162話 魔王討伐。
162話 魔王討伐。
「魔王に通じるレベルではない」
「ぺぇ?」
想定外の反応に、思わず、変な声が出てしまった。
「君の査定が終われば、試験も終わり。それに、君は、魔王事件について事情を知っている。だから、もう、ここで伝えておくが……今回の試験は、私が新たに設立した『魔王討伐隊』のメンバーを選抜するためのもの」
知っています。
とは言わない。
ボクが『黒猫の99番』と共闘していることは内緒だからね。
最初から知っていたボクとは違い、他の受験生たちは、訝しげな顔をしていた。
疲れ切った顔で倒れこんだまま、受験生同士、互いに顔を見合わせながら、
「魔王討伐?」
「な、何言ってんだ……?」
「まさか、外に出て、魔王を狩ろうって?」
「冗談じゃねぇぞ。死ぬだけだ」
「辺境伯は、頭おかしくなったのか?」
「……ぁ、そ、そういえば、ウワサを聞いたことがある」
「ウワサ? どんな?」
「都市内部に、魔王が出現して暴れたってウワサ……」
「ああ、それ、おれも聞いたことある」
「ただのデマ……じゃないのか?」
「ぇ? もしかして、だから、人を集めようとしているんじゃ……」
詳しい事情を知らない挑戦者たちが、拙いウワサを頼りに、ひそひそ話し合っている。
そんな彼らを尻目に、ラストローズ辺境伯は、淡々と、
「デバフ要員や後衛アタッカーは、すでに優秀な人材がたくさんいる。現状、私が望んでいる人材は、その優秀なチームを守るための盾役だ。だから、前衛職をメインに募集をかけた」
そう言えば、前衛職ばっかりが集まっているな。
今回の就職試験は、礼拝堂の出張所で紹介されたワケだけれど、
あれも、『ボクが適任だから紹介された』というわけではなく、
ボクがしつこく『仕事はないか?』と食い下がったから、紹介されただけ。
なんてことを考えていると、
倒れている受験生たちが、またひそひそと、
「盾役……」
「確かに、おれのメインポジションはタンクだが……」
「まさか、魔王相手に、壁要員として使われるわけじゃ……」
「ま、まさかな……」
「魔王相手に壁なんて、機能するわけない」
「……一瞬で吹っ飛ばされて終わりだ」
「魔王が相手じゃ、人間の中の『多少の性能差』なんて、全部誤差だからな」
「辺境伯だって、魔王が相手だと、一撃で死ぬだろうからなぁ……」
そんな彼らの不安そうな話し声を完全にシカトして、ラストローズ辺境伯は、
「猿の17番。選抜試験に参加してくれたことは感謝するが、流石に、君では――」




