157話 私を殺してみせろ。
157話 私を殺してみせろ。
「一応、『億が一の緊急事態が起こった時のため』に、そういうルールを定めてはいるが……君たちでは、私に傷をつけることすら難しい」
その発言にカチンときている者が何人かいる。
「傷一つ受けないってのは、流石に傲慢じゃねぇか?」
「ナメやがって……」
みんな、ちょっと怒っているけど、ボクの視点だと、ラストローズ辺境伯は、ナメているわけじゃなく、事実を話している気がするけどね。
……普通に生きていると、上位貴族の強さを体験することなどない。
それに、ラストローズ辺境伯は、年齢でいえば、まだ15の若造。
だから、みな、どこかで、ラストローズ辺境伯をナメているのだろうと思う。
……実際のところは、ここにいる全員が束になっても、ラストローズ辺境伯を殺すことは絶対にできないと思う。
だって、ラストローズ辺境伯の存在値は150なんだもん。
強すぎだよ。
ラストローズ辺境伯がその気になれば、10秒以内に、ここにいる全員を殺せるだろう。
『範囲魔法で一掃する』という選択肢を取った場合の殲滅タイムは2秒以下になると思う。
「それでは始めよう。制限時間は1時間。君たちは何をしてもいい。禁止事項は一つとして設けない。……己にできる全てを賭して、私を殺してみせろ」
宣言した直後、
受験生たちが一斉に、
「「「「「うぉおおおおおおおお」」」」」
おたけびをあげて、辺境伯へ襲い掛かった。
我先にと最前線へ飛び出したのは、存在値40~50ぐらいの……普通に、そこそこ強い連中。
魔法戦士もいれば、でっかい斧を振りまわすバーサーカー系もいるし、拳ひとつで挑む脳筋モンクタイプもいる。
辺境伯のオーダー通り、それぞれ、自分にできる全てを賭して、辺境伯に猛攻撃を仕掛けている。
仮に、今、ボクが、辺境伯の立ち位置にいたら、
『ミキサーに入れられた果物』みたいになっていただろうね。
「うらぁああああ!!」
「ふんぬらばぁあああ!!」
「所詮は、二十歳にもなってねぇガキだろうが!!」
血気盛んなその叫びが、八方からラストローズ辺境伯に殺到。
――けど、
辺境伯は、目線をスイっと動かすばかり。
そして、最小限の動きで、フイフイっと……
「うわっ! 消えた!?」
「後ろだ!」
「違う、上だ!」
「そこだぁあああ!」
……誰かの鋭い突きが、辺境伯の胸を貫こうとした瞬間――
辺境伯は、まるで風のように、フワリと半身で回避した。
その光景を見て、ボクは思わず、タメ息をつく。




