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邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム  作者: maricaみかん
3章 頂へと歩むオーバースカイ

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77話 夢

 ぼくたちはブラックドラゴンを倒した褒美をもらえるとのことで、オリヴィエ様に呼び出されていた。

 結構多くの人の前に出ないといけないので、とても緊張している。


 事前に褒美は名誉と金銭のどちらがいいかと使いらしき人に聞かれたので、今のところは名誉だと答えておいた。

 詳しく質問されたので答えた内容としては、金銭には現在困っていないので貰っても持てあますだけだという話をした。

 オリヴィエ様はそれを聞いてとても面白そうにしていたとリディさんに聞かされた。なんだか怖いんだけど。

 呼び出された場所へ向かうとよく知らない人に衣装を整えられて、対応について説明される。

 まず初めに跪いておいて、そのままの姿勢でオリヴィエ様の言葉に決められた返事をして、最後に首に勲章をかけられるので、その後に頭をあげろとのことだ。


 会場へと向かい言われた通りに跪いていると、オリヴィエ様がやってきた。

 そのまま待っているとオリヴィエ様が話し出す。気配的には玉座っぽい席の前に居るのかな。


「王都の歴史の中でも数えるほどしかない危機であろうブラックドラゴンの討伐、大儀であった。冒険者チーム、オーバースカイにアリシアとレティよ。此度はその褒美として勲章を授けよう。ユーリには以前に大会で優勝した時にも勲章を与えた故、白金勲章を授けよう」


 白金勲章ってのは普通の勲章と何が違うの? ぼくには誰も説明してくれなかったので、全然分からない。

 でも、周囲がどよめいているので、結構重要なものなんだと思う。

 まあ、勲章2つ目の代わりにくれるものなんだから、普通の勲章よりはいい物なんだろうけど。


 そのままオリヴィエ様は言葉を続けていく。


「ユーリはブラックドラゴン討伐の功労者である。その功績を余が称えよう」


「ありがたき幸せ。末代まで誇りとなるでしょう」


 そのままリディさんによって順番にみんな勲章をかけられていくが、ぼくのもとへはオリヴィエ様がやってきた。

 そのままぼくの首へと勲章をかけると、耳元でささやいてくる。


「リディとイーリスでも苦戦する相手を倒す姿、余も見てみたかったものだ。貴様には期待しているぞ。そこらの近衛よりよほどな。さて、頭をあげてもよい」


 オリヴィエ様は頭をあげるタイミングを教えてくれたのかな。そのまま頭をあげると笛らしき大きな音が鳴った。


「さあ、下がってよい。貴様たちの活躍は王家も認めるものだ。存分に誇ってよいのだぞ」


 そのままぼくたちはその場を後にした。イーリスに案内されて転移装置へと向かい、ぼくたちはカーレルの街へと帰っていった。

 カーレルの街ではサーシャさんが出迎えてくれて、ぼくの首にかかっている勲章を見て驚いていた。

 ぼくはそれについて質問したのだけれど、サーシャさんも何も教えてくれなかった。

 結局この勲章はいったい何なのだろう。いずれ分かるとは思うけど、妙なものじゃないといいな。


 それから家に帰って休んだ次の日、アリシアさんたちから驚きの提案を受けた。


「ユーリ君、私たちをオーバースカイの仲間にしてほしいんだ。君たちと一緒になら、とても楽しい冒険ができると思う」


「ユーリ君は本当に強くなったよね。お姉さんは嬉しいけど、少し寂しいような気もするよ。これから一緒に冒険をして、楽しんでいこうね」


「もちろんです。アリシアさんたちなら歓迎しますよ。でも、いいんですか? アリシアさんがリーダーになる道もあると思いますけど」


 ブラックドラゴンとの戦いで一番活躍したのはぼくだったと思うけど、それはアリシアさんとの相性の悪さが要素として大きいはず。

 それに、仮にぼくがアリシアさんより強いとしても、アリシアさんの経験は頼りになるから、きっとリーダーとしてうまくやっていけると思う。


「オーバースカイは君がリーダーだから上手くまとまっているんだと思うよ。それに、私は人に指示をすることが得意では無いから。ユーリ君の手腕を見させてもらおうかな」


「ずっとアリシアとわたしは2人でやってきたからね。みんなのリーダーをする経験なんて無かったから、ユーリ君の方が慣れていると思うよ」


「わかりました。いつかの約束を果たせそうで、すっごく嬉しいです」


 アリシアさんたちはぼくの言葉を受けて柔らかく微笑んでくれた。

 ぼくだけが楽しみにしていたわけじゃ無いとは思っていたけど、アリシアさんたちもぼくと一緒に冒険することを楽しみにしていてくれた事がよく分かる。


「ユーリ君の師匠になれて良かったよ。でも、これからは師匠では無くて対等な仲間だ。よろしくね」


「そっか。オーバースカイの仲間になるなら、そうなるよね。ユーリ君、一緒に頑張っていこうね」


「はいっ!」


 それからのオーバースカイは大変だった。アリシアさんたちが難しい依頼ばかり勧めてきて、何度か命の危機もあったくらいだ。

 それでも、アリシアさんたちが充実しているというのはよく分かったので、あまり文句も言えないでいた。

 ぼくたちの誰かが危ない時にはアリシアさん達がしっかりフォローを入れてくれているというのもあった。

 それでも、ぼくはとてもクタクタになっていて、そろそろ限界を迎えそうになっていた。


 そんな日々の中、アリシアさんたちと一緒に休む日がやってきた。アリシアさんたちは全く休もうとしていなかったのに、心変わりでもしたのだろうか。

 正直なところ、アリシアさんたちに合わせて活動するのはとても大変だったのでありがたいけど。


「ユーリ君、今日はゆっくり休むことにしようか。私たちの家に来るというのはどうかな?」


「わたしもそれが良いと思うな。ユーリ君、一緒にだらだらしよっか?」


「わかりました。それでは、お邪魔させてもらいますね」


 アリシアさんたちの家に案内されて、3人で部屋の中でくつろいでいた。

 レティさんはぼくの後ろから抱き着いてきていて、結構あたたかい。そのおかげか、随分落ち着いた心地でいられた。

 そのままアリシアさんやレティさんといろいろお喋りしながら、ゆっくりとした時間を過ごしていた。


「ユーリ君が冒険者を目指そうと思ったきっかけは何だったのかな? 私はレティがいたし、強くなるのもすぐだったから天職だと感じたのがきっかけかな」


 ぼくが冒険者を目指したきっかけはミストの町に学園があって、それに通う事だけは出来たからだ。そこではモンスターとの戦い方を中心に教わるので、自然と冒険者を目指していた。

 両親はいないから金銭的に余裕があるわけでは無かったし、他の勉強をするだけの準備はできなかった。


「ぼくは他に道が思いつかなかったからですね。雇ってもらえるような伝手はないので、自分でどうにかしないといけませんでしたから」


「そうなんだ。つらいことを言わせてしまったかな。ごめんね。カタリナさんは最初から一緒だったのかな?」


「そうですね。カタリナとはずっと一緒で、自然とチームを組むのが当然だと思っていました。今思えば、カタリナはいつでも他の人とチームを組めたんでしょうけど」


 ぼくは大して強くなかったし、アクア水を手に入れてやっとまともな戦力になれるくらいだった。

 カタリナはそんなぼくによく付き合ってくれたものだ。完全に足手まといだった時期の方が多かったのにね。

 カタリナが幼馴染だったおかげで随分と助けられている。今のぼくがあるのは間違いなくカタリナのおかげだ。


「そういえば、アクア水を手に入れたのは私たちと出会う直前だったんだね。私たちにとってもいいタイミングだったってことになるね」


「うんうん。ユーリ君と出会えた事はわたしたちにとって、とっても大きな幸運だったんだよ」


 キラータイガーの一件がきっかけだったんだよね。アリシアさんたちと出会うことになったのは。

 本当にあの時アリシアさんたちと出会えて良かった。アクアにもステラさんにも感謝したいな。その2人のおかげで出会えたと言っていいんだから。

 カインが死んでしまった事は残念だったけど、記憶を持ったまま過去に戻ったとしても、カインを助けようとは思わないかもね。

 それでアリシアさんたちと出会えなくなってしまう事の方が、カインが死ぬことよりも嫌なことだよ。

 自分でもよくない考えだとは思うけど、この出会いが無くなってしまう事の恐怖にぼくは耐えられないだろう。


「ぼくにとっても大変な幸運ですよ、アリシアさんたちと出会えたことは。これからもずっと一緒に冒険しましょうね」


「そうだね、ユーリ君。ユーリ君には最近大変な思いをさせてしまったけど、これからはもう少し落ち着けると思う。ごめんね。長年の夢が叶って興奮していたんだ」


 アリシアさんの夢は対等な関係の人と冒険する事のはず。ぼくの事を育ててくれた事や、ぼくと一緒に冒険しようと誘ってくれた事、何よりも今のアリシアさんのセリフが根拠だ。

 その考えが間違っていたとしても、アリシアさんの長年の夢が叶ったことはぼくも嬉しい。

 アリシアさんが喜んでいる姿を見られたのだから、あの大変さに見合うものではあったと思う。出来ればもう勘弁してほしいけど。


「みんな大きなケガはしていないので構いませんけど、アリシアさんはいつも冷静なイメージだったので驚きましたね」


「いつも冷静ってことは無いと思うよ。私は結構怒りっぽいんだ。ユーリ君に怒っている姿を見せたことはほとんどないけどね」


「そうだね。アリシアはケンカを売ってくる相手に容赦したことってないから。わたしだって怒っていたのに、怒りが冷めるくらいの事はしていたよ」


 アリシアさんと出かけている時にアリシアさんを口説いた男に対してはとても怖かったけど、それ以上の事をしていたような口ぶりだ。

 ぼくにとってアリシアさんはいつも優しい人だけど、そういう一面もあるのだな。

 まあ、ぼくの親しい人を傷つけないでいてくれるのなら、アリシアさんの本性がどんなものでも構わない。

 それくらい、アリシアさんとレティさんの事が大好きなんだ。


「意外ですね。ぼくたちはみんなアリシアさんを優しい人だと思っていました。メルセデスは怖いうわさがあると言っていましたけど」


「そういう噂が出てもおかしくないくらいの事はしたかな。もちろん、ユーリ君たちには絶対にそんなことはしないよ」


「そうだね、アリシア。ユーリ君達がどれだけわたしたちの事を救ってくれたか。素直に慕ってくれる人がいるだけであんなに嬉しいなんてね」


 優しいアリシアさんたちを好きになるなんて当然の事だと思うけど、アリシアさん達にとってはそうじゃ無かったんだな。

 ぼくがアリシアさんたちの救いになっているのなら、こんなに嬉しいことは無い。

 これからも、アリシアさんたちと支えあっていけたらいいな。


 それからもしばらく雑談をしてから家へと帰った。アクアがいつもより甘えてきて、ノーラは若干呆れている様子だった。

 アクアと一緒に居られたからこそ色んな人たちと出会えたんだ。アクア水やアクア自身の力のおかげだ。

 ぼくの幸せはアクアがあっての物なんだ。それには甘えてくる姿が可愛いのもあるけどね。アクアは何があっても大切にするぞ。

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