を吐くだけじゃすまないぜ、ベイベ」
そう言ってセンはまた加速する。
ヘシ折れた拳にオーラを込める。
爆音の心臓が、風雅にシャウト。
気血が膨らんで奇抜な龍となる。
「――閃拳――」
先ほどよりも、明らかにキレのいい正拳突き。
スピード、パワー、圧力……すべてが数段階上の領域に上がっている。
アドレナリンで圧縮されたコンマ数秒の中、
心の奥で、センは叫ぶ。
(もし、俺の本名が、マジでセンエースだとしたら……自分のパンチに、閃拳って名前を付けるのは、常軌を逸してダセぇ行為。……だが、それでいい。キモすぎて笑われるぐらいじゃねぇと届かない風景がある。俺の覚悟で……世界を殺す)
バチバチに膨らんだ感情をブースターにして、
センは、ゼンドートの顔面を砕こうとした。
『もう、いっそ、ここで、ゼンドートを殺してやる』という、気合いの入った魂の一撃。
そんな一撃だったからこそ……
ゼンドートの魂にも火がついてしまう。
再三言ってきたことだが、
事実、ゼンドートは、性格こそアレだが……
――本当に優秀な武人なのだ。
「ナメるなよ、小僧」
無感情に、冷や汗一つかかず、
ゼンドートは、センの踏み込み足にタイミングを完璧に合わせて、
センの閃拳を最小の動きで回避すると同時、
――センの顎に、最短距離のショートフックを合わせてきた。
シュインと、音すらも楚々(そそ)に、
センの顎を吹っ飛ばすゼンドート。
砕け散った顎の痛みを感じながら、
それでも、センは、
ゼンドートを強い目で睨みつけながら、心の中で、
(ガチで強ぇじゃねぇか。ハンパねぇ。そんなテメェを殺さないと世界が終わる。……オーケー、ミッション了解だ。必ず殺してやる。首は洗わなくていい。跡形も残さず吹っ飛ばすから)




