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邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム  作者: maricaみかん
2章 水刃のユーリ

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38話 謁見

 あれから2日後、オリヴィエ様の使いが来て、ぼくは王城へと招かれることになった。

 大会で受けた傷は結構深い傷だったけど、次の日に起きたらもう治っていた。少し疑問だったけど、治っているのだから良しとする。

 そのまま王城に向かうと、オリヴィエ様と数名の護衛らしき人のいる部屋に通された。


「よく来たな、ユーリ。さあ、余手ずから勲章を渡してやるとしようか。貴様ら、邪魔だ。余とこ奴の2人きりにせよ」


 いきなりなんてことを言うんだこの人。王女様と2人きりなんて、勘弁してくれ。どういう態度をとっていいのか分かったものじゃないんだけど。


「しかし、オリヴィエ様。このような下賤なものなどと……」


 そう言われたオリヴィエ様はとても不機嫌そうな表情になる。そのままそう言った騎士らしき人を叱責する。


「貴様、いつから余に対して、『はい』以外の言葉を口にできるほど偉くなったのだ? 立場をわきまえられないほど愚かなのか、貴様は?」


「は、はい。直ちに!」


 そのまま大慌てで騎士らしき人たちは去っていく。頼むからもう少し粘ってくれよ。こんな状況に置かれたただの冒険者は、一体何をすればいいんだ。


「ユーリ、貴様のような冒険者如きに礼節など期待しておらぬ。普段通りに接しても良いぞ?」


 普段通りに接しても良いって、普段通りじゃなくても良いってことだよね。そうだと言ってくれ。ほんと、どう対応するのが正解なんだ。


「オリヴィエ様におかれましては、ご機嫌麗しゅう……」


「見ておれんわ。なんだそのぎこちない態度は。今度は命令だ。普段通りに余と接せよ。後は分かるな?」


 オリヴィエ様は目の圧力を強める。この人の命令に逆らうとか、絶対にろくなことにならないのは分かる。はあ、仕方ない。気が進まないけど、やるか。


「オリヴィエ様、勲章を渡してくれるそうですが、そもそも勲章ってどんなものなんです? ぼくは世間に疎いようで、よくわかりません」


「世間に疎いどうこうの問題ではなく、そもそも貴族ではないものは知らなくて当然だろうよ。まあ、はっきり言っておけば、単なる称号のようなものだ。勲章として世の物がイメージするような、形あるものですらないのが本来なのだがな。それでは誰が勲章を持っているのかわからないということでな。こうして手渡しされる文化が生まれたのだ。

 だが、それを持っているだけで、多くのものが貴様を優遇するだろうよ。王家から認められたという証なのだからな。無くすでないぞ? そうなってはこちらが面倒なのでな」


 称号なのか。サーシャさんの家ももらったということだけれど、王家から認められるって、そんなに嬉しい物なのだろうか。とてもこの人の前で言えることではないが、少し気になった。


「さあ、跪くがよい。余が貴様を認めたという証だぞ? 貴様は分かっておらんようだが、そのために一生を懸けるものも珍しくはないのだ。ユーリ、さあ」


 そう言われたので頑張って跪く。勲章の価値がわかってないことに気づかれていたのか。ただ、オリヴィエ様にそれを気にした様子はない。

 そのまま、オリヴィエ様はぼくの首に勲章をかけてくれた。金属の飾りのようなものに、ひものようなものが付いている。これが勲章か。なんだか実感がないな。


「これで終わりだ。楽にしてよいぞ。くくっ、スライムとの契約者が、この勲章を提げることになるとはな。全くわからんものだ。貴様、誇ってよいぞ。余にも予想できぬことを成し遂げたのだ、貴様は」


 スライムとの契約者って、そんなに弱い物なのだろうか。アクア水は最初からかなり便利だったけど、ステラさんの指輪のおかげかもしれないな。ぼくは指輪に目を向ける。


「その指輪……貴様、ユルグ家の物だったのか? いや、それにしては髪の色も目の色も何もかも似ておらんが……」


 ユルグ家ってもしかしてステラさんと何か関係があったりするのだろうか。王家の人が知ってるって、よほど大事なものかもしれない。

 今更だけど、こんなものを貰ってしまってよかったのだろうか。


「その髪の色って藍色だったりします? だったら心当たりがあるんですけど」


「その通りだ。なんだ、知っているのか? ずいぶん昔に、貴重なモンスターから作られたものでな。モンスターと人との絆を強めるものだったはずだ」


「ぼくの先生だった人に貰ったんです。この大会のために、王都までサポートについてきてくれて」


「くくっ、そうか。随分と好かれているようだな、貴様は。売れば一生遊んで暮らすこともできるであろうに」


 オリヴィエ様はとても楽しそうな顔をしている。声色も楽しそうなので、本当に楽しいんだと思う。

 それにしても、そんなにとんでもない物をもらったのか。ステラさんには、本当に貰い過ぎているな。どうやって返していけばいいだろう。敵ならともかく、ステラさんに借りっぱなしというのは絶対に嫌だ。ぼくはステラさんの喜ぶ姿が見たいのだから。

 ただ、この指輪は目立たないようにしないとな。売るつもりなんて絶対にないけど、変な人に目を付けられたくない。


「まあ、それは良い。たしか、貴様はエルフィール家の推薦だったな。貴様はエルフィール家と王家の関係についてはどこまで知っている?」


 どこまで言っていい物なのだろう。ただ、この人に隠し事をすると、絶対面倒なことになる予感がしたので、少しずつ様子を見ながら話していくことにする。


「確か、王家から勲章をもらったんですよね? エルフィール家に王家が与えたモンスターの能力の発現がどうこうで」


「何だ、そこまで知っているのか。せっかくの機会だ。貴様がどこまで知っているのか、確かめさせてもらおう。その能力はどのようなものか知っているか?」


「生命力の吸収ですよね。確か、この国を作ったアーデルハイド様と同種の能力なのだとか」


「そうだ。そこまで知っているなら話は早いな。貴様、余の左目をよく見てみるといい」


 言われるがままにオリヴィエ様の左目を見る。すると、そこには樹のような模様があった。

 つまり、王家にいるというエルフィール家に与えられたモンスターの大本から分かれたモンスターと契約したのだろう。


「気づいたようだな。余の能力は、生命力の吸収と活性化、さらに分配を行える。まさに余にふさわしい能力よ」


 サーシャさんより数段上の力に聞こえる。それにしても、この人は自分の能力を簡単に話すよな。対策されるとか思わないのだろうか。でも、厄介そうな能力だな。アクア水なら、どうやったら対抗できるだろう。


「くくっ、余に歯向かおうとしても無駄よ。ユーリ、貴様とミーナが同時に襲い掛かってこようが余には勝てぬよ。余こそがこの国で、いや、人類の中で最強なのだ。貴様もなかなかのものではあるが、少なくとも今は、余の足元にも及ばぬよ」


 圧倒的な自信だな。それにしても、能力までアーデルハイドと同じようなものなんて。アーデルハイドの再来という言葉に偽りなしだな。

 まあ、本当に能力が言う通りの物であれば、対策が今のところは思いつかない。オリヴィエ様が気づく前にどうにか仕留めるしかなさそうだよな。そんな状況があるのかはともかく。


「半信半疑という顔よな。なら、これを体感してみるがよい」


 そう言ってオリヴィエ様はぼくに手を向ける。すると、ぼくの体にすごい力が湧いてきた。これが生命力の分配か。こんな力で強化したうえ、相手は生命力を奪ってくるんだよね。

 それは、敵う相手が思いつかないな。アリシアさんでも厳しいんじゃないか?


「くくっ、驚いておるな。そうだ、これが余の力よ。誰も余に歯向かうことなど出来んほどの、圧倒的な力。この力を見た貴様に問おう。貴様、余の騎士になるつもりはないか? そうすれば、金も名誉も思うがままだぞ?」


 金も名誉も思うがままか。惹かれないわけでは無いけど、絶対に外してはならないことがある。まずは、それを確かめないと。


「それは、オーバースカイがということですか? それとも、ぼく1人で?」


「無論、貴様1人だ。余が欲しいのは、世にも珍しいスライム使いの強者なのでな。他はいらんよ」


 そういう事なら、ぼくの答えは決まっている。でも、この人にそれを言うのは本当に怖い。なんというか、機嫌を損ねることを絶対にしてはならないという気にさせられる。

 それでも、言うしかないと覚悟を決めた。


「お断りします。ぼくには冒険者としての仲間がいる。冒険者として応援してくれている人もいる。その人たちに背を向けて得た金にも名誉にも意味はありません。ぼくは、ぼくを支えてくれた人たちだけは絶対に裏切りたくないんです」


 そう言うと、オリヴィエ様は面白い物を見たという顔になり、大笑いする。これは、大丈夫な反応か? 気にはなったが、黙ってオリヴィエ様を待つ。すると、上機嫌そうになったオリヴィエ様が語りだす。


「くくっ、まさか余の力を知りながらそういう風に断るとはな。だが、面白い。所詮冒険者風情など、金という火によって来る虫のようなものだが、貴様はそうではないようだな。余の言葉に逆らった事、その面白さに免じて許してやろう。

 だが、貴様という人間はもうわかった。いずれ、貴様は自ら余の騎士になろうとするだろうさ。その時を覚悟しておくがよい」


 助かったみたいだ。でも、どういうことだろう。ぼくが自分からオリヴィエ様の騎士になろうとするなんて。

 でも、ぼくはカタリナも、アクアも、ステラさんも、ユーリヤも、アリシアさんとレティさんも、サーシャさんも裏切りたくない。ぼくが彼女たちを裏切る未来にならないよう、強く願った。


「くくっ、それにしても、冒険者になると言って余の言葉を断るとはな。貴様は此度の大会がどういうものか、知っているか?」


 どういうものって、勲章をもらうための大会とかだろうか。サーシャさんに頼まれて出ただけなので、よくわからない。


「くくっ、サーシャの奴め、中々……まあいい、貴様、此度の大会には年齢制限はないぞ。それから何かわかるか?」


「年齢制限がない? それにしては……」


 そうだ。おかしい。契約技使いに年齢は関係ないわけでは無いが、身体能力の衰えで出来た差くらい簡単に覆せるくらいの力があるんだ。

 なのに、出場者は30を超えているようなものはいないように見えた。今回の大会では結構年の言っていたオリアスだって、20後半くらいといった所だろう。どういうことだ?


「そうだ、気づいたようだな。まあ、それ以上の事は貴様には分かるまい。だが、サーシャの奴を信じすぎると、痛い目を見るやもしれんぞ?」


「忠告、ありがとうございます。でも、ぼくはサーシャさんを信じるつもりです。ぼくにこれまでよくしてくれた事、全て打算だったとは思えませんから」


「くくっ、貴様らしい言葉だ。せいぜい踊るがよいさ。どうしようもなくなったら、余が貴様を飼ってやろう。楽しみにしているがよい。ではな、ユーリ。また会うとしようぞ」


 そう言ってぼくを下がらせるオリヴィエ様はとても不敵な笑顔をしていた。本当に怖い人としか思えなかったけど、だからこそ言葉に真実味がある。また会うことはちょっと勘弁してほしいかもしれない。


 それから、ぼくは宿に帰り、アクアやステラさんと過ごしてから眠った。

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