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16:特別な理由でもあるの?

「結城さんってさ……幽霊、見えるよね?」


 如月さんの言葉に、私は固まった。

 ……なんで……それを……?

 レイ達と話しているところを見られた? いや、それなら宇佐美先生のように精神病を心配するはず。

 でも、それ以外でどうやって分かるんだ……? 私はレイ達以外の幽霊には反応しないようにしているし……。


 そこで、私はハッと我に返る。

 しまった。驚きのあまり、かなり長い間硬直してしまった。

 誤魔化すのであれば、すぐにでも違うと否定するべきだった。

 この状況での数秒の沈黙は命取りだ。


「……やっぱり……」


 私の沈黙を肯定と受け取ったらしく、如月さんはそう呟いた。

 彼女の言葉に、私は慌てて口を開く。


「なんで……そのことを……?」

「……今日の昼休憩……私と有栖川さんの誘いを断って、別の友達の所に行ったでしょう? それで私……結城さんの先約が誰なのか、気になっちゃって……屋上に見に行ったら、幽霊と楽しそうに話す結城さんがいて……」

「……如月さんも……幽霊が見えるの……?」


 掠れた声で、私は尋ねる。

 すると、如月さんは少し目を丸くして私を見て、頷いた。


「うん。……見えるよ」

「……なんで……」

「私は神社の生まれだから、小さい頃から、そういう物にはよく触れていたの。遺伝子もあるかもしれないけど……気付いたら、見えるようになっていたんだ」

「……そうなんだ」


 小さく、私は呟く。

 ……そういえば、如月さんの家は神社なんだっけ……。

 幽霊が見える基準とかはよく分からないけど、神社の生まれだったりすると、見えるものなのだろうか。

 むしろ、どちらかと言うと私の方が特例なのだろうか……。

 一人で云々と考え込んでいると、如月さんは近くにあった椅子に腰かけ、口を開く。


「それで……結城さんはなんで、あの幽霊と仲良くしているの?」

「……なんで、って……」

「幽霊が見えるなら分かっているよね? ……あの輩には、あまり関わらない方が良いって」


 声のトーンが、僅かに下がった気がした。

 ……まぁ、彼女の言う通りではある。

 幽霊なんて、極力関わらないようにするべき存在だ。

 私だって分かってる。分かった上で……関わっているんだ。


「……それは、知ってる、けど……」

「じゃあ、尚更分からないよ。……何か、特別な理由でもあるの?」

「えっと……」


 やけに食い気味に聞いてくる如月さんに、私は目を逸らす。

 特別な理由、と言われても……。


「……放っておけなかったから」

「へっ?」

「レイのことが放っておけなくて……記憶を取り戻す手伝いをして欲しいって頼まれててさ。まぁ、日常生活に支障が無い範疇で協力しているんだ」

「……幽霊の記憶を取り戻す……って、充分面倒なことに感じるんだけど……」


 私の説明に、如月さんは苦笑気味に笑いながら言った。

 うーん……まぁ、かなりめんどくさいかな。

 でも……。


「……やるって決めたことだから……やり通したいんだ」


 私はそう言いながら、笑って見せる。

 すると、如月さんは目を丸くして、ジッと私を見つめてきた。

 しばらくして、スッと無表情になった。


「……そっか……」

「うん。……あっ、幽霊が見えることは、他の人には内緒にして貰えないかな? こんな見た目で幽霊見えるなんて言ったら、中二病拗らせてるって思われちゃうから」

「……まぁ、私も隠してるし、それくらいは構わないけど?」


 そう言って微笑む如月さんに、私は「ありがとう!」とお礼を言う。

 良かった。幽霊が見えることに関して突っ込まれた時はどうなるかと思ったが、穏便に済ませられそうだった。

 しかし、まさか私以外にも幽霊が見える人がいるとは思わなかった。

 神社の生まれだから、かぁ……血筋とか、自分の環境とか、そういうのも関係しているのかな。


 ……私の幽霊が見える理由は確定している。

 そのことから言えることは……如月さんと私は、絶対的に違うということ。

 如月さんのような、綺麗な理由じゃない。

 だって……私は……――。


「……ところで、さ」


 如月さんが口を開いたことに気付き、私はハッと顔を上げる。

 すると、彼女が真っ直ぐ私を見つめていることに気付いた。

 予想外の事に、私は怖気づく。


「き、如月さん?」

「……その、幽霊さんの記憶を取り戻すのって、結城さんじゃないとダメなの?」


 思いもしない質問に、私は「え?」と聞き返す。

 すると、彼女は私の目を真っ直ぐ見つめたまま、続けた。


「私は……小さい頃から色々な幽霊と関わってきた。両親にもこの能力はあってさ、幽霊に関することも色々教えて貰って、知識もある。だから……結城さんよりも早く、記憶を取り戻すことが出来ると思うよ」

「ど……どういう意味……?」


 咄嗟に聞き返すが、もう答えは分かりきっていた。

 如月さんの言うことは正論で、反論する余地など無い。

 でも……なぜかは分からないけど、嫌だった。

 彼女の言葉を認めるのが、嫌だった。

 だから……聞き返す。

 万が一の、僅かな可能性に懸けて……私は彼女の真意を探る。

 そんな私に、如月さんはゆっくりと、口を開く。


「だから……その幽霊さんの件、私が代わりに解決させるよ」

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