131話 そう思っていた時期がボクにもありました。
131話 そう思っていた時期がボクにもありました。
ゼンドート伯爵は、剣を天に掲げ、
「この剣に、僕の命を賭けるぅう!! いくぞ、邪悪な魔王!! 正義の剣を受けてみろぉおおお!!」
叫ぶと同時に、地面が爆ぜる。
ゼンドート伯爵の咆哮に応えるように、握りしめた剣から、いななくような真っ赤なオーラが舞い上がる。
ゼラビロスへと瞬時に詰め寄り、振り下ろした魂の一刀。
「死ねぇええええええ!!!」
その一撃は、素人のボクの目からしてもすごかった。
……ゼンドート伯爵って、セリフと行動だけは一丁前なんだよなぁ。
あの一撃は、たぶん、そこらのモンスターならば跡形もなく消し飛ぶであろう、圧倒的な火力を誇る人類最高級の一閃。
とはいえ、流石に、ゼラビロスには効かないだろう。
そう思っていた時期がボクにもありました。
「ぇ?」
思わず、ボクは気絶のフリを忘れて、疑問符を口にしてしまう。
ゼンドート伯爵の剣は、なんと、信じられないことに、
――ゼラビロスの腕を切り飛ばしたのだ。
(えぇ……え? 嘘でしょ? え、だって……ゼンドート伯爵の存在値、115だよ? 115程度で、500のゼラビロスの腕を切るとか、無理だよね?)
(ああ、無理だ。ありえねぇ。その数値差は、極端に表現すれば、アリと恐竜ぐらいの差がある。アリの牙がどんだけ鋭くても、恐竜の腕は食いちぎれねぇ)
(じゃあ、なんで?!)
(あのゼンドートって野郎……どうやら、性格だけじゃなく、スペックの方も、ぶっ飛んでいるらしい……)
(マジ? な、なんで、天は、あんなのに二物を与えてんの? 天、バカなの? 死ぬの? 絶対にダメだろ! あいつにだけは力を与えちゃダメだろ!!)
ゼンドート伯爵の『謎のすごい攻撃』は、確かにすごかったが、
根本的な数値の差が大きいので、
『ゼラビロスを倒す』ということはできなかった。
ゼンドート伯爵を『危険人物』と判定したゼラビロスは、
慎重に、ゼンドート伯爵の剣を回避してから、
グっと、一気に懐にもぐりこみ、ギュンっと腰を回転させる。
「……ッッ!!」
ゼンドート伯爵の青ざめた顔がチラ見え。
――次の瞬間。
バギィィィン!!
空気が悲鳴を上げるような音がして――ゼンドート伯爵の剣が折れ、
さらに遅れて、伯爵の右腕が……肘から先ごと、空中に舞った。
「が……っ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
飛び散る鮮血。
ヒュンヒュンと空で回転している腕。




