15話 終わった……何もかも……
15話 終わった……何もかも……
……なにやっとるんだ、あの異常者……
などと思いつつ、遠くから伯爵を眺めていると、
後ろから、
「よう、17番」
と、『猿の20番』……もとい『平民のミケ』が話しかけてきた。
「なんで、ちょっと震えてんだ、お前」
ボクは、ミケの耳元で、ひそひそと、
「いや、あの……見てよ、あそこ」
「ん……おっ、あれは、ゼンドート伯爵か」
「え、知り合い?」
「そうじゃねぇけど、見た事ぐらいはある。あの人は、貴族の中で、特に有名人だし」
「ミケは、伯爵のこと、どのぐらい知ってるの?」
「いや、ほぼ知らんけど。……『変わった性格をしている』という噂は、たまに聞く。あと、伯爵の中では最強格っていうウワサも」
「変わった性格とかじゃないぞ、アレは」
「伯爵をアレ呼ばわりは流石にやめておけ。マジで首切られるぞ」
などと、こそこそ会話をしていると、
ボクらの存在に気づいたゼンドート伯爵が、
「そこの奴隷二人……こっちに来なさい」
と手招きしてきた。
「終わったな、17番。遺骨を、どこにばらまいてほしい?」
「そこまでしてもらえるほど、ボクら仲良かったっけ? てか、聞こえるわけないから、この距離の小声が」
などと軽口をたたき合いつつも、ボクらは駆け足で、ゼンドート伯爵のもとに向かう。
さて、なぜ呼び出されたのか……
仮にさっきの発言が聞こえていたとしても、さすがに、あの程度で殺されないとは思うけど……でも、あの異常者のことだからなぁ……
などと思いつつ、ゼンドート伯爵の前に、二人並んで直立不動。
ゼンドート伯爵は、ボクらの顔に、それぞれ一度ずつ、視線を送ってから、
クっと、ボクの目をロックオンすると、
「ラストローズ辺境伯から聞いている。猿の17番……君の召喚獣は、魔王に傷を与えたらしいな」
「ぇ、あ……はい、なんか、ボク、魔王特効のスペシャルがあるっぽくて……」
「素晴らしい。僕一人では、魔王を殺し切ることは難しい。君の協力には期待をしている」
「ぁ……はい。がんばります。うす」
そこで、ラストローズ辺境伯は、ミケに視線を向けて、
「君は、猿の20番だな」
「……はい」
ミケは、一瞬、何か言いたそうに口ごもったが、結局、素直に首を縦に振った。
たぶん、本当は『もう平民に上がっています』と言いたかったんだろうけど、大貴族の発言を修正するのは色々とリスクがあるからね。
気持ちは分かるよ。
ボクも、もう奴隷じゃないけど、奴隷呼ばわりを否定していないは、同じ理由から。




