129話 道徳の授業。
129話 道徳の授業。
「い、い、いいか、落ち着くんだ!! れ、冷静に! 大丈夫だ! 僕たちなら、相手が魔王でも、生き残ることができる!」
(ゼンドート伯爵って、有能ではあるっぽいね。ボクなら、急に殺意満点の魔王が目の前に現れたら、ションベン漏らす以外に出来ることは何もないよ)
(スペックが高いのは事実だな。身のこなしも、この中で最高峰。……ただ『性格』がぶっ飛びすぎているから、有能かどうかは、正直どうでもいいけどな。他にどんだけプラスのポイントがあっても、あいつに対する評価がマイナス点から盛り返すことはありえねぇ)
そこで、ラストローズ辺境伯が、
「アローフォーメーション!! 私が鏃を務める! 全力でサポートしてくれ!!」
覚悟を決めて、ゼラビロスに特攻を仕掛ける。
それに続くようにして、カルシーン伯爵も突撃。
ゼンドート伯爵は、自身の奴隷である『燕の5番』を盾にしつつ、後方から攻撃魔法を放った。
ほかの面々も、魔王に臆しつつも、『魔王を殺さないと生き残れない』ということは理解できるらしく、必死になって、攻撃をしかけている。
ゼラビロスは、大量の攻撃を『記録的なスコール』のように浴びていながら、微動だにしない。
轟雷と砲声の混濁が、世界を圧し潰すように響いても、昼下がりのコーヒーブレイクのような涼しい表情を崩さない。
遠距離魔法の一つがゼラビロスの頬をかすめた瞬間、そこに残ったのは傷ではなかった。ただ、魔力の奔流が、アスファルトに堕ちた雪みたいに吸い込まれ、消えていっただけ。
ゼラビロスは、何も言わず、ただそこに在るだけで、『王』としての威圧を空間に刻みつけている。
その光景を見つめながら、ボクは、心の中で、ボソっと、
(今日はまだ、4分以上、召喚できるよね)
(ああ)
(じゃあ、時間一杯使って、ゼンドート伯爵に、道徳の授業をしてあげようか)
(……4分じゃ、何も伝えられないと思うけどな。つぅか、100時間ほどかけてミッチリ教え込んでも、あいつは余裕で赤点をとりそうだ。面構えが違う……いや、逆に100点を取るかもしれねぇ。正直、そっちの方が怖い)
しばらくは黙って攻撃を受けていただけのゼラビロスだったが、
一度、ギラっと目を光らせると、スっと、身を低くして、
獰猛な四足獣みたいに、グワっと、地下迷宮研究会の面々にとびかかった。
「うぁああああ!」
「いやぁあああ!」
極めて優秀な実力を持つ『上位貴族』と『超級奴隷』だけで構成されている地下迷宮研究会の面々。
だが、魔王が相手では、さすがに、プライドを保つことができない。
子供のように泣きわめく者が続出。




