121話 こぎれいな凡人。
121話 こぎれいな凡人。
できれば、ボクの取り扱いに関して注意してほしいところだけれど、伯爵相手に、そんな指摘できるわけがない。
と、ボクが、自分のコミュ障に関して思いふけっていると、
ゼンドート伯爵が、静かなトーンで、
「ラストローズ辺境伯から話は聞いている。魔王事件の重要参考人らしいじゃないか」
ゼンドート伯爵は、なんというか……『こぎれいな凡人』という感じの見た目をしていた。
年齢は30代中盤といったところ。
造形的には特にカッコいいわけではないのだが、なんというか……雰囲気イケメン的な感じとでも言おうか。
黒髪黒目で中肉中背。
特に目立つ身体的特徴はないけれど、服装とかは上品な高級感があるし、装備品も超一級。
ゼンドート伯爵は……なんというか、佇まいが、ほんのちょっとだけ、『モンジンの分身であるアバターラ』に似ている気がした。
黒髪黒目で中肉中背という外見的特徴が部分的に一緒だから、そう思うだけかもしれないけど。
ちなみに、この世界は、日本ほどじゃないけど、黒髪黒目がそこら中にいる。
だから、その外見的特徴が一致したからといって、『似ている』と判断するのは、
――日本の学校で、教室にいる生徒を見渡して、『こいつら全員似ている』と言ってしまうのと同じぐらい頭が悪い視点。
「え、ボク、重要参考人なんですか? ただ巻き込まれただけの奴隷なんですが……」
「今回の事件に巻き込まれている者は限られているから、容疑者扱いされるのは仕方ないだろうな。ま、それだけ捜査が難航しているということ。ラストローズ辺境伯は、有能だが、まだ若い。目の前にぶら下がったニンジンには食いつかずにはいられない」
伯爵の口ぶりには、明確なトゲがあった。
ラストローズ辺境伯のことが嫌いなのだろうか。
まあ、『自分より年下の上司』が好きなヤツの方が少ないか……
30代のゼンドート伯爵からすれば、15歳のラストローズ辺境伯は、若造もいいところ。
もし、ボクが30代で、15歳の若造上司に偉そうにされたら……ことと次第によってはぶんなぐってしまうだろうなぁ……
なんて物騒なことを考えていると、ゼンドート伯爵は、ボクの全身を、上から下まで、スっと、スキャンするように、高速の視線でなぞった。
それだけで、ボクという人間の『程度』が正確に分かったらしく、
憐みを含んだ小さな笑みを浮かべて、
「安心していい。君を疑っているのは、『はやく犯人を捕まえなければいけない』と焦っているラストローズ辺境伯だけ。……僕のように、冷静に、この事件を観察している者からすれば、君はただの、どこにでもいる奴隷だ」




