159話 『命の在り方』について。
159話 『命の在り方』について。
(17番、お前はコーヒーを淹れる作業で汗をかくか?)
(いや、流石にかかないけど……)
(俺の愛弟子であるラストローズくんにとっては、この程度のムーブは、それに等しいということだ)
(愛弟子ねぇ……ちなみに、君は、辺境伯に何を教えたの?)
(命の在り方について、こんこんと教えをといてやったような気がする)
(君がそう思うんならそうなんだろう。君の中ではね)
ボクらがお喋りしている間も、チャレンジャーたちは頑張った。
頑張ったけど……全部、完璧に無駄だった。
「くっそ……」
「冗談じゃねぇ……」
「何発打っても……当たらねぇ……」
チャレンジャーたちの焦りと疲労が無制限に広がっていく。
先ほどの辺境伯の宣言が、じっとりと現実味を帯びてきた。
『君たちでは、私に傷をつけることすら難しい』
(……傷をつけるどころか、触ることすら難しそう……)
なんて思ったときにはもう、
ほぼ全員の戦意が消え失せていた。
ただ力なく、みな、息を切らして、膝から崩れ落ちる。
それを、ラストローズ辺境伯は、遥かなる高みから見下ろしていた。
★
15分が経過したところで、
辺境伯に挑む者はゼロになった。
だって、意味ないからね。
何したって、暖簾に腕押し、柳に風。
みんな、疲れ切って、その場で倒れこんでいる。
今、この場で立っているのは、99番とボクだけ。
辺境伯は、チラと、ボクの方に視線を向けて、
「……猿の17番。こないのか?」
と、しなやかな声でそう言ってきた。
この人、能力とルックスだけじゃなく、声もイケボなんだよなぁ……
なんで、神は、この人だけをこんなに優遇するんだろう……
なんてことを思いつつ、
ボクは、一歩、前に出て、
「自分、一つ確認いいっすか?」
「……なんだ?」
「合格者は20人以下ってことらしいですけど……今のところ、確定で合格している人は何人ぐらいいます?」
「15人ぐらいは確定している。残り5人は……どうしようかと言ったところだ」
「ちなみに、その確定の15人中に、ボク、入ってます?」
「入っているわけがない。君は、私に剣を向けてすらいないのだから」
ボクは、そこで一度、『ですよね』って感じで笑いつつ、
しかし、あえて、自分の目に、『こざかしさ』をにじませ、
「……7番から聞いたんですけど、辺境伯は、ボクのことを、魔王使いじゃないかって疑っていたみたいですね」
――『第一の切り札』を出す。
「ボク、とってもショックだなぁ……こんなに純粋無垢な、かわいらしい少年を疑うだなんて……ボクの繊細な心は深く傷ついたなぁ」




