【幕間】
──白髪の美少女探し。
眠れない夜に散歩していたイワンが出会い、一目惚れした人物。
知り得ている情報は少ない。
①髪の色。
②土龍寮の制服を着ていた。
③上級生かもしれない。
④純白パンティを履いていた。
こんなふわっとした情報でどうやって見付ければいいと言うのか。
イワンには悪いがパンティの色は証拠のうちに入らない。
そのため、記憶の中の彼女を見せてもらうことにした。
魔法によってアルバートはイワンの頭の中に入り込みその夜を体験した。
確かに絶世の美女と言ってもいいかもしれない。
エルフのような神秘的美しさがあるというか、ミステリアスというか、とにかく美の化身だった。
と言ってもアルバートが見ている彼女はイワンの記憶によって美化されまくったものである。
職員室で生徒の資料を見たがそれらしい人物はいない。
なにか素性を隠したい生徒が夜中の散歩をするために変装していたのかもしれない。
そもそも生徒だったのかも怪しい。
この学園の自然地帯(湖、森、火山など)にはそこに合った生態がおり、モンスターが現れる。
その中には人間に擬態するシェイプシフターだっている。
学園内で亡くなった幽霊の可能性も捨てがたいが、その推測はイワンに強く否定されてしまった。
確かに透けておらず、はっきりと綺麗な脚があったのだ。
「記憶の中の少女。……少女にしては口調が変だったな。一人称も『ワシ』だ。美少女には不似合いというか違和感があり過ぎる。自分の事を『老人』とも表現していたな。生徒ではないのか? だったら土龍寮の制服を着ていた理由はなんだ」
アルバートは自室でぶつぶつと独り言を重ねる。
ベッドには疲れたのかあくびをしてから丸まる黒猫のノラ。
探偵ミステリーで使いがちのボードにメモを張り、糸を繋げ、それを睨みつける。
「《ウロボロス》寮に入っても疑われないよう。なんのために姿を隠す?」
学園内の地図を広げる。
「《ウロボロス》寮は学園の敷地のなかでちょうど真ん中に位置している。召喚魔法のように半径で範囲が定められている魔法を扱うにはうってつけだ」
もしも生徒ではないのなら、監督責任がある教師である可能性が出てくる。
「俺が入学したら『当分この姿で歩き回ることは難しくなる』とも言っていたな。おそらくこれは魔力の混線〝魔力食い〟のことを心配しての言葉。範囲魔法が解けるという意味ではない。『この姿』ということは彼女自身になにかが起こるという意味ではないだろうか。上位の妖精のように魔力で作られた身体だったり? いや幽霊のように透けてしまうし、夜中であったなら眩しく光っていたはずだ。──【魔法によってなにかしらの人体強化を永続的に付与している】。この辺りが妥当だろうな」
だったら魔力食いが起これば一時的に魔法が解かれてしまう。
○見た目の変化。存在の維持。
○病気などに侵され魔法によってその進行を止めている。
彼女の言動を考えるとおそらく後者。
病気ではなく、老いそのものを止めているのだとしたら?
──不老。
であるなら白髪の美少女は見た目以上の年齢だ。
①老人口調。
②土龍寮の制服を着ていたが生徒ではない。
③寮から常に範囲魔法を展開している。
④自身に魔法を付与していており、若い身体を保っている。
「思い当たる人物がひとりいるな。そういえば消化不良の謎があった。どうして探りを入れていなかったのか不思議なくらいじゃないか」
──謎は解けた。
スッキリしたから笑いながらベッドにダイブ。
その勢いで眠っていたノラが「みゃぁ!?」飛び跳ねる。
「しかしあの老人の操縦者が美少女だなんて誰が想像できる。なかなかのミスリードだ。面白い」
4つの条件を揃えている人物はひとりだけだろう。
学園内で多くの魔法を展開出来、不老の魔法なんてアルバートですら知らないものを扱える。
勇者を導き、魔王を討伐したあの人物であるなら納得も出来るだろう。




