134話 魔王使いのメソッド。
134話 魔王使いのメソッド。
何もせず、動かず、その場でジっとしなければいけない……というのは、拷問のラインナップに加えていいと思う。
などと、そんな風に頭の中で、色々な無駄思考を巡らせていると、
ようやく、
「ん、ん……」
と、ラストローズ辺境伯が頭を押さえながら起き上がってくれた。
遅いよ……いつまで寝てんだ。
辺境伯としての自覚が足りない。
ラストローズ辺境伯は、
「ま、魔王は……どうなったんだ……」
きょろきょろと、周囲を確認してから、
近くで気絶しているカルシーン伯爵の肩をゆする。
「おい、大丈夫か。起きてくれ」
何度かゆすると、カルシーン伯爵も、
「ん……」
意識を取り戻して、頭をおさえながら、
「生きて……る? ……私は、また、生き延びることができたのか……一日に二度も、こんな状況になるとは……幸運なのか、不運なのか……」
そして、二人は、しんどそうな顔をしているものの、貴族としての矜持をフル稼働させて、すぐさま、会議を開始する。
『魔王はどうなった?』
『もしかして、今頃、都市内部で暴れているんじゃ?』
『だったら、今頃、悲鳴が聞こえてくるはず……』
『――これまでの事件でも、魔王が出没している時間は短い傾向にあった』
『――魔王が都市内部で活動できるのは、もしかしたら、数分が限界なんじゃ?』
『あの時急に現れて【道徳の奴隷】などと名乗っていた男……あの男が魔王使いなのか?』
『二人だけで相談するより、全員で話し合った方がいいか』
そこで、カルシーン伯爵は、『全体治癒』の魔法を使いつつ、
気絶している面々を起こしていく。
ボクも、それに便乗して、
「ふぁーあ、むにゃむにゃ、あれ、ここはどこ?」
『今起きたばかりなので寝ぼけていますよ』という演技をぶちかましていく。
これでもかと目をこすり、アクビのリズムをフォルテッシモに。
ここまでやれば、誰も、『ボクが3秒前まで気絶していたこと』を疑うまい。
実際にはずっと起きていたわけだが……
(17番よ……前から思っていたが、お前の演技、ずっと、大根役者のデビュー前だからな。できるだけ演技しない方がいいぞ。不快だし、怪しまれる確率が増すだけだから)
(ボクの洗練されたメソッド演技が理解できないとは……モンジン、きみの芸術的センスには呆れるばかりだよ)
(ほう。ちなみに、メソッド演技ってどういう意味だ?)
(知らないよ。前世のどこかで聞いたことがある単語をテキトーにお届けしただけなんだから)




