111話 合理とは、アプリオリな判断構造を形式化した、意志決定の自己整合性。
111話 合理とは、アプリオリな判断構造を形式化した、意志決定の自己整合性。
「17番。もし、手を汚すのが嫌だというのなら、このまま放置して帰るだけでもいい。この二人は、そろそろ毒で絶命する。彼女たちは、自分の意志で、この危険なダンジョンに足を踏み入れた。彼女たちの死は、彼女たちの責任だ。君は関係ない」
そんな風に、最善の一手を提案してくれている7番から目を背けて、
ボクは、
(モンジン、ゼラビロスを召喚して)
(7番の提案通りに、その女どもは殺した方がいいんじゃないか? 7番が言っていることは非常に合理的だ)
(そうだね、合理的だ。7番は何も間違ったことは言っていない)
(だったら――)
(でも、ボクはバカだから、合理とかよくわからないんだよね。なんなの、合理って。カキ氷の親戚?)
(……虫唾が走るレベルで、つまんねぇシャレだな。体があったら、殴り殺しているところだ。俺は『出来損ないのダジャレ』がこの世界で一番嫌いなんだ。風雅を伴わないジョークは汚物にも劣る)
モンジンの強い言葉に対し、ボクは軽く笑みを浮かべながら、
(命令だ、モンジン。ゼラビロスを召喚して……あの二人に回復魔法をかけろ。歯向かうなら、ボクは自殺する。困るだろ? どうやら、ボクが死んだら、君も死ぬっぽいから)
(俺のプライドの高さをナメるなよ。てめぇごときの命令なんか死んでも聞いてやるものか……と言いたいところだが……今回だけは、黙って命令を聞いてやるよ。なんでか分かるか?)
(なんで?)
(死ぬぐらいだったら、命令を聞いた方がマシだからさ。あと、俺も、合理ってのが良くわからないから。……なんなんだろうな、合理って。ゴーリ○ーの進化前?)
(虫唾が走るレベルでつまらないシャレだね。まったく風雅を伴っていない、汚物以下のジョークだ)
そう言って、ボクは笑った。
こんな気持ちで笑ったのは……もしかしたら、産まれて初めてかもしれない。
★
モンジンによって召喚されたゼラビロスは、
そのまま3番とカルシーン伯爵の毒と麻痺を治して、
すぐにこの場から消えていった。
この場で、すぐさま気絶から復活されると面倒なので、
『しばらく起きない状態にしてほしい』と命令したのだが、
その点もしっかりと忠実に守ってくれた。
本当に有能だ。
マジで、なんでボクみたいな『合理の意味すら分からないゴミ』の命令を聞いているのだろうか。
静かに眠っているだけの二人を尻目に、
7番が、ボクに、
「あんたは、人の話を聞く気がないのか?」




