2話 権力という甘露。
2話 権力という甘露。
9番を手放すことに対し、オッサンは、マジで、相当に渋ったそうだが、ラストローズ辺境伯経由で送り込まれた『魔王組のヤカラ』の強烈な脅しを受けて、最終的には屈服したらしい。
……『権力を使う側』に回ると実感する。
魔王組は社会悪だけれど、
『世の中をよどみなく回す潤滑油』としての一面が確かにある。
ボクは、ずっと、ヤクザから搾取をされる側だったから、
『あの社会のダニどもを駆逐してやる! この世から……一匹残らず!』とか思っていたけれど、
今回の件で、正直、考えが変わったところがある。
吠えてくる野良犬は鬱陶しいが、優秀な猟犬はワシャワシャとアゴを撫でて可愛がりたい。
「センパイは、今から訓練でしたっけ?」
9番が荷物を片付けながらそう言ってきた。
ボクは、出かける準備をしながら、
「ああ。訓練に参加するかどうかは任意らしいけど、出たら日当で5000ユウガくれるらしいからな。5000ユウガだぜ、5000ユウガ。エグいぜっ」
「じゃあ、ご飯を作って待ってますね。気をつけて、いってらっしゃい」
優しい月みたいにニコやかに微笑んで送り出してくれる9番。
ボクの筋肉が『謎の活力』で膨らんだ気がした。
気のせい……なのかどうか、もう分からない。
正直、その辺の悩みは、もうどうでもいい。
★
集合場所は、寮の裏手にある運動場。
サイズ的には、甲子園球場ぐらい。
……なんて、例えているけど、ボク、甲子園球場に行ったことはないんだよね。
いつも適当で、ごめんね、ごめんね。
「よう、17番。お前も今日の訓練、参加するのか?」
話しかけてきたのは、同期の『猿の20番』。
「当たり前だろ。ボクは魔王討伐隊のリーダーでありエースなんだから。ボクが参加しないとブーイングの嵐が巻き起こる。みんなの期待に応えるのが、たった一つのボクのジャスティス」
「最近のお前のギャグセンスには、目を見張るものがあるな。その調子で、魔王討伐隊のお調子者ピエロ担当として、大いに活躍してくれ。そして、テキトーなところで死んでくれ」
「リーダーに対してなんて口の利き方だ」
「お前の『謎カマキリ』が、ちょっとだけ優秀なのは、俺も認めるにやぶさかじゃねぇけど、さすがに、こんな『ヒョロガリの根性無し』をリーダー扱いすることはできないねぇ」
なんてお喋りをしていると、
カルシーン伯爵が、運動場にやってきて、
「無駄な前置きは抜きで、さっそく、今日の訓練を開始する。まずは基礎訓練から。200メートルダッシュを30本。インターバルは20秒。さあ、全員、一列に並べ」
200メートルダッシュを……
30……だと……?!




