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邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム  作者: maricaみかん
2章 水刃のユーリ

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45話 祝い

 ぼくは今日、サーシャさんが用意してくれた大会のお祝いへと来ていた。他の人たちはもう先に来ているらしい。

 エルフィール家へとたどり着くと、サーシャさんが出迎えてくれた。前にサーシャさんと出かけた時にぼくが選んだドレスを着ていて、やはり似合っているとまた思った。

 ぼくもサーシャさんに買ってもらった服を着ていた。こういう場を想定していたと本人に聞いていたので、これを着ることにしていた。


「ユーリ様、ようこそいらっしゃいましたわ。ユーリ様、その衣装はよく似合っておいでですわ。わたくしの目は確かでしたわね。さ、皆様すでに揃っていらっしゃいますわ。こちらへどうぞ、ユーリ様」


「今日はこんな場を用意していただいてありがとうございます、サーシャさん。その服も、良く似合っていますよ。自分を褒めたいくらいです」


 サーシャさんはぼくの手を引いて、会場へと連れて行ってくれた。会場に着くと、みんなが拍手で出迎えてくれた。


「ユーリ様、今日は親しい皆様とともに、存分に楽しんでいってくださいまし。皆様、今日は、ユーリ様が王都で行われた大会で優勝し、勲章を頂いたことに対する祝いとなっておりますわ。

 しっかりと、ユーリ様をもてなしてくださいまし。皆様、合わせてください。では、今日はユーリ様の記念すべき日ですわ!」


「「「おめでとう!」」」


 まだ何も始まっていないくらいなのに、ぼくはちょっと泣きそうになっていた。

 本当に、あの大会に出てよかったし、優勝できてよかった。みんながお祝いしてくれることがすごく嬉しい。

 偶然出会った人が多いけれど、その人たちとここまで親しくなれたのだと思うと、なんだか心が温かかった。


「みんな、ありがとう。ぼくが祝ってもらうという形ではあるけれど、みんなもしっかり楽しんでいってくれると嬉しいな」


「ふふっ、ユーリ様らしい言葉ですわね。今回は、立って食べられるメニューを用意しておりますわ。ですので、皆様と話などしながら、今日のパーティを楽しんでいってくださいまし」


 サーシャさんの言葉通り、テーブルには1口で食べられそうなものばかりで、その多くは片手で食べられそうなものだった。

 皿も用意されていたが、無くても大抵の料理は食べられそうなくらいだ。

 ぼくはいくつか料理を食べながら、それぞれの人のところへ向かっていくことにした。ぼくが動き出すと、サーシャさんもついてきていた。


 まずはカタリナのところへ向かった。今日はカタリナもぼくとサーシャさんの送ったドレスを着てくれていた。良く似合っている。

 カタリナはノーラを抱えており、まだご飯を食べていないようだった。

 ぼくが近づくと、ノーラはすぐにぼくの方へやってきて、器用にぼくが持っているご飯を避けてぼくの肩に登っていった。カタリナはそれからご飯を食べ始める。


「サーシャさん、ノーラのご飯って、どこにありますか? ぼくだけ食べるというのも……」


「こちらにありますわ。ノーラ様、お召し上がりくださいまし」


 サーシャさんはノーラのご飯を近くから持ってきて、ノーラに差し出した。ノーラはぼくから器用に降り、すぐにご飯を食べ、すぐにぼくにまた登ってきた。


「ノーラ様は本当に賢いですわね。それでいて、強さもあり、ユーリ様に懐いているというのですから、さぞ頼りになることでしょう。良いペットですわね」


「そうですね。本当に良い出会いだったと思います。ノーラの主人としてふさわしくありたいものです」


 サーシャさんと少し話していると、いくらかご飯を食べて満足した様子のカタリナが、料理を手にこちらへと向かってきた。


「ユーリ、おめでとう。あんたが本当に成長していて、あたしは誇らしいわ。よく頑張ったわね。……なんて顔してるのよ、あんた。そんなにあたしが褒めるのが珍しいわけ?」


 カタリナが褒めてきたことというより、カタリナが本当に穏やかな顔をしていて、驚いてしまっていた。

 でも、カタリナって本当に美人だし、こういう顔をしていると、完全に見惚れてしまいそうになる。


「いや、そういうことでは無いんだけど……カタリナが祝ってくれるのは本当に嬉しいよ。ぼくがここまで来られたのは、みんなのおかげではあるけど、特にアクアとカタリナのおかげだからね」


「そうでしょうね。昔のあんた、本当に弱くて見ていられないくらいだったもの。ほんと、あたしがいなきゃどうなってたことやら」


「本当にね。でも、今ならカタリナに守られるだけじゃなくて、カタリナを守ることもきっとできるから」


 カタリナはこちらを見ながら少し笑う。この感じは今の発言を馬鹿にしたわけじゃなくて、ぼくの言葉を肯定してくれているように見える。


「あんたはモンスターの異常発生の件でもうあたしを守ってくれたでしょ。でも、あんたがあたしを守りたいって言うなら、思う存分守らせてあげてもいいわ」


「わかった。カタリナとずっと一緒に居られるように、頑張るね」


「……はぁ。どうせ誰にでもそういう事を言うんでしょうよ、あんたは。ま、いいわ。そろそろ次の人のところに行きなさい。これ以上時間をかけると、他の人の分が無くなっちゃうわ」


 そう言われてしまったので、カタリナと別れて次の人のところへ向かう。次はユーリヤの予定だ。


「ユーリ様が昔は弱かったというのは、意外ですわね。冒険者になってすぐのころから、活躍していらっしゃったのに」


「ぼくが強くなれたきっかけはアクア水ですから。契約するまでは、普通の人でしたよ」


「そうでしたのね。契約技というのは使いこなせれば強い物ですが、使いこなすにも才能や努力が必要なものですわ。強い契約者は、契約するまでにすでに強い人というか、強くなれるほど努力ができる人が多い物ですわ。

 ユーリ様は、アクア様の事が大好きですのね。でないと、アクア水だけではあそこまで強くなれなかったでしょう」


「そうですね。アクアがくれたものだったから、使いこなしたいと思ったのかもしれません。ただ、アクア水は本当にすごい技ですよ。それこそ、誰にも負けない可能性があるほどに」


「ふふっ、そうですわね。そうでなくては、あの大会で優勝などとてもできないでしょう。アクア様は、素晴らしい契約モンスターですわ」


 ユーリヤのところにたどり着くまでサーシャさんと話していたが、ユーリヤを見つけたのでユーリヤと話すことにする。ユーリヤもぼくたちの送ったドレスで、本当にきれいだ。


「ユーリヤ、今日はありがとう。ユーリヤがパーティに入ってくれたおかげで、ぼくは本当に成長できたと思う。これからも、一緒にチームに居てほしい」


「あ、当たり前ですよっ。それこそ、出ていけと言われようが、ずっと離れませんからっ。ユーリさん、今回は本当におめでとうございますっ。さすがはユーリさんですっ」


「改めて、ありがとう。ユーリヤに祝ってもらえて、嬉しいよ」


「ユーリさんはそこまでわたしのことを大切に思ってくださっているんですねっ。これからも、あなたのユーリヤを大切にしてくださいっ」


 ユーリヤはそう言いながら頭を下げる。ぼくにとっては改めて頼まれるようなことでは無いけれど、ちゃんとユーリヤを大切にするということはしっかりすると決めた。


「それこそ当たり前だよ。ユーリヤはもう、ぼくにとって、なくてはならない存在なんだから」


「嬉しいですっ、ユーリさん。ユーリさんこそ、わたしにとって何よりも大切な人なんですからねっ。ずっと、一緒に居ましょうねっ」


「うん、もちろんだよ。じゃあ、また。次の人に会ってくるよ」


「では、ユーリさん、また。皆さんもユーリさんの事、待っていますから。しっかり祝われていってくださいねっ」


 こうしてぼくはユーリヤの次の人に会いに行くことに。次はアリシアさんとレティさんの予定だ。


「わたくしはユーリヤ様の加入には反対でしたが、上手くいっているようで何よりですわ。結果的には、ユーリ様の判断が正解でしたわね。オーバースカイにとって、ユーリヤ様の役割は大きいですわ」


「そうですね。ユーリヤには本当に助けられています。ユーリヤと出会ったのは完全に偶然でしたが、その偶然に感謝しています」


 アリシアさんとレティさんのもとへたどり着くと、アリシアさんたちもドレスを着ていた。

 いつもは勇ましい雰囲気だけど、今日は大人の女性といった感じだ。こういう姿を見られるのも嬉しいな。


「ユーリ君、よく来たね。今回はおめでとう。ユーリ君は、わたしたちの想像を超える活躍をしてくれた。これからも、本当に楽しみだよ」


「うんうん。ユーリ君、わたしたちに着いてきてくれてありがとう。ユーリ君はわたしたちに弟子入りして良かったって思ってくれてることは分かるけど、わたしたちにとっても、ユーリ君たちが弟子入りしてくれたことは本当に良かった事なんだ。これからもよろしくね」


「アリシアさん、レティさん、本当にありがとうございます。アリシアさんとレティさんはぼくの憧れですが、憧れるだけじゃなく、必ず隣に立ってみせますから」


「うん。楽しみだよ、その時が。でも、無理はしないでね。ユーリ君たちに何かあると、私たちはとても悲しい。だから、私たちのためだと思って、ね。ユーリ君、これからもよろしくね」


「そうだね、アリシア。ユーリ君、辛い時はわたしたちに頼ってくれていいから、これからも良い弟子と師匠でいようね。大丈夫、あなたならきっともっと強くなれるよ」


 2人ともぼくを見る目はとてもやさしいし表情も穏やかだ。ぼくはこの人たちの弟子でいられて本当に良かった。これからもいい関係でいられるように努力しよう。


「はい……! これからも、よろしくお願いします。アリシアさんたちが師匠でいてくれて、本当に良かったです」


「うん、良く分かっているよ、その気持ちは。さて、皆にはもう会ったかい? まだなら、次の人のところへ行くといい。その人も、君を待っているよ」


「わかりました。2人とも、また」


 次はステラさんのところへ向かう予定だ。ステラさんには、大会でも色々助けられたから、こちらもお礼を言いたいところかな。


「アリシア様とレティ様は、ある意味ではわたくしとオーバースカイを結び付けてくださった恩人ですわ。アリシア様にしろ、レティ様にしろ、しっかりユーリ様の才能を見抜いていらっしゃいましたわね」


「サーシャさんと出会えたのは、その2人とステラさんのおかげですからね。ぼくも感謝しています」


「ふふっ、ユーリ様ったら。そう思っていただけるのは嬉しいですわ。今後とも、長き付き合いのほどを、よろしくお願いしますわ」


 ステラさんを見つけると、ステラさんの方からこちらに来てくれた。ステラさんもドレスで、なんだか色っぽい。

 こうしていると、ミストの町で奢ってもらったことを思い出すな。


「ユーリ君、本当におめでとうございます。ユーリ君の成長は本当に嬉しいです。これからも、ずっと見守っていますからね」


「ステラさん、ありがとうございます。今回も、大変助けられましたから。ステラさんにはお世話になってばかりですね……」


「いいんですよ、ユーリ君。それが、私の役目ですから。ユーリ君が元気な姿を見せてくれるだけで、私は嬉しいんです。体を大切にしてくださいね」


 ステラさんはいつもぼくの安全を気にしてくれる。だから、ぼくの帰る場所はステラさんの家だと思えるようになった。これからも、ステラさんに心配をかけ過ぎないようにしよう。


「はい。皆と一緒に居るためにも、ぼくは元気でいたいですから。ステラさんこそ、体を大切にしてください」


「もちろんです。ユーリ君、アクアちゃんとはまだ会っていませんでしたよね。アクアちゃん、あなたが来ることを楽しみにしていますよ」


「わかりました。アクアのところに行ってきますね」


 最後はアクアのところだ。アクアがいたから、全部があるんだよね。アクアには全力の感謝を込めないとね。


「ステラ様は、本当にユーリ様を大切にしていらっしゃいますわね。それも、ユーリ様が皆様を大切にしていらっしゃるからですわ。これからも、そうであってくださいませ、ユーリ様」


「もちろんです。みんながあってのぼくですからね。みんなに貰った分をできるだけ返していきたいですね」


 アクアもぼくのあげたドレスを着ていた。アクアは普段できるだけ服を着ようとしないけど、着飾ってもとてもかわいい。アクアが嫌がらないなら、いろいろと着せてみたいな。


「アクア、今まで本当にありがとう。アクアと出会えて本当に良かった。アクア、これからもよろしくね」


「うん。ユーリ、これからも、ずっと、ずっと、一緒に居よう。アクアも、ユーリと出会えて本当に良かった」


「お互いにそう思ってるんだね。嬉しいよ。ぼくも、ずっとアクアと一緒に居たいな」


「何があっても離れないから。ユーリ、逃げたいと思ってももう遅い」


 そんなことを考えるはずがないのに。ぼくだってアクアとずっと一緒に居たいし、アクアとの出会いは最高の喜びをぼくにくれたから、とても感謝している。


「逃げたいなんて思わないよ。こっちこそ、絶対離さないからね」


「うん。ユーリ、今日は楽しんでいって。アクアも楽しんでいく」


 アクアに促されたので、食事を楽しむことにする。少しずつ食べていたけど、まだ足りないんだよね。


 食事を楽しんでいると、ずっとぼくのそばに居たサーシャさんがまた近寄ってくる。


「ユーリ様、今日は楽しんでいらっしゃいますか? 望みがあれば、何でも用意いたしますわ。それこそ、わたくし自身でも構いませんのよ……?」


「そ、それはちょっと。みんなにもきっと迷惑ですし」


「迷惑でなければ、わたくしをお望みだと思っても? ユーリ様がわたくしに溺れる機会は、またといたしましょうか」


 溺れるって言い回しはステラさんも言ってたな。流行っているのだろうか。サーシャさんは普段も積極的だけど、今日はとびきりだな。

 でも、溺れるのはちょっとね。それにかまけて、冒険者というみんなの夢をおろそかにするわけにはいかない。


「ふふっ、ユーリ様。今回はわたくしがエスコートいたしますわ。さ、こちらへ」


 サーシャさんはぼくの腕を取り、ぼくを引っ張っていきながら色々と食べさせてくれる。

 満腹になったころ、サーシャさんがみんなを集め、今日のお開きを宣言した。最後に、みんなから時計が贈られた。絶対に大切にしよう。

 今日はいい日だったな。本当に大会で頑張ってきてよかった。

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