176話 魔王討伐隊。
176話 魔王討伐隊。
ラストローズ辺境伯は、数秒ほどブツブツ言っていたが、
途中で、首を左右に振って、
スっと、ボクに視線を向けると、
「まずは礼を言おう。君のおかげで、誰も死なずに済んだ」
「いやぁ、ボクは、魔王をちょっと驚かせただけで、時間を稼いでくれたのは辺境伯ですよ」
そう言いながら、ボクは、身を低くして、揉み手をする。
モンジンの指導で媚びるのは嫌だけど、自分主導で媚びる分には別にいい。
……ボクも、たいがい、めんどうくさい性格をしているな。
なんて思っていると、
趨勢を見守ることしか出来なかった、疲労困憊の受験生の皆さんが、
「17番。お前、ゴミみたいなツラしているが、なかなかやるじゃねぇか!」
「魔王は時間経過で帰っただけっぽいが、それでも、よくやった!」
「助かったぞ、バカガキ! 褒めてやる!」
「お前みたいな雑魚でも、役に立つんだな!」
「おい、ブサイク! 今度、一杯おごってやる! ありがたく思え!」
「頭も見た目も最低なカスだと思っていたが、見直した!」
「心の中で、ずっと、邪魔だから死ねばいいのにと思っていたが、撤回するぞ!」
もう一回、魔王を召喚してやろうかな。
念のためにはやく上がらせただけだから、あと10秒ぐらいは召喚できるぞ、クソどもが……
★
魔王が撤退して、5分ほどの簡易な休憩をはさんでから、
ラストローズ辺境伯が、壇上に立ち、
「……皆、すでに理解できていると思うが、改めて説明する。……あのアバターラとかいうイカれ異常者は、驚くべきことに、都市内部で魔王を召喚し使役することができる。あんな過激派テロリストを放っておくことはできない。……この大問題に対応すべく新設した組織が『魔王討伐隊』だ」
ボクを含めた53名の受験生たちが、黙って真剣に、ラストローズ辺境伯の話に耳を傾けている。
ラストローズ辺境伯の隣には、蝙蝠の7番が立って、全体を見渡していた。
そろそろ、外が暗くなり始めている。
土のにおいが鼻をついて、クシャミしそうになった。
ラストローズ辺境伯は続けて、
「試験的な募集である今回は、本来であれば、20名弱しか選抜しない予定だったが、もし、君たちが強い信念と覚悟をもって望むのであれば、全員を採用しても構わないと思っている。もう理解できていると思うが、正式に採用され、魔王との闘いに挑んだ場合、死ぬ可能性が極めて高い。その分、待遇に関しては、それなりのものを用意する。今後も、各エリアから、優秀な人材を大量に集めていく予定だから、過剰な大盤振る舞いは出来ないが……普通に働くよりもはるかに高い給料と福利厚生を保証する」




