【Ⅶ】
「それぞれの寮に効率よく行くためには、召喚獣自体もこの学園にいる必要があるだろう」
「ペット連れ込み許可だね」
「ああ。召喚獣である個体を見つけ出し、ペットとしてこの学園に連れて来ている」
召喚獣はいつも同じ個体なのかという疑問はある。
現に妹のイルミアに聞いたことがあったが『知るわけないし』とため息交じり言われてしまった
しかしアルバートが召喚魔法を使えばティファが現れる、他のエルフ族ではなく。
召喚を繰り返し、位置情報の共有が出来ればいずれは見つけ出す事も可能なのかもしれい。
知恵がある生き物であるなら、「生息している場所にある珍しいものを見付けて召喚時持ってきてくれ」などだろう。
それが特定の場所にしか存在しないのであれば迎えに行くことが出来る。
「……だが、そんな面倒な事をする必要がどこにある?」
「入学前からこの事件を考えてたとかかな」
「純白パンティへの執着、あっぱれだな」
「感心しないでよ。それで? 犯人は分かったわけ」
「ペット持ち込みしている生徒なんてほとんどだからな。ピッキング出来そうな生き物を探そうにもさっぱりだ。ファンタジー世界の動物になにが出来ても驚きはしないさ。犬や猫だって容疑者なんだから」
「流石に四足歩行に鍵開けは無理だと思うけど」
ティファが困った顔になる
魔法が存在する世界と言えど魔力を持たない生き物は元いた世界と同じような存在だ。
しかしアルバートは知っている。
特殊な魔法職には『動物変身』なる、動物の姿に変身し他人を欺く魔法だって存在する。
しかしそんな生物を召喚獣にしていたら魔力量の消費は計り知れない。
今回の事件に関しては魔力を持たない生き物と考えるのが妥当だろう。
「召喚獣もこの学園内にいたと考えるなら推理は容易い。契約解除した時に召喚獣は召喚される前にいた場所に戻る。効率化を考えるにその復活地点もどこかの寮の中と考えるべきだろう」
「んー。ちょっと難しくてボクの思考が追い付かないんだけど」
「つまりは召喚獣は魔法によって何度も復活地点と召喚者の元に出現していたことになる。そのふたつの場所の近くでは自然と目撃者情報も多くなるわけだ」
「それで、その場所というと」
「まず復活地点だが、そこは目星がついている」
その日、その場所には、魔力で召喚者と繋がった生き物が通れない寮がひとつあるのだ。
「下着泥棒時、俺は校舎の食堂で熟睡してしまったんだ。そこで無意識に防衛魔法をはっていたようで誰も起こしにこなかった。ところで食堂の真下は?」
「地下にある水龍寮に行くための階段に向かう廊下だね」
「それなりの範囲だったようだからな。その廊下を使うと魔力食い、分かりやすくいうなら魔力の混線によって召喚魔法が解けてしまう」
「わかった。じゃあ、召喚獣本体は水龍寮に閉じ込められるわけだね」
復活地点は水龍寮でまず間違いはないだろう。
その証拠に二番目に被害者が多い。
「……でも普通に考えたら一番距離の遠い風龍寮を復活地点にするのが良かったんじゃないかな?」
「あの寮の作りは特殊だからな。目くらましの為に盗んだに過ぎないのだろうさ」
「そっか。あそこ飛行魔法がないと部屋には入れない……あれ? でも少なからず被害者はいるんだよね」
「さあな。翼がある動物なのか、それとも最近建物の構造を変えた奴がいるか」
思い当たるふしはあれど、否定する。
確かに最近アルバートは破壊しかけた風龍寮の修復をさせられた。
その時にちょっとした小細工や隠し部屋は作ったけれど、どれも謎解きが必要な物だ。
〝全部屋に続く階段が現れる仕掛け〟を使われたわけがないのである。
「そんなことより、重要なのは召喚者の地点だ。これは目撃者を出来るだけ作らないように自室と考えるべきだろう。そして捕まりそうになってもすぐに契約解除して復活地点に戻っても差し支えのない場所。当然、その寮では被害者が多くなる」
「この土龍寮だね」
「その通り。そして何度か謎の生き物が目撃された通路の近く、手先が器用で二足歩行をする生き物をペットとして学園登録している生徒。」
ふたりは扉の前に立ちふさがる。
アルバートは答え合わせを待ち望んでいる優等生のような、または欲望に堕ちる人間を眺める悪魔のような笑みで扉をノックした。
「さあ、純白パンティ大量泥棒犯。お前の動機を聞いてやろう」
「……アルバ、すごい悪役顔だよ」




