6話 輝く明日に届く、唯一の方法。
6話 輝く明日に届く、唯一の方法。
運動部員は、監督やコーチに憎悪を抱くもの。
恩知らずで申し訳ないけど、法律がなかったら、
ボクは、きっと、カルシーン伯爵を殺している。
基礎訓練がようやく終わり、やっと休めると思ったが、まだまだ訓練は終わらなかった。
「次は反応速度を高める訓練を行う。私の攻撃を回避し続けてもらう」
そう言ってから、カルシーン伯爵は、両手に魔力をためて、
「連続光矢ランク5」
放たれた無数の『光の矢』。
かなりの速度で迫ってくる。
ボクは、どうにか、ギリギリのところで回避する……が、
どうやら、この光の矢は、ホーミング性能がついているようで、
「どわぁつ! うぇぁっ!」
避けても、避けても、何度でもUターンして、襲い掛かってくる。
「集中力を切らさないように! ここから1時間、避け続けてもらうから」
その発言を聞いて、ボクの集中力がプツンと切れた。
向かってくる矢に、ボクは、逆にタックルを決めて……そして、気絶した。
……もういっそ、殺せ。
★
《雅暦1001年7月19日夕方》
……空が濃い赤紫になってきた。
全てのトレーニングを終えて、
ようやく、ボクは家路につく。
運動場のすぐ裏手が『寮』で、本当に助かった。
この距離なら、なんとか這って帰れる。
ズリズリと匍匐前進で家に帰っている途中で、
汗だくの20番が、
「17番、流石にもうちょっと頑張れよ。お前、体力なさすぎ」
と、ボクを煽ってきた。
普段だったら、小粋なジョークの一つでも返すところだけれど、
さすがに、今日は何も言えなかった。
口を開くことすら億劫。
汗をかきすぎて、頭がズキズキしている。
口の中が血の味で一杯。
しんどい、しんどい……
と、そこで、ボクの中にいるモンジンが、
(情けない奴だ。根性が足りない)
(……っるさい)
心の中の会話すらしんどい。
死にそうだ……
と、ぐったりしていると、
あろうことか、モンジンが、ご機嫌に、
(今日が終わるまで、まだ時間があるな。よし、17番、自主トレだ。運動場の隅っこに、いい感じの『巻藁(わら束を巻いた訓練用の柱)』が立っていたから、正拳突きの練習に行こう。とりあえず、1万回を……8セット)
(……は、はは……はいはい、オモロい、オモロい)
サラっと流すボクに、モンジンは、
(ボケてねぇよ、ガチで言ってんだ。さあ、自主トレだ。人に命令されたメニューだけをこなしていても、輝く明日には届かねぇ。人がやらない時間にどれだけ積むかで、そいつの器が決まる)




