09.あくまで他人事なボッチ vs 地下神殿(4)
本日4話目です。
太一は死にそうな気分になっていた。
後ろの吉田涼が抜く可能性が99.99%だとは思う。
でも、0.001%くらい自分である可能性もあるんじゃないだろうか。
そして、本能寺が諦めたあと、老人が声を掛けた。
「では、次の者、前へ」
太一は沈んだ顔で前に出た。
クラスメイトたちからは、
「多分最後の吉田くんだね」
「やっぱ本物は最後に来るってやつか」
などと話し合っていて、ロクに太一のことを見ている様子はない。
(……そうだよな、大丈夫だよな)
そんなクラスメイトたちの態度に励まされ、太一は台座の上に立った。
キラキラと光る剣を見つめ、柄を握って試しに軽く揺すって――彼は思わず目を見開いた。
(あれ? なんか揺れた?)
そして、もう少し強く揺すってみて、
「…………っ!!!!」
彼は思わず息を飲んだ。
なんか、めっちゃグラついた気がする。
試しにそおっと引いてみると、剣がするりと上に動き、思わず手をパッと放す。
「ん? どうしたんじゃ?」
ナーガ老人が不思議そうな顔をする。
太一はしどろもどろになりながらも必死に口を動かした。
「い、いえ、なんか、べたっとしてるなって……」
誰かが
「本能寺の手汗じゃね?」
と言い、本能寺が
「ごめん! そうかも!」
と明るく言って、皆を笑わせる。
王女の指示で、文官の1人がハンカチで剣の柄を拭いている間、太一は猛スピードで頭を動かした。
握って引っ張ってみてよく分かった。
この剣は間違いなく、太一のものだ。
(ど、どうする!)
この剣を抜けば、『神滅弓ラグナレク』が手に入る。
これはソロで魔王討伐を目指す太一にとって、とてつもなく大きな第一歩だ。
しかし、これを抜けば「第1勇者」になってしまい、クラスのまとめ役として働かなければならないことになる。
(僕は“おはよう”もまともに返せないボッチだぞ? クラスのまとめ役とか絶対に無理でしょ!)
しかし、一方で、『神滅弓ラグナレク』は絶対に必要だ。
(ど、どうする!?)
焦る太一を他所に、剣の柄を拭き終わった文官が台座から降りた。
ナーガ老人が、「もう良いじゃろ」と言って、太一に剣を抜いてみるようにと促す。
太一は決めた。
『神滅弓ラグナレク』は必要だが、クラスのまとめ役など絶対に無理だし、ソロで魔王を倒せなくなる。
もうここはアレしかない!
ということで、
「ふ、ふぬぬぬぬ!!!!」
彼は精一杯抜いている演技をすることにした。
剣が間違っても抜けないように力の限り押さえ付けながら、顔が真っ赤になるまで必死にがんばる。
クラスメイトたちが呆気にとられた、顔で真っ赤になるまで頑張る彼を見た。
「あいつ、そんなに第1勇者になりたかったのか?」
「意外だな」
などという声が聞こえてくる。
ナーガ老人が口を開いた。
「どうやら抜けないようじゃな」
「は、はい、抜けませんでした。本当にビクともしませんでしたし、抜けるどころか、本当に全然動かなくて、もうびっくりしてしまいました。こんなに抜けないなんて夢にも思わなくて」
はあはあ言いながら、太一が早口で言う。
怪しいことこの上ないが、幸いなことにその場の全員の関心は、今回の大本命である吉田涼へと向いていた。
太一がそそくさと台座を降りた後、吉田涼がゆっくりと台座に上った。
確信したような顔で剣を見ると、片手でグッと柄を掴む。
そして、抜いてそのまま掲げようとするかのように力を込めて。
「…………え?」
彼はピシリと固まった。
両手で持ち直して引っ張るも、剣はビクともしない。
「あ、あの……、抜けないんですけど」
「…………は?」
太一を除く全員の目が点になった。
地下神殿がシンと静まり返る。
そして、何秒か間があった後、
「えええええええ!!!!!」
太一を除く全員の悲鳴のような声が神殿に響いた。
文官の1人が血相を変えて吉田に近づいた。
「申し訳ありませんが、もう1回やってみてもらえませんか?」
「え、あ、はい」
吉田が精一杯引っ張るも、全く抜けない。
そして、近藤萌、権田剛、北川梨花など、候補に挙がっていた3人と、本人の希望により本能寺が再度抜けないか試したが、剣はうんともすんとも言わない。
「こ、これは一体……」
「ど、どうなるの、これ」
気配を消して息をひそめている太一以外が動揺する中、ナーガ老人がコホンと咳払いした。
会場が静かになる。
ナーガ老人はにっこり笑った。
「恐らくじゃが、まだ抜く時期ではないのかもしれんな」
「といいますと?」
バカンス王女が首をかしげる。
「恐らく抜ける時期は神が決めるじゃろうから、きっと神が言っているのだ。まだ抜く時期ではない、と」
「なるほど、そういうことですか」
「確かに、今日抜きたいと言うのは我々の都合で、神の御意思は違うのかもしれませんな」
なるほどなるほど、と納得したような顔で話し合う人々。
その様子を、太一は息をひそめてながめた。
どうかこの感じで有耶無耶になってくれ、と心の中で祈る。
老人が声を張り上げた。
「では、この儀式についてはまた後日行うこととしよう。まあ、1か月後くらいが妥当かの」
「そうですわね。少し間を空けた方が良いですわね」
王女も同意する。
その後、その場にいた全員が上にある大神殿に戻るために階段を登り始めた。
一番後ろから太一もそっと付いて行く。
そして、彼は最後に後ろを振り向くと、静かに光る剣に向かって
「……すまない。近いうちにきっと迎えに来るからな」
と小さくつぶやくと、ゆっくりと階段を上っていった。
――ちなみに、しばらくしてから、地下神殿の伝説の武器に選ばれるのは、
「召喚者の中で最も戦闘力が高い者」
であることと、ボッチを誤魔化すためにひたすら訓練していた太一が、クラスで一番の強者であることが発覚するのだが、それはまた別の話である。
これで第1部終了です
お付き合いいただきありがとうございました m(_ _)m
思いついて1週間ほどで書き上げた本作ですが、今まで書いた作品の中で一番熱中して書いたかもしれません( ̄▽ ̄)アハハ
この作品は、大体本1冊分、5~10万字数ごとに投稿・管理する予定です。
第2部については、そのくらい書き溜まりましたら投稿しますので、気長にお待ちください。
最後に。
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