(閑話)無駄に目立ちたくないボッチ vs 教官たちの会話
初のフィールドワーク終了した、その日の夜。
ランプの光の下、6人の引率教官たちが集まっていた。
教官の1人である髭の騎士が口を開いた。
「まず、それぞれ担当したパーティの報告をしてもらおうか」
体格の良い騎士がため息をついた。
「うちは暗殺者の本能寺がハチの巣を踏んで散々だったな」
「大変だったらしいな」
「結局どこにいたんだ?」
リリアが苦笑した。
「木のてっぺんで泣いていたわ。顔がパンパンに腫れていて、さすがのパーティーメンバーも何も言えなくなっていたわね」
「あいつはすぐに調子に乗るから、厳しく言わないとダメだな」
「そうだな」
その後、他のチームの報告が始まった。
「うちは落ち着いていたな。聖騎士の吉田涼がリーダーシップを発揮して、パーティを上手くまとめていた感じだ」
「重騎士の権田剛は、少々強引だが、皆を守ろうという気概が人一倍強いと感じた」
「うちは全員が協力しあっていた感じだな」
などと、チームの様子や、目立っていた生徒たちの名前が挙がる。
そして、リリアの番になると、彼女は得気に胸を張った。
「うちはみんな優秀だったわ」
「そういえば、そっちのチームは特に優秀な者が集まっていたな」
「ええ。近藤萌はリーダーシップに優れていたし、北川梨花も思い切りや良かったし、浅野結衣も動じない精神力が光っていたわ。でも――」
リリアは考えるように言葉を切った後に続けた。
「やっぱり、一番はミナミダね。彼、駆け出しの冒険者パーティを助けたのよ」
「なんと!」
「しかも、グレイトベアを倒しちゃったのよ!」
他の教官が呆気にとられた顔をした。
「グレイトベアを? 何かの間違いじゃないか?」
「もちろん、もともとかなりやられてたってのもあるんだけど、木の多い森の中におびき出して、木の上から矢を放って仕留めたらしいのよ」
「なるほど、狩猟師としては最高の仕留め方だな」
「そうなのよ。凄いセンスだわ」
ちなみに、太一にはもちろんそんなつもりはなく、
「ちょっとカッコつけて連射とかしてたら、うっかり仕留めてしまい、死に損なった」
というが本当なのだが、そんなこと教官たちが知る由もなく、皆感心したような顔をする。
誰かがつぶやいた。
「そういえば、地下神殿に例のアレが出現したそうですね」
「この流れだと、ミナミダがアレを引き抜く可能性もあるかもしれませんな」
「いや、しかし、普通に考えれば、聖騎士の吉田涼ではないですか?」
「確かに。前回の召喚時は、聖騎士が抜いたそうですからね」
そんな話をする教官たちの横で、ランプの光がゆらゆら揺れる。
そして、報告を終えた6人は、また明日とそれぞれの場所へと戻っていった。
次回は、地下神殿に眠る”例のアレ”の話です




