164話 ボクの出身は東京大学理科三類です。
164話 ボクの出身は東京大学理科三類です。
「魔王討伐において重要なのは、『犠牲ゼロ』という『不可能』を目指すことではない。勝利の可能性を少しでも底上げすること。その点において……現状の君を登用することは、無駄な犠牲を払うことにしかならないと判断せざるをえない。今の君だと魔王相手に、役に立たないし、君を守るための壁を用意するのも悪手ある……と私は判断する」
「……」
一瞬、ぐうの音も出なくなった。
あまりにも正論すぎて、声が出なくなる。
受験生たちも、
『辺境伯のいうことはもっともだ。最悪、この都市を守るために犠牲になることは我慢するが、流石に、あんな馬鹿のために死ぬのは嫌だ』
といった顔で、こちらを見てくる。
ちなみに、ボクも、あっち側なら同じ顔をするだろう。
『なんで、ボクみたいなカスを守るために死なないといけないんだ、ふざけるな』と思うことだろう。
だから、反論はしない。
しかし、ボクは、
「ぼ、ボクは、発展途上です!」
食い下がってみる。
ボクは、『20番が凄まじい速度で成長していたこと』を思い出しつつ、
「こ、今後、ボクはどんどん成長しますよ! 事実、ボクは、ここ数日で凄まじく成長しました!」
ボクらぐらいの年齢の子供は、実際、グングン成長する。
実際の『素のボク』は、ほとんど成長しておらず、ずっと一貫してザコのままだが、就活の面接において、バカ正直に自分の欠点を答える者はいないだろう。
「今後、デバフ効果はどんどん上がっていきますし、召喚できるモンスターの種類も増えていきます! 今後、極めて有能なサポーターとして、前衛の皆様の補助ができると確信しております!」
心境としては、就活の面接で『バイトリーダーを務め、潤滑油として活躍し、副店長っぽいポジションで店を回しました』と派手に言い切るような気分。
面接において大事なのは、自分の実際の経歴じゃない。
嘘を堂々と言い切ることができるクソ度胸だ!
ボクの出身は東京大学理科三類です!!
(そこまでいくと、嘘っていうか詐欺だな。もし、エントリーシートの略歴にまで書いていた場合、私文書偽造で普通に犯罪だ)
モンジンがなんか言っているが、気にしない!
「盾役の皆様に、『こいつを守るために死ぬのも悪くない』と思わせるぐらいの実力者に、ボクは、いつか、きっとなれる! 補欠要員でも構わないので、雇ってくれませんか?! おねしゃす!」
そう言って頭を下げる。
そんなボクに、ラストローズ辺境伯は、
「現状で必要なのは壁の即戦力だ。君が、将来的に化ける可能性は認めるから、成長したら、また門をたたいてくれ。その時に、まだ魔王使いを倒せていなかったら、採用しよう」




