118話 とっさの事態に弱い奴は無能。
118話 とっさの事態に弱い奴は無能。
――出口に戻ったところ、たまたま、地下迷宮研究会の面々とバッタリ出くわした。
最悪。
タイミングとか、諸々が、ずっと、最悪。
「あ……えっと……あの……これは、ですね……いわゆる一つの……その……」
想定していなかった大問題を前に、ボクはしどろもどろになってしまった。
……ボクは、『とっさの事態』に弱いのだ。
目の前にズラっと立ち並んでいるのは、『明らかに只者ではないオーラ』をまとった強者たち。
全員が、一様にこちらを警戒のまなざしで見つめていた。
無言かつ無遠慮な視線が突き刺さる。
そんなボクとは違い、
どんな時でも基本冷静な有能ニンジャ『7番』が、
「助かった。救援を要請する。実は、先ほどまで、転移のワナで飛ばされた『特殊なフロア』で、魔王を彷彿とさせるほどの強大なモンスターと戦っていたのだが、途中で、またもや転移のワナが発動して、ここに戻ってくることができた。『カルシーン伯爵』と『針土竜の3番』も、同じワナにかかって、一緒に戦っていたのだが、敵が強すぎて、二人とも気絶してしまった。……カルシーン伯爵でも勝てない化け物相手にどうしたものかと呆けていた時に、運よく転移のワナが発動してくれて……本当に助かった」
つらつらと、淀みなく、迫真の演技で、たんたんと、そう言ってくれたので、
ラストローズ辺境伯率いる有能な地下迷宮研究会の面々は、
一切疑うことなく信用してくれた。
誰かが『なるほど』とうなずき、誰かが『伯爵が無事でよかった』と微笑む。
やばかった空気が、あっさりと和らいだ。
7番の適応力と優秀さにはおそれいる。
ボク一人だったら、ここで詰んでいた可能性が高い。
……7番がブレーンになってからというもの、たびたび『ボク一人だったら詰んでいた場面』に遭遇するな……
ボク、今まで、一人で、よく詰まずに生きてこられたな……
どうやって生きていたんだ……
もう覚えていない。
ボクの記憶力をナメるなよ。
……ちなみに、地下迷宮研究会の面々は、カルシーン伯爵と3番を含め、全部で20人ほどの、なかなか大所帯チームだった。
所属メンバーの全員が、3番や7番のような『超性能奴隷』か、カルシーン伯爵やラストローズ辺境伯のような『上位貴族』という、人類最高峰と言っても過言ではないドリームチーム。
地下迷宮研究会の面々は――目つきも気配も、そこらの一般人とは格が違う。
威圧的な鎧のきらめき。
装備している武器の重厚感。
気圧されるほどの『強者』感が漂っていた。




