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第六十話 不穏な元カノ

 それにしても、座った状態で見るとすずって身長高いよな。

 普段は俺が身長が高いこともあり、あまり気にしていなかった。

 見上げると他の女子との差が目立つ。

 というより、クラスの他の女子よりは格段に高い。

 凛子先輩も同様だが、百七十センチ超えの女子ってのはなかなかレアかもしれない。


「その課題が終わったら一緒に購買に行かない?」

「いいけどなんでだ?」

「……実は何も食べてない」


 お腹を押さえて悲しそうな顔を見せるすず。

 既に昼休みが始まって半分近く時間が経過しているのだが、何故今更。

 聞くと、寝ていたと返された。


 部活の休憩時間に寝る奴だもんな。

 意外性はない。


「それならもう行こうぜ」

「しゅうき、課題やらなくていいの?」

「別に急ぎじゃないし、お前の飯の方が大事だ」

「えへへ。ごちそうになります」

「奢るとは言ってねぇ」


 都合のいい解釈しやがって。

 姫希の例があるため、俺も軽はずみに奢るなどとは言わないようにしている。

 特にこいつら女バスのメンバーは底が知れないし。


 というわけで二人で教室を出た。


 二人で廊下を歩きながら話す。


「すずはどう? バスケ上手?」

「リバウンド取るのは上手だぞ」


 素直に褒めると、彼女はドヤ顔を浮かべた。


「すずはお尻がおっきいから、リバウンド争いは得意なの」

「……そうか」


 あまり女子で尻がデカいことを自慢する奴はいない。

 どちらかと言うとコンプレックスに感じているケースが多いはずだ。

 例えばあきらは、中学の頃くらいからお尻がおっきくなる……と日々憂鬱そうに言っていた。


 それに比べてこいつの自信たっぷりの表情。

 やはり普通ではない。


「ゴール下のポジションは凛子先輩だけじゃ不安だったからな。お前が来てくれて嬉しいよ」

「どんと任せて」


 頼りになる返事だ。

 これでもう少し常識的な行動をしてくれればいいんだが。

 ……うーん。


「一応聞いておくが、今はパンツ履いてるんだよな?」

「当たり前」

「……」


 何を言ってるの?と言わんばかりにきょとんとされる。

 お前が基本的にパンツ履かないからこんな質問されるんだろうがよ。


「スカートの中ノーパンって、変態じゃん」

「部室でパンツ脱いで寝てるお前も大概だ」

「見られて困る人は入ってこないし」

「羞恥心どうなってんだよ」


 脳がバグるってのはこういう奴のための言葉なんだろうな。

 すずと会話しているとため息が止まらない。

 でも、なんだかんだ楽しいのも事実だ。

 ニコッと笑いながら俺の事を見つめてくる奴に嫌な気はしない。


 ただ、どうしたもんかな……。


 俺は一応すずから告白をされている。

 すずを見てて、と言われて以降、具体的に付き合おうという告白は受けていないが、俺も本気で考えた方が良いよな。


 少し前の俺――未来と付き合う前なら喜んでOKしたと思う。

 すずは事実めちゃくちゃ可愛いし、一緒に居て笑顔になれる。


 だがしかし、あれから色々あった。

 今はまだ恋愛とか考えている余裕がない。

 それに、俺達は来月に試合を控えている。

 すずの復帰のおかげで正式に試合エントリーもしたし、これからは部活に本腰を入れたいのだ。

 色恋沙汰でまた荒れるのなんて御免である。


 なんて、そんな事を考えながら階段を降りると。


「あ」

「……」


 最近は会話をしていなかった例の女に出くわした。

 ヘアピンで前髪を留め、綺麗なおでこを曝け出した女子。

 元カノの未来だ。


 彼女は俺に遭遇してわたわたと焦っている。

 何か焦るようなことをしていたのだろうか。


 俺は用などないため、素通りしようとする。

 しかし、そんな俺のズボンを掴む手。


「……なんだよ」

「あ、その……いや」

「はぁ?」


 こいつ、あんなことがあったのに懲りずにまだストーカーをしているのか?

 不快感に顔を歪めた俺。

 しかし彼女は手を大きく振った。


「ち、違う! ただ、その……」

「何が違うんだよ。もう俺に関わるなって」

「……ごめん」


 しゅんと項垂れる未来。

 なんだその反応は。

 何か用があるなら普通に言えばいいのに。


 話しかけられると迷惑だが、同じクラスのメンバーであるため、流石に完全無視をする気はない。


「ん? だれ?」

「ッ!」


 相変わらず俺にべたべたしているすずを見て、未来は目を見開き、そのままその場を後にした。


 マジでなんだったんだ……?



 ◇



 今日は金曜日。

 来週の月曜は祝日なため、土日月と三連休が始まる。

 そして例の合宿も行われる。


 と、そんなイベント前の最後の平日、俺は姫希とのマンツーマン指導の予定していた。

 そう、最近はやけに関わり辛い彼女と。


 相変わらず一番着替えの遅い姫希を部室前で待ち構える俺。

 しばらくして出てきた姫希は、そんな俺を見て目をパチクリさせた。


「行くわよ」

「お、おう」

「何よ、その罵倒されるかと思ってましたみたいな顔」

「……」


 図星過ぎて苦笑いが漏れる。

 そんな顔を見て姫希は訝し気に首を傾げた。


 てっきり嫌そうな顔をされると思っていたのに、案外乗り気みたいだ。

 やっぱりこいつの機嫌はよくわからんな。


「もうそろそろパスの練習とかした方が良いんじゃないかしら? あたし、ガードのポジションをするんでしょ? パスも上手くなきゃやってられないわ」

「……お前本当に姫希か?」

「何よそれ」

「珍しくやる気満々だからさ。驚いたぜ」

「失礼な人ね」


 俺も丁度パスの指導をしようと思っていたところだ。

 でもまさか自分から言ってくるとは。

 嬉しくて涙が零れそうである。


 と、二人でそんな会話をしながら外へ出る。


「ねぇ、あれ」

「……なんで」


 体育館前に未来が座っていた。

 虚ろにへたり込んでいる。


「……どういう状況だよ」

「懲りない人ね」

「まったくだ」


 昼もよくわからん突撃をされたし、今日はなんなんだろう。

 出てきた俺達に気付くと、未来は立ち上がる。

 そして。


「え、えっと」

「あんたねぇ。まだ――」

「違う! 待ち伏せしてたわけじゃない! 私はただ……」

「……用があるなら言えよ」


 促すが、彼女は口を開かない。

 俯いたまま、脇に置いていたバッグを掴む。

 そしてそのまま走り去っていった。


「なんなのかしら」

「さぁな」

「最近、大人しかったのに」

「本当だ」


 あそこまで言ってまだ近づいてくるのかよ。

 だがしかし、ちょっと様子がおかしいような。

 何か事情でもあるのだろうか。


 少し考えたが、すぐに首を振る。

 何があったって知った事ではない。

 また懲りずに追い回してくるようなら、何度でも撃退するまでだ。

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