080 戦争の足音
宰相チャマグと冒険者ギルドマスターであるドンゴルが会談した数日後、冒険者ギルドは、迷宮都市リトットから完全撤退した。
そしていつの間にか、商業ギルドも撤退していた。
リトット伯爵の執務室。
「キィー。困ったわねぇ。どうしてこうなったのかしらぁ?説明しなさい、チャマグ!」
冒険者ギルドが撤退した事で、ダンジョンの素材は全く入手出来なくなり、商業ギルドの商人達もいなくなった。
迷宮都市の住人も減る一方だ。
領地運営は最悪の事態となっている。
「はぁ、それがですね。冒険者ギルドは、伯爵様に対して狐女に謝って都市に戻って貰う様にと、要望をしたので、怒ったのですが・・・。」
「けもの如きに謝る気は全くないわ!それで何で冒険者ギルドが撤退するのよおおお!」
「伯爵様が例のEランク冒険者のタクミと敵対した事で、冒険者ギルドはこの都市を撤退すると言い出したのです。全く訳が分かりません。タクミなる者を調査しましたが、正体不明でして・・・。」
「くっ、訳が分からないわ!商業ギルドはどうなのよぉ!?」
「それは、全く分かりません。」
「分から無いじゃないのよ!チャマグ!どう責任を取る気いいい!」
「冒険者ギルドと商業ギルドの本部からは、何か言ってこないのでしょうか?」
「王都の冒険者ギルドと商業ギルドに、公爵様を通じて、正式に厳重にクレームをあげています!しかし動きは無いの!まったくっ・・・。」
「そうで御座いますか・・・。」
「それより、高品質の薬が供給出来なくなった事で、公爵様からお叱りを受けてしまったわ。薬師達を捕まえる件はどうなっているのかしら。」
「伯爵様の命令書を騎士隊長に渡して、進めさせてますが、報告はありませんか?」
「無いわねぇ。ちょっとあなた騎士隊長のマーカヤを呼んできて!」
リトット伯爵は従者を使いに出した。
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騎士隊長マーカヤが伯爵の執務室に入って来た。
「騎士隊長マーカヤです。伯爵様の命で参上しました。」
「マーカヤ!薬師捕縛の件はどうなっているのかしら。」
「公爵様の騎士隊とも連絡を取り、王国をくまなく探しておりますが、見つかっておりません。恐らく国外へ出たものと思います。」
「こ、国外!それは不味いわ。職人の国外流出は国の大損失だわ。」
「それは、不味いですな・・・。」
「不味いなんてもんじゃないわ。」
「公爵様から騎士の追加をしていただく事になってますよね。ついでに兵隊も借りましょう。」
「チャマグ!なにを言ってるのよ?」
「国外に行くとしたら隣国です。我が国の職人達を攫ったとして、侵攻しましょう。あの国は今荒れに荒れてます。その隙に職人ごと領地もいただきましょう。」
守銭奴の宰相は他人の事はどうでも良いようだ。
「おお!チャマグ冴えてるねぇ。」
馬鹿な領主は後先考えず破滅の道を進みそうだ。
「ちょっと待って下さい。そんな戦力はこの都市にありませんよ。」
良識ある騎士隊長が何とか止めようとする。
「公爵様から兵士を送って貰うまでに、ダンジョンでレベルを上げておきなさい。公爵軍が来たら出撃よ!」
「本当に出撃するのですか?」
驚愕を通り越し呆れるマーカヤ。
「本当よ!さあ行きなさい!」
(はぁ、これは俺も逃げ出した方が良いかも。)と本気で考えるマーカヤだった。




