120話 おそろしく高度な作戦。ボクじゃ見逃しちゃうね。
120話 おそろしく高度な作戦。ボクじゃ見逃しちゃうね。
ゼンドート伯爵が放つ、柔らかな翡翠の魔力は見ているだけで、体が癒される気がした。
もちろん、それはただの気のせいで、見ているだけでは回復したりしないけど。
……すでに、カルシーン伯爵と3番は、ゼラビロスの回復を受けているので、毒や麻痺の後遺症などは一切ない。
ぶっちゃけ、二人は気絶しているだけなので、あんな高位の回復魔法を使う必要はないのだけれど……まあ、その辺は好きにしていただいて……
高位の回復魔法を受けたことで、気絶からスパっと目覚めたカルシーン伯爵は、
「……? わ、私たちは……生き残ったのか? あの状況で、どうやって?」
続いて『針土竜の3番』も同じ疑問を口にして、首をかしげていた。
二人の疑問に対し、7番が、ソっと、ラストローズ辺境伯に視線を向ける。
ラストローズ辺境伯は、7番の視線を受けて、一度軽くうなずくと、
「どうやら、ギリギリのところで、転移のワナが発動したらしい。生き残ってくれて、本当に良かった。君たちほど有能な者はそういないから」
と、カルシーン伯爵と3番に、『7番のウソ』を伝言ゲームしてくれる。
その様子を尻目に、ボクの中のモンジンが、ボソっと、
(自分から語るのではなく、ラストローズを介入させることで嘘の信憑性と強度を増加させるという、7番のおそろしく高度な作戦。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね)
(あ、そういう作戦だったんだ……細かくてあざといねぇ。ボクレベルじゃ普通に見逃しちゃうよ。……彼女が、もし、ボクに詐欺をしかけたら、ボクは多分、ただのツボに1億以上つぎ込むだろうね)
7番は、もしかしたら、ボクが思っている以上に有能なのかもしれない。
……あるいは、ボクが思っている以上に、ボクが無能なのかもしれない。
あまり、ボクを悲しませないでほしい。
いい加減、泣いちゃうぞ。
……その後、7番とカルシーン伯爵&3番が、交互に、感謝を述べあったり、互いの健闘をたたえ合ったりして、場がしとやかに和んだ。
――と、そこで、
高性能ヒーラー『ゼンドート伯爵』がボクのところに近づいてきて、
「君が猿の17番だな」
「あ、はい……そうです」
急に話しかけられて、ボクはビクっとする。
基本的に、ボクはコミュ障で人見知りなのだ。
『会話を頑張るぞ』と『気合いを入れている時』は、他人とのセッションも不可能ではないけれど、気を抜いている時に不意打ちをくらうと、こうして、キモくキョドってしまう。




