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【Ⅷ】

 アルバートの監視下のもと行われた純白パンティ持ち主に返却作戦。

 犯人が再び現れたと騒ぎは大きくなっているものの、ルパンの正体はバレることなく土龍(ウロボロス)寮、水龍(リバイアサン)寮、風龍(セイリュウ)寮への返却は完了した。

 1泊2日程度のレンタル、使用人が知らず知らずのうちに洗濯していたとでも思わない物か。

 たぶん無理だ。


 ──残るは火龍(ファフニール)寮。

 召喚師であるイワンの寮の向かい、行き来はそう難しいものではない。

 すぐに終わる……かに思えた。


 火龍(ファフニール)寮の前で仁王立ちしている少女を見るまでは。

 しかも消灯の時間も近づいているこんな遅くに、アダマンタイトのフル装備に赤い刀身をしたロングソード。

 木の後ろに隠れているルパンから「……きぃっ」と情けない声が上がった。


(……げ、ベルカーラ・ウェストリンド公爵令嬢)


(おい、お前さん。もしやと思うが俺の婚約者のパンティまで盗んでやしないだろうな? 事と次第によってお前の命の保証が出来かねんぞ)


(ぬ、盗むわけないじゃないですか! 第三王子の婚約者ですよ。誰がそんな命知らずなこと出来ますか)


第二王子()の婚約者のパンティは盗んでおいてよく言う)


(でも意外ですね。魔法の事ばかりで第三王子は婚約者様のことなんて興味ないって噂されてましたが、その慌てっぷり。脈ありなんですか?)


(『命の保証』どうこうは俺がお前をどうこうしてやるとかではなくてな、ベルカーラに)


(あー、はいはい。そういうのいいんで。童貞(ドーテー)の言い訳ってやつでしょ?)


(お前だんだんふてぶてしくなってるぞ)


(とにかく僕はベルカーラ様のパンティは盗んでないので!)


 だったらどうしてベルカーラは鬼の形相で寮の前でロングソードを構えているのだろうか。


「そこの後ろ……誰かいますね。隠れているということは、後ろめたいなにかがあるのでしょう。

例えば女生徒の下着を盗み、かと思えば返却している愉快犯とかですかね」


(そういわれるとお前怪盗キッ●みたいなことしてるな)


(なんですかそれ。──そ、そんなことよりどうしますか。ルパンの居場所バレちゃってますよ。ほらだんだん近づいてっ)


(落ち着け。ベルカーラが門番している時点で詰みだ。いったん召喚魔法を解いて)


「下級生に頼まれてしまったのですよ。どうか下着泥棒を火あぶりにしてくださいと。だから私はなにがなんでも火あぶりにして貴方がどんなにひどい事をしたのか思い知っていただきます」


 冷ややかに凛とした話し方をしながらも熱を帯びている。

 フル装備がすれる音と共に近づいてくる。


(だめだな。頼まれごととなるとベルカーラは必ず遂行する。犯人が捕まるまで永遠と火龍(ファフニール)寮の前に居座るはずだ。……仕方ない。いつ来ても同じなら今日、終わらせるぞ)


(終わらせるってどうやって。ルパンの正体があと数歩で)


「ベルカーラ。こんな遅くになにをしている?」


 今まで自室で念話(テレパシー)していたはずのアルバート。

 彼がベルカーラの横にいる。

 転移魔法(テレポート)である。


 臨戦態勢だったベルカーラは無意識に突如現れた人影に斬りかかってしまう。

 全力で、しかも身体に触れた瞬間に爆炎。

 上半身を吹き飛ばした、ようにも見えた。

 というか流石に死んだろ、これは。


(第三王子が殺された!!)


「──っ!? 申し訳ございませんアルバート。お怪我はありませんか?」


「ああ、問題ない」


(そんなバカな! あれは即死の威力でしたよ!! 人間が耐えられるわけないこのバケモノが)


 アルバートは念話(テレパシー)によるツッコミを無視する。


 ベルカーラの一振り、それを片手で受け止めたアルバート。

 そして爆炎をシールドらしき防御魔法で防いだのである。

 正直、アルバート自身も魔法によるテクニカルさに驚きを隠せない。


 しかし少しのホコリはついてしまったようでベルカーラがハンカチで顔を拭った。


「アルバートこそ、どうしてこんな時間にこの寮に……それより、今は下着泥棒の確保です。手伝っていただけると」


「指の先にいるのか?」


 ベルカーラが指さす木のほうへ視線を向ける。


「あの後ろに……て、あれ?」


 出てきたのは一匹の黒猫。

 面倒くさそうな顔で「みゃお」と鳴いた。


「すみません。私の勘違いだったようです」


「そうか。なら俺の要件を聞いてくれるか?」


「なんでしょう」


 ベルカーラは髪をかき上げる。

 戦闘が出来るように化粧だってろくにしていない。

 そもそも服装がアダマンタイトのフル装備である。

 第三王子の婚約者として少し恥ずかしさを覚えた。


「今度、ふたりで学園内の娯楽施設を回らないか?」


「……それは、『でぇと』なるものでしょうか」


「まあ、そんなものだ。ああ、婚約者同士デートをしよう」


「はい。喜んで」


 アルバートが言葉を言い終わるよりも早くベルカーラは強く頷いた。

 その気迫と真剣な眼差しを受けながらアルバートは後ろに隠れているルパンとノラに合図をする。

 最強門番の攻略である。




(人たらし過ぎませんかね、第三王子)


(必要な事だろ。色んな意味で)


(……僕が『童貞(ドーテー)』って言ったから怒ったんですか?)


(そういう意味じゃねぇよ!!)

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます! パンツ返却作戦のもう一人の壁・ベルカーラ現る!?Σ(・ω・ノ)ノ! 盗まれたわけではないけど頼まれて、か・・・Σ(||゜Д゜)ヒィィィィ イワン、アルバとのや…
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